富野由悠季監督とその作品をひたすら語るブログ

TOMINOSUKI / 富野愛好病
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富野由悠季が『リーンの翼』迫水真次郎の三人の妻の名前で見せた「ネーミング作劇学」

2013/04/15 19:03|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:6
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 富野由悠季監督が三年の時間をかけて上梓した巨作『リーンの翼』は発売されてから、もう数年を経ってたんですが、生活の忙しさに追われてなかなか読む時間を割れない方もいれば、もう完走した方もいらっしゃると思います。

 一方、「『リーンの翼』? 何それ」「興味はあるけど高いな…」といまだに購入を躊躇っている方もいらっしゃると思います。なので、そんな購入するかどうかをまだ迷っている方を後押しするために、今回は富野監督の作品における一大特徴である「富野ネーミング」が、この『リーンの翼』において発揮した作劇法を紹介したいと思います。



 『リーンの翼』の第3巻を読んでいただければ分かる通り、ガダバとの闘争、アマルガンとリンレイとの訣別、小倉に落されるはずだった第3の原爆を止めた後、かつての聖戦士・迫水真次郎は再びバイストン・ウェル・へリコンの地に落下し、第2の人生を歩むことになった。

 そこで、迫水はかつて部族でしかないメッオ国(のちのホウジョウ国)の建国に参与するようになった。60年にも及ぶ期間の間に、彼は三人の妻を娶った。最初の妻アピア・メッレ。女王リンレイの再来と呼ばれるエミヤ・スッカ。そしてアニメ版でも有名な「後添え様」」ことコドール・ハッサ。迫水が長く行き続けているため、前後にこの三名の女性と感情を築き、共に人生を歩くことを決めました。

 しかし、それぞれの妻の間に感情と結婚の理由があるといっても、この三人の妻の背後には、やはり厳然なる政治的背景が存在しています。そしてそれと連動して変動し続けているのは、ホウジョウ国の王としての迫水真次郎の政治的な立場です。

 それら政治的な背景や迫水の政治的な立場ですが、実はこの三人の妻の名前からは、すべてそれを反映し、伺うことができます。これが作り手である富野がネーミングを使って匂わせるものですが、以下はこのネーミングを駆使する作劇方を説明します。



 まず、基礎知識として、北の地に位置しているメッオの国のことを知っておきたい。このメッオの国はもともとメッサラ族とオルッメオ族という二つの部族が治める地だったんですが、強大になりつつあるシッキェの国(リンレイ・メラディ亡き後、アマルガン・ルドルが立ち上げたシィとキェの連合国家)に対抗するため、迫水を始めとした何人かの地上人を擁立しつつ、オーラマシンの建造を励んでる新興国家である。

 迫水は中核にいる地上人としては一番遅く参与した人間だったんですが、地上では飛行機のパイロット、ガダバとの闘争を経験した歴戦の勇士、そして何より聖戦士であるということで、だんだん重要な職位を得て、やがて王として祭られている。その建国の物語は60年以上越えているが、その間に娶ったのが以下の三人です。

アピア・メッレ:メッサラ族スッカ家。一番目の妻。迫水との間に長男シンイチを持つ。

エミヤ・スッカ:メッサラ族スッカ家。リンレイ・メラディの再来と呼ばれる英気を持つ女性。リュクスの母。

コドール・ハッサ:オルッメオ族ハッサ家。いわゆるアニメの後添え様。



 彼女たちの個性や出身、それから迫水との馴れ初めは詳しくご自分が『リーンの翼3』を読むのがオススメですが、この3つの名前から導きだすことができるのは、以下の話です。

アピアはもともとバランモン(さすらいの智者)の付き人を勤めていた少女ですが、迫水が重傷を負ったとき、彼の世話役を負かされる。その繋がりもあって、のちに自然のなりゆきで結婚し、彼の一人目の妻となった。

このアピアとの結婚は、スッカ家が聖戦士との婚姻を結ばれたことによって、メッオの国のなかで主導権を握るようになったことと、迫水がいよいよバイストン・ウェルへ帰化することを意味している。



アピアと迫水の間に一人の男児をもうけたが、男児が病弱なため、10歳の時に病で亡くなった。アピアもこの一件で早逝。アピア亡き後、迫水は二人目の妻を娶ることを迫られることになったとき、浮上した候補はこのエミヤである。


エミヤは伝説の女王リンレイ・メラディの再来と称えられるほどの美貌と気品を持っている少女で、若くして国の重鎮レッツオ城を任されるほどの存在だ。迫水も彼女の幼少期から知っているため、彼女との間にリュクスをもうけた。

アピアのごく自然にできた婚姻と比べて、伝説の女王リンレイの再来と呼ばれてるエミヤとの結婚は、すでに周りの半端ない期待がかかっており、政略結婚の色が強くなっている。



また、アピアとエミヤが共にメッサラ族のスッカ家の人間にもかかわらず、苗字の違いはすでにその地位の違いを表している。

エミヤ・スッカというスッカ本家の人間に対して、アピア・メッレは明らかに分家の人間で、アピア死後にエミヤを娶った迫水は、この政略結婚を結ばれると同時に、さらなる政治の地位をも手に入れた。



エミヤが亡くなった後、迫水はさらに三人目の妻を娶ることになる。


コドールはもともと大学院の学生ゆえ、産業や経営などに長けて、迫水は結婚前すでに彼女を国運営の官僚とし、その意見をいろいろ採納している。

コドールとの婚姻は多少感情を持っているとはいえ、最早国の経営の手段の一つになっている。この婚姻はホウジョウの国の転換を象徴するものになっている。


アピアとエミヤがスッカ家の人間であったのに対して、コドールだけがハッサ家の人間ということは、ホウジョウ国内部の権力がスッカ家(メッサラ族)からハッサ家(オルッメオ族)に転移したことを意味している。


迫水がはじめての結婚相手はスッカ家だったということは、迫水がメッサラ族と結び、親交を深めたことになる。そして、オルッメオ族が代りに権力を握るようになることは、すなわちホウジョウの国の内部に不協和音が発生しへ始めることと、迫水がだんだん孤立されることを暗示している。



 以上は、『リーンの翼』の迫水真次郎の三人の妻の名前におけて、富野由悠季がネーミングで作劇を構築した一例です。こんな小さなところでもこんなに意味を含ませるのは、さすがとしか言いようがありません。以上の話がほんの一例にすぎず、もっともっとすごい作劇法は『リーンの翼』に書かれていて、読者の発見を待っています。そういう意味でも、ぜひ皆さんには読んでほしいものです。

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富野演出「闇夜の時代劇 正体を見る」の資料まとめ

2013/04/09 22:44|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:6
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 近いうち書くべき記事に備えて、富野監督が1995年演出したサンライズ唯一非ロボットアニメ「闇夜の時代劇」第2話「正体を見る」に関するいろいろな資料をまとめました。


あらすじ、解説

作品紹介:作品情報|SUNRISE Inc.

■「正体を見る」
 信長が本能寺で果てた後、徳川家康は伊賀を経て三河に帰り出陣準備をするつもりであった。その途中の宿に、一人の伊賀忍者の下忍が忍び込んだ。伊賀忍者を迫害してきた織田信長に味方する家康を討ち、上忍になろうというのだ。
 しかし、茶室で客人と談話する家康のすきを狙う彼をことごとく邪魔してきたのはその端整な顔立ちの客人であった。彼は忍としての意地を掛け、露天風呂に入浴する家康に襲い掛かった。が、それは家康と客人の罠だったのだ。


TVM アニメ 闇夜の時代劇 正体を見る - allcinema

【解説】
 深夜番組「ネオ・ハイパー・キッズ」内にて放映された、正味10分強の短編アニメシリーズ。先の「老ノ坂」とは二本立てとして流されている。
 「本能寺の変」を知った徳川家康は、急ぎ三河へと戻る途中で伊賀の里にある宿に一泊した。そこでは信長に恨みをもつ伊賀の下忍が一人潜んでおり、臣下である家康を討って出世しようと暗躍する。しかしいざ暗殺せんと動くも、家康の客人である若い武将の存在によってことごとくその機会を逸してしまう。ならばと無防備になる入浴中を狙うのだが……。
 このシリーズは制作・サンライズ所属のスタークリエイターがスタッフとして名を連ねている。本作の演出は「ガンダム」シリーズでお馴染み富野由悠季が担当。


ネオ・ハイパー・キッズ 〜サンライズ・ネオ・ハイパー・アニメーション〜 闇夜の時代劇 正体を見る - 武蔵野美術大学 美術館・図書館 イメージライブラリー所蔵 映像作品データベース

日本テレビ「ネオ・ハイパー・キッズ闇夜の時代劇は、コンピューターに原画を取り込み、ソフト・ディレクターによりカットをつなげ演出したCGアニメーション。
伊賀忍者を迫害する織田信長。その盟友・家康の命を狙う下忍が一人、家康の宿泊先である屋敷に忍び込んだ。しかし、家康の客人である端正な顔立ちの武将にことごとく阻まれる。意を決し家康に斬りかかった下忍の前に立ちはだかったその武将は、なんと女だった。果たしてその正体は…。

 実は3番目のこのあらすじこそがソフト化された時の内容紹介だったりします。


キャスト・スタッフクレジット

TOMINOSUKI / 富野愛好病 『闇夜の時代劇 正体を見る』スタッフリスト

キャスト
下忍 佐々木敏
半蔵 井上倫宏
女中 唐沢潤
家康 廣田行生

キャラクターデザイン そえたかずひろ
作監 菱沼義仁
美術 古谷彰
演出補 越智浩仁

音楽 工藤隆

脚本・演出 富野由悠季

 とりあえずメインスタッフのみ。リンク先は全部見られます。



感想・評論

闇夜の時代劇第2話「正体を見る」 - 玖足手帖-アニメ&創作-

 話は忍者の話。ブレンパワードのような瞬間移動をする忍者。枚数削減なのかなあ?
 その割に、キャラクターデザインはそえたかずひろさん、作画監督は菱沼義仁さんで、原画も重田敦司さん土器手司さん他、総勢10人もいるので、12分の短編にしては豪華なのではないかと思う。
 でも、実際そんなに絵は綺麗じゃないと思った。12年前の作品だからだろうか?萌系のキャラデザインでもないし。しかし、リアル系でももっと上手い人が揃ってると思うのだが・・・。シンプルでも動きがしっかりしているといいのかも試練のだが。中割が少なすぎるからだろうか?スケジュールがやばかったのかなあ?
 巻末に富野の絵コンテが映る特典映像があるのだが、その絵と完成品が似てたので、富野の絵がそのまま出ているのかもしれない。




関係者発言

闇夜の舞台裏~富野インタビュー | ひびのたわごと

 ガンダム以後のファンにとっては、僕が時代劇をやるとかってことは全く想像できなかったと思います。ただ僕自身はもともと学生時代から日芸出身ですから映画監督やりたいなと漠然と思ってたし、それからガンダム以前のことでいいましたらおそらく僕が日本でじゃなくて世界で一番ジャンルを問わずに、演出とかコンテの仕事をやったという意味では自負があります。で、そういうキャリアから考えたときに別に時代劇やったからどうのこうのってことは全くありません。



闇夜の時代劇1~富野由悠季・今西隆志編~ [VHS]闇夜の時代劇1~富野由悠季・今西隆志編~ [VHS]
廣田行生,唐沢潤,井上倫宏,佐々木敏,工藤隆,今西隆志,富野由悠季

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富野由悠季と獣戦士ガルキーバ

2013/04/08 02:31|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:2
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 1995年サンライズ制作の「獣戦士ガルキーバ」と富野由悠季監督の関係は一部では有名なのですが、知らない人も多いのではないかと思いますので、ここで資料を保存する名目で、改めて紹介させていただきます。

 当時の富野監督は精神不調のために半引退状態であったために、サンライズのご意見番みたいな立場にいたそうです。その関係でガルキーバの企画についていろいろ口を出したそうです。



DVDboxに収録されているインタビューによると、以下のような話です。

―企画時、「ガンダム」の富野由悠季さんが関わっていたという話がありますが。
「当時サンライズの御意見番みたいな立場でいらしたんです。で、富野さんに
御会いしたら、むちゃくちゃ怒られた。玩具ペースだと考えて、第1話の初稿では
神獣全部出して変身もやってたんです。
そしたら「これに何週もかけろ」「俺だったら、30分剣道だ!」って(笑)。
翌日、富野さんが地ならしをしてくださったおかげで、ドラマメインでいけるよう
になったんです」~シリーズ構成・金巻兼一インタビューより。

 また、金巻氏は自分のサイトでもこんな話を残しました。

金巻兼一の全仕事

テレビ東京系 「獣戦士ガルキーバ」  1995
監督/日高政光◇シリーズ構成/金巻兼一◇制作/サンライズ
※第1話放送日にオモチャ製作班が解散し、結局半年で打ち切り。企画段階では、富野由悠季氏にお世話になった。その後、金巻は小説(上下巻/電撃文庫)を書いたけど……現在は絶版(涙)。

 ちなみに、富野監督の参与は企画段階に留まっていたためか、他のスタッフから富野についての声が一切聞こえませんでした。

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富野由悠季「ライフ・オブ・パイが良いのは、CGがリアルだからではなく、ファンタジーとして成立させる監督のセンスと人生観があったからだ」

2013/03/23 03:44|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:8
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 富野由悠季「ライフ・オブ・パイが良いのは、CGがリアルだからではなく、ファンタジーとして成立させる監督のセンスと人生観があったからだ」
 先日発売されたオトナファミに載っている富野由悠季監督のインタビューには、今回監督賞を含めて、アカデミー賞4部門受賞『ライフ・イブ・パイ』に対する評価がありましたので、ここで紹介します。

 例えばコンピューターグラフィックス。一昔前に比べて、滑らかな動きにしても、写りこみや精密に描けるディテールにしても、確かに表現できることはものすごく自由になった。でも、それだから凄いということはないんだよね。3万人の軍団同士が戦うとか、半分裸のお姉ちゃんが弓を射ってドラゴンを倒すとか、誰もスゲーとは思ってないんですよ。

 絵画の世界にも、1960年くらいに筆を使って、写真以上にリアルに描くというスーパーリアリズムがありました。それが絵画の主流になったかというと、10年も流行らなかった。ということを僕らの世代は知っているんです。

 『ライフ・オブ・パイ』が評価されたのは、トラのCGがリアルに見えるから凄いんじゃなくて、海面にジャンプするクジラの画をファンタジーとして成立させる卓越したセンスとアジア人監督ならではの人生観に基づいた物語論があってからこそなんです。

(オトナファミ2013年5月号「オトナの仕事論」より)
 アン・リー監督を素晴らしく思っている観客の一人として、富野監督のこの評価にとても嬉しいです。

 ちなみに同インタビューでは「レ・ミゼラブル」に対する富野の評価もありますが、ここではあえて紹介しません。気になる方はぜひ雑誌をチェックしてください。



 ちなみに、以下は2ヶ月前自分が書いた『ライフ・オブ・パイ』の感想だった。アカデミー賞もまだ授賞されていないとき書いたものでしたので、富野監督の短いながらも的確なコメントに合わせて読むと面白いかもしれません。

『ライフオフパイ』(トラと漂流した227日)鑑賞。一言いうと傑作だ。日本の皆さんもぜひ見に行くべきだ。日本では2013年1月25日ロードショーだ。

『ライフオフパイ』は楽しい映画じゃないが、退屈もしない。美しくて魅せる映画だ。アン・リー監督の感性はすべてこの映画に詰め込んでいる。3Dエフェクトで画面を構成する映画だが、はっきりいってアバターなんか比じゃない。

CGはともすれば映画にとって諸刃の刃だ。ファンタスティックな画面を構築できるが、一歩間違うとアバターみたいに「CGが主役」というような映画を産む。しかし、『ライフオフパイ』では、CGは完全に映画のための僕で、あのスケールの壮大さ、感性の美しさは完全にCGを凌駕している。

富野監督も宮崎監督も『ライフオフパイ』を見に行くべきだ。お二人方が持っていない「何か」を持っている映画なのだ。

『アバター』のキャメロン監督が『ライフオフパイ』に対するコメントは以下のとおり。「本作は、3D映画は興収が確実に見込めるスペクタクルなビッグタイトル作品でなければならないという概念を覆した。3D映画を見ているという感覚さえも忘れてさせてくれる。これこそ3D映画のあるべき姿だ」

『ライフオフパイ』は日本のどの映画より現実に根ざしている。それでいて、日本のどのアニメより幻想的で美しい。ファンタジーが現実に力を与えているというのは、まさにこのような作品のことだ。だんだんファンタジーと現実をリンクできなくなる宮崎駿は、この映画を見て勉強しなおすべきだ。

富野は映画界が3DCGという新しい技術に振り回されて、新しい物語を作れないことを常に懸念してるが、『ライフオフパイ』はまさに3DCG技術で生んだ新しい何かなのだ。3Dがなくてはおそらく実現できない映画だが、3Dのための映画でもない。3D映画のあるべき方向性を示した映画だ。

 
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 ちなみに日本上映時のサブタイトル「トラと漂流した227日」はちょっとダサいかなーって思わなくもありません。原作には書いてあるとはいえ、映像ではそんな時間の流れさえ忘れさせるものでしたからな。

池端隆史氏「(演出において)一番影響を受けてたのは富野さん」

2013/02/25 03:13|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:0
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 『げんしけん』『大正野球娘。』などの監督池端隆史氏が、アニメージュ2009年12月号の「この人に話を聞きたい」で以下の発言を残りました。

--その後、演出家の道を歩まれますが、演出の師匠になった人はいるんですか?

池端 師匠にあたる人はいません。一番影響を受けてたのは、多分、富野(由悠季)さんかな。『∀(ガンダム)』をやった時に。

--『∀』の時に富野さんに刺激を受けたというのは?

池端 なんだろうな。ひとつは自分がやってる事がそんなに間違っていないなと分かった。それから、この業界ってスケジュールもそうだし、作画もそうだけど、思った通りにいかない部分があるじゃないですか。そういう時にどうするかという方法を教えてもらった。教えてもらったというよりは、怒鳴られながら学んできましたけど(笑)。かといって、富野さんが師匠かというと、そういう感覚はないです。

 『大正野球娘。』第1話の衝撃は忘れませんでした。



 ○世に棲む日々/池端隆史│フィルムメモリー

1999年
ターンエーガンダム(演出6本)
 どこかほのぼのムードが漂う異色のガンダム。トミノ監督の技術を盗むため半分と、怖いもの見たさ半分で参加。監督には都合三回怒鳴られたが、そのうち二回はオレのせいじゃなかったりする(笑)。かなり勉強になったので元は取れた作品。

 将来的に何か記事を書くつもりですので、メモ代わりに紹介させていただきました。

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演出家と脚本家の対決 〈富野由悠季・辻真先〉対談(後半)

2012/12/26 12:51|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:0
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演出家と脚本家の対決 〈富野由悠季・辻真先〉対談(前半)

 前回↑の続きです。

富野「1%は絶対譲れない部分を守らなければいけない」

 ガンダムの企画書って見てないんだけどどんな企画書?

富野 僕も企画書はよく知らない。(笑)ロボットものの体裁で合体シーンは必ず入れると、だけど話はこっちだよという説明をしたんです。

 テレビの場合、30分間だと一点豪華主義がいいんです。あれもこれもってのはかえってダメなんです。他のことは99%まで妥協しても、残る1%、これをはずされたらオレ降りるよというところがないとダメですね。

富野 今まででいうと、その1%は演出者の我の部分になっちゃうんです。そうじゃなくてその作品を成立させていくための1%でなければならないんです。

 それを第三者に納得させるためには先のほうまで見えてないとね、感情論になっちゃいますから。

富野 そういう意味で、辻さんの書き方にかなり教えてもらったところがありますね。それは作品に対する見切りっていうのちゃんとしてるからなんです。

 その見切りっていうのは?

富野 だいたい普通のライターは俺がこれを書かせてもらうよって書く人が多いんです。辻さんの表し方っていうのは、そういう自分の我から出発している部分を載っけようという仕方はしていないんです。

 うん、それは僕がプロデューサーから出発したこともきっとあると思うんですよね。スタッフを説得するのに意地や我ではできない。つまり作品にとって捨てるべきか、残すべきかというやり方でやって来たわけです。

富野 そういうことはここでいうとすごく簡単に思えてくるんですけど(笑)、現場でそれをやってくれるスタッフっていうのはそれほど多くないですよ。辻さんの脚本見てすごく分かりやすいのは、ここだけ残せば、いいんだなってのがすぐわかるんです。でもそうじゃなくて「なぜあのセリフをはずした。」っていう人が多いんです。

 そういうときは「できたものを見てくれ。」というよりしょうがないんじゃないですか。かりに自分が消しとんだって作品がよければ自分も得だと考えるから僕なんかは許せますね。ただ許せないのは、このあいだ某番組ではじめからキチンとコンテ切ってってくれたわけです。僕はずいぶんでいねいにやってくれてるなあと思ってみてて、最後にこっちはオチがあるわけです。それが終わりのほうになって途中でCMになっちゃった。あれって思って後で聞いたら、「最初からキチッとやってったらあそこで秒数足りなくなったからやめました。」って。(笑)あれにはあきれた。

富野 そういう全体状況をもう少し見渡せる演出家が育って欲しいなと最近思うし、新番組もなるべく見てるんだけど、皆ガンバッてるのはわかるんだけど、その頑張り方がどうもね。

 視野が狭いんですね。虫プロがいけなかったのはそういう部分がある。アニメーターでアニメ大好き、それしかやってないからダメになっちゃう。

富野 僕もね、虫プロのとき、すごくうしろめたさがあったんです。というのはアニメがそれほど好きじゃなかった、都合でやらざるを得なかった。だけどこういうやり方もあっていいんじゃないかって思いだしたのが「トリトン」なんです。それは僕のドラマや映画に対する考え方をアニメに投入してったらどういう表れ方をするかってことなんです。意外とそう考えている人は少ないんじゃないんですか。だからたとえば宮崎(駿)アニメのように絵の都合から発生したようなドラマに与したくないんです。観るだけなら好きですがね。

 それとテレビに対する考え方も違うような気もしますね、他の人はわりと必要悪としてテレビを考えているけれども、富野さんはむしろテレビ・アニメというものを積極的に取り込んで視聴者までも演出してしまおうという意識がありますね。だから富野さんのやり方でガンダム以後の場合、僕が「ヤヤッ」と思ったのはそおこのところが新しいというか、テレビの人、というものをものすごく感じるんですけどね。富野さんテレビってどういうふうに考えてます?

富野 うん、僕もしょせん必要悪だと考えている部分はありますよ。一つ違うことは、媒体として無視できないから、それを利用しないと損だなって考えています。ただテレビは必要悪だという考えは変わらないんです。というのはビデオが普及したりすると生活そのものが変わってしまうでしょ。一歩も外に出なくても済むっていうような生活のパターンの変革を強要するんです。それは人の感情生活の上でけっして健康なことではない。一方でアウト・ドア・スポーツを商品化するという悪癖を生んだりしてね。いま番組の当事者が番組を見ることを一番拒否しているんじゃないんですか?

 僕もそういうところありますよ。趣味を全部仕事にしちゃったから。マンガなんか好きだったんだけどなあ。(笑)

富野「実写だったら『鞍馬天狗』か『零戦』を作りたいですね」

--辻さんのその膨大な仕事量のエネルギーというのはどこから来てるんですか。

 ハングリーだからです、いつ食えなくなるかわかんないという。やっぱり新しいものが好きっていうか、組織化されちゃうとつまんない。僕がテレビ局に入ったときはまだ800台ぐらいしかテレビがなかったんですから。それが面白かったです。「バス通り裏」を始めて二~三週して報知新聞に記事が載っていたときは嬉しかったですね。今でも覚えています。報知の人がやっとテレビを買ったんだなって、(笑)なにしろ僕でさえ持ってませんでしたから。その後の漫画の原作でも、アニメでも同じです。そこで競ってるときが面白いんです、誰か優秀な奴が出てくると、いち抜けたと他のところに行っちゃうんです。そのくり返しですね。いま、パズラーでしょ。ほとんどいないわけです。赤川次郎さんぐらいでしょ、若い人向けのパズラー作家っていうのは。だから今だったらワサワサできるってんで始めたんで。それで将来はトラベル・ライターを最終的にやってそれでチョンにするつもりなんです。
 日本で一つだけトラベル・ライターの養成講座があって、できたとき早速行ったんだけど、そこの審査の人が、僕の放送作家教室の生徒だったんです。それで「先生やめなさいよ。」って言われて、それでやめたんです。結局、自分の好きなことを一つずつつぶして行くわけです。

富野 こちらは、そういう意味で好きなものがないから。(笑)

 だけど映画は最初好きだったんでしょう?

富野 いや、あまり好きじゃない。

 僕は富野さんなんか、松竹あたりで製作費をかけて実写をやればいいと思う。手アカのついた監督じゃないものができるんじゃない。

富野 やらしてくれっていえたらねと思いますけれど、最近ますますわかったことは、アニメっていう媒体は凄いなってこと。

 可能性とかを含めてね。

富野 だからもし、僕が30歳の時に今のような状況があったら、完全に実写に行ったでしょうね。松竹の人に実写を撮るなら何を撮ります?って話をされたことがあって、今撮るんだったら「鞍馬天狗」と「零戦」を撮りますと言いましたけど。「鞍馬天狗」はタイトルだけで客が呼べる、それにTBSが失敗した。その理由は簡単だ。草刈正雄を使う鞍馬天狗は007でなければならないのを、(笑)パリ・コミューンにしょうというウソがあるから。だから僕が撮る「鞍馬天狗」のイントロはこうなんです。宮の都に出る、どこかの山あいのシーン、雪が降っている。鞍馬天狗が白馬に乗ってる。それに杉木立から忍者もどきの新選組が切りかかる。それを鞍馬天狗が蓑笠の雪をふり払ってたたき切る。その新選組が死に際に一言いう「鞍馬天狗が帰ってきたっ。」、そこでメインタイトルがバッと出る。(笑)これが鞍馬天狗。零戦は、パイロットが日本の負けを予感しながらも、戦わざるを得ない。が一方最高のパワーの戦闘機を作らなければならないという技術者のフィクションです。それにあの現実の日本の空気をかぶせた時にガンダムと同じ図式の物語になります。この二つが僕の考えてる映画です。でも、どっちも今の日本映画のお金じゃ撮れないんです。(笑)

--最後に辻さんが、今後の富野さんに期待することを聞かせて下さい。

 やっぱりご自分で納得する、この人、自分で納得しないとダメなんです。(笑)そりゃいろんな納得の仕方があって、百パーセント納得できれば理想なんだけど、ある一部分だけで開き直ってもらって、流されてやるんじゃなく、もちろんそんなことはないと思うけれど、何らかの形で納得できるものをやっていただきたい。それだけです。ガンダムのときにびっくりした、それもいっぺんにびっくりしたのではなく、チビチビとびっくりさせられた、今度はどうやって驚かせてくれるか、というのが期待するところですね。

富野 それは、うーん、あんまり人に期待しちゃいけないと思います。(笑)

 この対談に対する感想は、次回辻氏の自伝を紹介する同時に書きます。


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演出家と脚本家の対決 〈富野由悠季・辻真先〉対談(前半)

2012/12/20 02:28|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:0
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 今日紹介したいのは、「伝説巨神イデオン&富野喜幸の世界」というムックのなかで、富野由悠季監督とテレビアニメ創生期から活躍してきた大御所である辻 真先氏との対談です。

 辻真先氏でいえば超有名人なので、いまさらここで紹介しませんが、氏は今でも毎日小説を書きつつ、大量な本や漫画を読みながら、ブログ・ツィッター・フェイスブックを更新している、バイタリティ溢れている元気なお年寄りです。気になる方は氏のtwitterを読んでください。

 対談の量が多いので、今日はその前半です。



富野喜幸vs辻真先 超多忙対談
次はどんな風に驚かせてくれるかが楽しみ


虫プロ時代、脚本家と演出家という関係だった辻真先と富野喜幸の両氏。今や、それぞれの領域で日本のアニメを代表する存在として大車輪で活躍中。超多忙の日々を送っている二人の夢の顔合わせが遂に実現。



辻 真先(つじ・まさき)
●昭和7年名古屋生まれ。
●NHKのプロデューサーとして「お笑い三人組」「バス通り裏」等を担当する。NHK退社後はフリーの脚本家として活躍中。また推理小説界にも進出し、超多忙の日日を送る。
●代表作品
アニメ脚本「Dr.スランプ」「サザエさん」「夏への扉」等多数。
小説「TVアニメ殺人事件」「ブルー・トレイン殺人事件」等、「アリスの国の殺人」で第35回推理作家協会賞受賞。



辻「富野さんは、途中のプロセスにこだわるんだよね」

--最初のお二人の出会いというと、『鉄腕アトム』で脚本と演出担当で組まれた「悪魔の風船」(第104話 S・40・1・23放送)あたりになるのでしょうか。

辻 僕、富野さんがものすごく印象に残ったのはアトムのときよりも『リボンの騎士』のときなんです。そのときは、がっちり打ち合わせをやっていたから。

富野 逆に僕は「リボン」のときは全然覚えていないんです。(笑)極端な言いかたをすると、「悪魔の風船」しか覚えてないんです。
 ただ虫プロの文芸部の中での辻さんは他の人たちとはちょっと違っていたんですね。もう一人の代表選手に豊田有恒さんがいて、僕はどっちを取ればいいのかって考えたことがあります、そういう気分でライターをみていましたから、虫プロってとこはずいぶんやりにくいところだなあという印象が凄く強くって。

辻 群雄割拠だね、よくいえば。みんなそれぞれやり方が違う。

富野 僕は入社して、半年ぐらいで演出にいったんです。そうすると面食らうわけ。辻脚本がくる、豊田脚本がくる。(笑)それともう一つ面倒なのは平見(修二)さんがいたわけです。それがたがいちがいに来るから、たまらない。でも自分では意識していなかったけど、ずいぶんトレーニングになったわけで、あとからみるとすごく役に立ったんです。というわけで辻真先っていうライターというのは、その中の一つの派閥としか見えなかったから、個人という見方はあまりしなかったんです。それは豊田さんについてもそうなんです。

辻 豊田さんは確かにそのバックにSFの人がたくさんいたから。
 豊田さんとは何やりました?

富野 はじめてやったのは「ロボットポリマー」(S・40・3・13)なんです。

辻 なるほど。そうかそうか。(笑)

富野 それから辻さんとは関係のないことなんだけれど、「悪魔の風船」というのはたいへんな作品でしてね。「鉄腕アトム」が作画の外注出しをした最初の作品なんです。

辻 あーそうだ、絵がずぶん違うなあということだけは覚えているんです。

富野 なおかつ僕の演出した二本目の作品ですからね。だから僕は原画を見ても、全然わからない。(笑)その上あのころのアトムは作画から仕上げまで三~四週間だったんです。とにかく作品レベルをとやかくいえなかった。

辻 一本目はオリジナルでしょ。サブタイトルは?

富野 「ロボット・ヒューチャー」です。新田修介のペンネームで……。で、オリジナルの脚本ということなんだけども、ホントは脚本なんかなくって、ぶっつけでコンテ書いたんです。(笑)

辻 でも、あのころの虫プロは、そういう人多かったよ。

富野 で、まず人の脚本を扱うことで神経をつかっていて。辻真先って何者なんだ。(笑)半年経っていてだいたいはわかっていたつもりですけど、何度か顔合わせてましたし、スタジオの隅で豊田さんが脚本直していたりするのを見てましたし。それで作画は社内でやってくれないから、外に持ってくわけです。本来なら虫プロ代表で行くわけですけれどもまだ2本目ですから、りんちゃん(りんたろう)あたりから、「てめえにできるわけないだろう」という冷たい眼で見られるし。(笑)そのときからです。いじけ節が始まるのは。(笑)そういう体制下で『ジャングル大帝』が始まって、あのころ辻真先だろうがなんだろうが、反発があったのは、みんな『ジャングル大帝』に行くわけです。(笑)残存兵力でなぜ『鉄腕アトム』を作らなくいけないのかって話になったときに、せつなさだけがあるから、僕は虫プロの時代の人ってみんな好きじゃないんですよ。(笑)

辻 「悪魔の風船」のとき、脚本のうちあわせやなんかじっくりやりましたっけ? たぶんあれ、流れ作業みたいにね、アトムの場合、手塚先生のOKが出ると、演出の方に渡すという三角関係の記憶があるんですよ。それに比べて『リボンの騎士』のときにびっくりしたのは、演出の人は絵ヅラのほうから来る人とドラマのほうから来る人がいるわけだけども、富野さんのドラマ性にびっくりした。僕は子供の頃からアニメが好きで、この絵が欲しいという、一点豪華主義のところがあるんです。ところが富野さんは途中のプロセスを大事にするんですよね。
 で、最初何度か打ち合わせたときには、途中飛ばしたって、どうせこの絵になるんじゃないか。どうせ死刑にされるんなら13段階だろうと、24段階だろうと同じだというふうにやってて、二度目か三度目に、おやって思ったのは、途中の積み重ねによってヤマ場がもう一つ上にあがってね。(笑)これはこのほうが面白くなる、というのが最初の印象なんですよね。わりとよくネバったというか、それまでネバる人は山本瑛一さんがいたんですよ、僕は『ジャングル大帝』の第一話、半年かかりましたから。(笑)富野さんは、今のガンダムでも細かいところの積み重ねを若い人達が面白がると思うんだけど、それは『リボンの騎士』のときからあったわけですよ。あれはサブ・タイトル忘れちゃったんですけど、確か文字通り、塔の中の死刑台かなんか、高い所へ上がっていく話なんだけれど、あの作り方なんか面白かったです。

富野 よく覚えてないですね。(笑)

辻 富野さんとは全然逆に、手塚先生のときに注文されて困ったのは、奇想天外にして下さいという、その注文しか来ないんです。私は自分で奇想天外にしてるつもりなんだけれど。(笑)
 確か、アトムが夢を見るという「夢見る機械(ドリーム・マシン)」(第81話 S・39・8.1)のとき、精一杯面白い絵ヅラを考えたんだけど、手塚先生はそれ自体が気に入らない。だから落差が詰まらない、あれはまいったですね。

富野 それは僕が残存部隊でやってた時も同じでしたね。僕は『リボンの騎士』のこと覚えてなくて、資料なんかみて、あれ、21話までやってるなんてびっくりしたんだけども、「世界一のおやつ」と「こわされた人形」が最後の虫プロの仕事で、その二本が辻さんのご本です。いま辻さんがおっしゃられた通り、僕は全然作り方変わってないんですね。

辻 変わっていないですよ。

富野 自分でもいやなんだけど(笑)。

辻 変わってない、頑固な人でね。もう一人頑固な人がいた。永島慎二。あの人は今でも印象に残ってます。

辻「スポンサーまで演出しないと演出家になれないんだよ。」

富野 でも、僕は「リボン」をやってるときはいやだったんですよ。というのは「アトム」を作ってすごくうぬぼれていた時期だったんです。「リボン」ではチーフディレクターにはなれなかったし、抵抗感がものすごくあって、それが虫プロをやめる一番の原因だったんです。でもうぬぼれていたおかげで虫プロやめてひどい目に会いました。トリトンやるまでの6年間ほどはCMもやったし、プロダクションを渡り歩いて、いろんな種類のコンテを切らしてもらって、やっぱり「リボン」のC・Dをやらなくて良かったと6年間かけてやっとわかったんです。そのくらいテクニック、ノウハウがいろいろあることがわかってきたんです。その学習する時期があって『海のトリトン』に当たったのが良かったと思ってますね。「トリトン」のときに久し振りに辻さんにお会いしたんですよね。でも僕がコンテマンやってたときに辻さんの脚本はどこへ行っても回ってくるんですよね。(笑)

辻 ハハハ、そういえば結構あったかもしれないですね。

富野 『マリン・キッド』なんかも僕やりました。辻さんはずっとフリーでやってらしたんですよね?

辻 そうです、虫プロは文芸部に囑託というかたちで。最盛期には、第一稿書く前にギャラをもらったこともあります。「うちは早いでしょう。」って。(笑)あれをやっちゃいけません。(笑)

富野 僕も給料が一万円ぐらいのとき、コンテ料で7万円ぐらいもらったことがあるなあ、20年前の7万円ですよ、すぐ全部使っちゃったけど。(笑)で、虫プロやめたときはお金がなくてホントに困りました。(笑)

辻 「トリトン」やってどうでしたか。

富野 すごく自分でふらふらしていきながらも、自分でアニメをなんとか作っていけるなって思えたことですね。あれが終わったのが31ぐらいのときかな、この7~8年それが支えになったんですね。もし、あの後どこかのプロダクションに入っていたら、絶対「ガンダム」、「イデオン」は作れなかったでしょうね。自分では結果的にはサンライズに戻って来たことになっちゃったんですね。

辻 それは元虫プロということだから? 他になにかひっかかりはあったんですか?

富野 なんにもなんです。その頃は帯番組の仕切りやっていたです、「夕焼け番長」とか。僕にとっては帯番組でもイニシアチブを取れなければ、全体が見えないから厭だというこだわりがあったんです。それでライディーンの話がくるまでじっと我慢してたんです。自分でお話を作るってことにすごく興味があったから……。

辻 そうですね、話を作るってことを考えると、テレビのワンクール、ツークールを一人で引き受けるというのは、これは凄い情報量というか、細かく巨大な物が積み上げられるんですよね。小説百枚、二百枚なんてメじゃないです。ましてシナリオの枚数×視聴者の数などはじいたら世界最大のメディアになっちゃう。例えば『サザエさん』だと、7分間の間に4コマのものを30本入れようと思えば入れられるんです。そうすると長谷川町子さんがひと月かかったものが7分間で入っちゃうんです。それが30分で3本入るのだから、新聞の3か月分が30分で入っちゃうんです。これは膨大なもんです。だから話を作るということだったら楽しいでしょう?

富野 楽しいと同時に、物量に圧倒されるという気持ちも凄くある、だからライターの存在が絶対なければならない。自分が全部ペラ70枚ぐらいのものを毎週書いても間に合わないんですよね。最初の時期には週に二本ぐらい書かなくちゃいけませんよね。

辻 演出なんかしてるヒマがないよね。

富野 あの物量を支えていって、なおかつ物語のロジックを確立させて行かなきゃならない。それには物語のテリトリーに関する見切りがついてないとできないんです。

辻 富野さんの場合は自分の世界を作るからそれがわかってないと打ち合わせができないわけですよね。

富野 ただ初めから線を引くのは無理なんですよね。それは『勇者ライディーン』のときに痛感しました。オリジナルを起こすのはホントにたいへんなことだなって。それで僕はアニメを作る環境ということを良くいうようになったんです。

辻 自分の上のスポンサーまで演出しないと演出者になれないんですね。僕は逆に、NHKでそれやってて疲れ果てちゃった。子供の頃考えると、級長にはなれなくて、副級長にはなっていた。女房役は得意なんです。

富野 よくわかる。(笑)

辻 演出の人と行司役のプロデューサーとちゃんと話ができればいいんだけれども、えてしてプロデューサーの言いなりになっちゃう。そうなるとその番組はだめですね。

富野 だからガンダムのときは二本立て使ったんです。はずす部分をはずせっていったらすぐにはずせる。それで話のシーンをこっちにあるという構造のものをヌケヌケとやりましたね。(笑)

(続く)

 この対談や辻さんに対する感想は後半の対談に合わせて、次回で書きたいと思います。

演出家と脚本家の対決 〈富野由悠季・辻真先〉対談(後半)

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富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~目次

2012/12/15 22:27|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:2
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 富野由悠季監督が著した小説は全部23作75巻あります。

 以下の一連の記事は「あらすじ」「作品解説」「アニメとの関連」「トミノ的必見ポイント!」「連載と各版本の比較」「入手状況」「イチオシセリフ」の7つの要素から、その富野小説に対する紹介記事の目次です。

 クリックすると、リンク先の記事に飛ばします。



富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ 前置き

富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その1

1、『機動戦士ガンダム』

2、『伝説巨神イデオン』

3、『リーンの翼』

4、『機動戦士Zガンダム』

5、『ファウ・ファウ物語』


富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その2

6、『「イデオン」ライナー・ノート―アニメの作り方教えます』

7、『破嵐万丈シリーズ』

8、『オーラバトラー戦記』

9、『機動戦士ガンダム ハイストリーマー』

10、『機動戦士ガンダム逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』


富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その3

11、『ガイア・ギア』

12、『シーマ・シーマ』

13、『機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ』

14、『機動戦士ガンダムF91―クロスボーンバンガード』

15、『機動戦士Vガンダム』


富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その4

16、『アベニールをさがして』

17、『ガーゼィの翼』

18、『王の心』

19、『密会-アムロとララァ』

20、『ブレンパワード③記憶への旅立ち』


富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その5

21、『OVERMANキングゲイナー』

22、新版『リーンの翼』

23、『はじめたいキャピタルGの物語』


 もし何かご意見ありましたら、ぜひコメントを寄せてください。どうぞよろしくお願いします。

富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その4『アベニールをさがして』『ガーゼィの翼』『王の心』『密会-アムロとララァ』『ブレンパワード③記憶への旅立ち』

2012/12/08 23:56|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:2
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その4『アベニールをさがして』『ガーゼィの翼』『王の心』『密会-アムロとララァ』『ブレンパワード③記憶への旅立ち』
 大変お待たせしました。富野由悠季全小説案内のその4で、最終回です。今回紹介する作品は『アベニールをさがして』『ガーゼィの翼』『王の心』『密会 アムロとララァ』『ブレンパワード』の5作です。




アベニールをさがして

アベニールをさがしてsmall

あらすじ
 軍国主義化した近未来の日本に、ベストン・クーリガという者が突然に謎の機体で東京上空に侵入し、その危険性を「アベニール」からのメッセージとして、電波ジャックで日本国民に訴えてきた。その不可解な挙動に対し、勇猛なる青年パイロット笛吹慧がテンダーギアを乗って出撃し、高校生日向オノレが好奇心に惹かれて、戦う現場に駆けてくる。しかし、現場に駆けた彼らが目撃したのは、拳銃を握った一人の少女と、謎の機体「アラフマーン」の足下で倒れていたベストン・クーリガの遺体だけだった。
 笛吹、オノレとフール・ケアはそれぞれ複雑な思いを抱いたが、そんな彼等の気持ちを構うこともなく、やがてアラフマーンにめぐる戦火が広がっていて、三人を中心に、宇宙開発にめぐる陰謀がいよいよ明らかになる。果たしてアラフマーンは? そしてアベニールとは?

作品解説
 富野由悠季監督が1995年から1996年かけて執筆したジュブナイルSF冒険小説。青少年向けと作者が明言したことだけあって、謎の神秘組織、宇宙開発に巡る陰謀、暗躍する新興宗教、ミステリ、ロボットバトルなど、SFと青少年好みの要素と題材を上手く融和した出来となっている一作だ。

アニメとの関連
 この作品は舞台が軍国主義化した日本と、機体がテンダーギアと設定されているため、一見どの富野アニメとも関係はなかった。しかしよく読めば、ミノフスキー粒子、フォン・ブラウン・ビリッジなど、ガンダムシリーズでもお馴染みの深い設定が出てくる。そのため、この作品はガンダムじゃないでありながら、時々ガンダムシリーズの宇宙世紀(ユニバーサル・センチュリー)の宇宙開拓初期を描写した作品として挙げられている。
 また、この小説で提起したいくつかのアイデアは、のちの『∀ガンダム』にも影響を与えたと富野本人が発言。それがどの部分かに関して、富野本人は明言してないけど、自分が読んでで、その要素を探すのも一興と言えるかもしれない。

トミノ的必見ポイント!
 富野=ロボットと思っている人は多いと思う。しかし意外なことに、富野のノベライズじゃないオリジナル小説はたった一作を除いて、ロボットが登場する小説なんてなかった。そして、この『アベニール』はその唯一の例外でした。
 しかし、この作品は以上の要素だけではない。同時期に書かれた『ガーゼィの翼』『王の心』が一つのテーマを中心に展開されるのに対し、この小説はアイデアがてんこ盛りで、宇宙世紀の世界観の一部を借りつつ、『ガンダムF91』『Vガンダム』の構想を発展させ、さらに後続の作品の雛形を示してくれて、『V』と『ブレンパワード』とつなぐミッシングリンク的な作品とは言える。

連載と各版本の比較
 版本の違いはない。

入手状況
 朝日ソノラマより出版されたが、今は絶版。

イチオシのセリフ
追加中




ガーゼィの翼

ガーゼィの翼ALLsmall

あらすじ
 浪人生千秋クリストファーが、帰郷の途中でヤマトタケルノミコトを祀る白鳥神社を通るとき、突然謎の声と共に異世界に飛ばされた。そこで彼を待ち伏せているのは、奴隷に使われているメトメウス族とそれらを使役するアシガバ族なのだ。
 いきなり異世界に放り出されたクリスだが、そんな彼は一息つく暇もなく、すぐメトメウス族と共に逃亡する旅を余儀なくされた。一族の棟梁ケッタ・ケラス、神秘な力を持つ巫女ハッサーン、彼に興味津々な女戦士リーリンスなどとも共に行動し、生き延びるためには、クリスは敵軍の無慈悲な追撃を退き、厳しい自然環境を乗え、そのうえ味方の信頼にも勝ち取らなければならない。果たして、クリスはガーゼィの翼を持つ聖戦士になれるのか?

作品解説
 富野由悠季が1995年からTRPG雑誌ログアウトに連載されて、1997年に完結した作品。また、この小説を原作にしたOVAも3巻発売された。オーラマシンなどロボットの要素を排除し、RPG的テイストや要素を取り入れつつ、『リーンの翼』の剣闘や戦記の要素を継承するなどと、ある意味現代版の『リーンの翼』といえる。

アニメとの関連
 同じくバイストン・ウェルシリーズの一つだが、その性質が小説版『リーンの翼』に似ていて、『聖戦士ダンバイン』から持ち込まれた要素はほとんど無かった。
 また、小説の第1巻が終わった頃に、OVAの話が浮上したため、第2巻以降の展開はアニメと並行する形となっていた。もっとも、アニメは『海のトリトン』以降唯一の非ロボット富野作品であり、独自な展開を持っているなどと特筆すべきところも多いが、巻数の関係で物語がどうしても途中に終わる形なので、小説こそ『ガーゼィの翼』の完全版ともいえるでしょう。
 ちなみに、この作品はバイストン・ウェル物語のなかでも唯一フェラリオが登場していない話でもある(アニメでは登場している)。

トミノ的必見ポイント!
 バイストンウェルサーガでいえば、地上の人がオーラロードを通して、異世界に行った話だ。しかし富野はこの作品において、大胆にも新しい要素を導入した。「肉体と精神が二人に分ける」というものだ。もちろん、こっちの世界やあっちの世界に行ったり帰ったりすることもない。つまり、バイストンウェルシリーズのなかでも異色とはいえる。また、近年「身体性」の大事さを常に強調している富野だが、いかに知識と経験を統合し、両方のバランスを取ることに関して、富野が考えた理想的な有り様は、この作品を通して伺えることができる。
 こう書いてはテーマ的に大変そうに見えるが、中身は他の作品以上に若い世代を意識するようなライトタッチがなされていて、そういう意味では文体的にも内容的にも気軽に読めるものになっている。

連載と各版本の比較
 連載版は確認したことなかったが、加筆修正がされている模様。また、第2巻以後は書き下ろしになっているため、版本の差異はない。

入手状況
 OVAまで制作された作品だが、残念ながらすでに絶版した。最初はログアウト文庫で出版されたが、発売元のアスペクト倒産の後、ファミ通文庫版として出版されるが、表紙から中身まではまったく同じ。

イチオシのセリフ

「手当たりしだい、女とやれるというのは、ヒーローの特権だけど、そういうものがないのって理不尽だよな…。愛をリーリンスとハッサーンに振りわけて、アイシェとタンスは、成人までの楽しみとしてとっておく…。相手はメトメウスだけじゃないぞ。勝ったところから、自分好みの女を調達できれば、男の夢の完成だよぉー。」






王の心

王の心small

あらすじ
 母なる大地が滅びかけた時代に、カロッダのシェラン・ドゥ・グラン王が立ち上げて、数百年に及ぶ国内の動乱を一代で平定した。人民は王が果たした偉業を称え、国を救う“天翔伝説”の実現を待ち望んだ。そして老いた王者グラン王は、世界のありのままの姿を己の目で確認すべく、そのまま王位を譲り、一人旅に余生を捧げるつもりだった。
 しかし、そんな望みが叶う前に、グラン王は突如世間を去っていた。死因は毒殺、容疑者は彼の娘と孫たちだった。陰謀、そして王位の行方にめぐって、カロッダ国内は不穏な空気に包まれ、再び動乱に陥ろうとしている…。
 そして、亡くなったグラン王もまた神の見えざる意志によって蘇り、傍観者として王族と国家、そして世界の行く末を見守ることになった。

作品解説
 富野由悠季が一時的テレビアニメ界から身を引いた時期、1995年から1996年かけて書いた小説。同時期に書かれた二つの別作品が既存のアイデアを用いたのに対して、本作は完全に新しい舞台と設定で展開されている。
いつも小説書きとしての自分を卑下する富野本人をして、「(本作で)初めて小説家と言えるかもしれない」と言わしめたこの大いなる問題作は、絶対に読むべし。

アニメとの関連
 この作品はまったくのオリジナル小説なので、どのアニメとも関連性がほとんど見当たらない。あえて挙げるとしたら、世界全体が砂漠の匂いをしている点でいえば、『戦闘メカザブングル』(や小説の『シーマ・シーマ』)に似ているかもしれない。

トミノ的必見ポイント!
 現代だろうと未来だろうと異世界だろうと、かならず「一夫一妻制」をこだわり続けてきた富野由悠季。しかし、この作品は違う。主人公であるグラン王が、4つの妻と1人の愛人をもち、その間に10人近くの子供を儲けている。つまり、この作品は富野監督が「アブノーマルを描く」と端から宣言したに等しい。
 実際、本の中身を読めば、その内容は実にアブノーマルな要素が散りばめている。処女、生首、惨殺、吸血、野合、強姦、ふたなり(!)、近親相姦など、富野のほかの小説ではおおよそ読めないものが、全てこの作品にある。
 こう書くとなんだかすごくエログロなんだけど、実際はただの奇をてらうものではない。むしろ、妖美な雰囲気を醸しつつ、人の世の哀れと人の心の怪しさを真摯に描いて、人の本質を迫る作品とは言える。この妖しくも荘厳なる世界は、富野作品のなかでも唯一無二なものと断言できる。

連載と各版本の比較
 版本の違いはない。

入手状況
 カドカワノベルズより発売されたが、当然ながら絶版。富野小説のなかでもレアな部類に属している。

イチオシのセリフ
追加中




密会-アムロとララァ

密会small(角川mini文庫版)

密会 アムロとララァsmall(角川スニーカー版)

あらすじ
インドのガンジス川畔にある売春宿で働いてる少女ララァ・スン。戦乱のなかで幼い女性が生きるのに男性に身をすがるしかないのだが、皮肉なのが苦難の時代においては、その残酷な温柔郷はむしろ恵まれた環境だと言える。そんな宿命を強いられている彼女だから、時々訳も無く脱走を試みるのである。
 ある日、ふたたび逃げ出したララァはまた途中で捕まったが、まさにその時、一人の青年将校によって助けられた。青年の名前はシャア・アズナブルという。ララァは自分を別の世界へ導いた青年に恩義を感じ、彼に人生を捧げることを決意した。
 一方、サイド7に住んでいる少年アムロ・レイ。母に見捨てられ、父にも無視されてきた孤独な彼も、また別の鬱屈を抱えている。そして戦争の激化により、戦火がサイド7まで広がり、アムロも巻き込まれて、戦いに出ることに余儀なくされる。
 アムロとララァ。やがて二人は、宇宙(そら)でめぐり合うことになる…。

作品解説
 1997年、角川書店のミニ文庫より上下巻として発売された富野由悠季監督の小説。内容もミニ文庫のフォーマットに合わせて、『機動戦士ガンダム』のダイジェスト小説となっている。富野が自作のノベライズを手がけるのはほぼ慣例となっていたが、のちの新作『∀ガンダム』のノベライズを二人の作家に譲れたため、現時点、富野が書いた最後のガンダム小説である。

アニメとの関連
 アムロとララァの二人にフォーカスするこの作品は、間違いなくファーストガンダムのノベライズだ。しかし処女作の『ガンダム』小説と違って、富野は後書きでこの小説をガンダム劇場版の原作と想定してるらしくため、内容も雰囲気も劇場版の補足だと捉えているほうがイメージしやすいでしょう。

トミノ的必見ポイント!
 この小説は一言でいうと、ニュータイプ的な感覚、特にアムロとララァの間のめぐりあいを、男女の間の感情に置き換えた作品だ。もっと言えば、「交感」を「交歓」に翻訳した恋愛小説だ。富野の小説家としてのスキルがほぼ熟成した後期の小説だけあって、非常に読みやすい文体となっている。繊細で痛切、艶やかで情熱溢れる描写は、全富野小説においてはトップクラスの出来といっても過言ではない。
 アムロとララァ。あらゆるガンダム物語の原点とも言えるべき始まりを、原作のテイストをそのまま残しつつ、新たな解釈を与えることができたこの作品こそは、富野小説の集大成だといいたい。

連載と各版本の比較
 初発表のミニ文庫版は字数や段落の制限のため、ひどく簡潔な文章となっている。ボリュームや完成度はスニーカー文庫版のほうが総じて高いので、無理にミニ文庫版を読まなくてもいいと思う。しかしながら伝説の「意地でもガンダムという言葉を出さなかった文章」を味わうなら、わざわざ前者を探すのも一興だろう。
 ちなみに、「アムロとララァ」という副題は初掲時になく、スニーカー版になる時つけられたもの。

入手状況
 角川書店のミニ文庫というフォーマット自体は消滅したので、当然ミニ文庫版も絶版。一方、スニーカー文庫版は今でも新品で買える。

イチオシのセリフ
追加中




ブレンパワード(③記憶への旅立ち)

ブレンパワードsmall

あらすじ
 自然災害で荒廃した近未来の地球。海底から浮上した謎の遺跡オルファンを巡って、それと共に地球のエネルギーを吸い取って宇宙へ飛び出そうとする思想を持つリクレイマーたちと、それを阻止しようとするサバイバル艦ノヴィス・ノアのクルーたちが争っている。
 そんななか、リクレイマーの中核をなす指導者の息子、伊佐未勇も両親のために動いたが、ある任務の最中に天真爛漫で何事も偏見を持たない少女宇都宮比瑪に出会ったことをきっかけに、自分のなすことに疑問を抱くことになる。
やがて、勇はオルファンから脱出し、比瑪をはじめとしたノヴィス・ノアのクルーにふれて、だんだん変わっていく…。

作品解説
 1998年テレビアニメ『ブレンパワード』に合わせて出版されたノベライズ小説。1巻と2巻はアニメのメインライター面出明美氏によるもので、3巻だけは監督の富野由悠季が斧谷稔名義で執筆。ほかの富野小説に比べて、アニメそのままの展開をなぞった内容となっている。

アニメとの関連
 上で書いたとおり、この本はアニメの構成をそのまま文字化した小説となっている。そのため、本編では表現しきれなかったキャラクターやストーリー描写に対する補完も含まれていて、アニメのサブテキストとしての価値を持っている。

トミノ的必見ポイント!
 富野がアニメのノベライズ小説を書く際、必ず小説独自の世界を展開してくれるのだが、この作品だけは違う。もともと書くつもりがなかった富野は、第1、2巻を書いた面出氏の執筆スタイルに則って書いた小説であるため、内容も文体も普段とは異なる。またこの作品は完全にアニメと同じ世界として展開されているため、内容自体はやや精彩を欠けているようにも見える。
 逆にいえば、「他人のスタイルに合わす文体」「富野の純粋なノベライズ」「前2巻と第3巻の差異」などがそのままこの小説の特徴ともなっているので、そこらへんを意識して読むと、内容以上に楽しめるかもしれない。
 ちなみに面出氏によると、1巻と2巻は富野が監修という形で文章などに細かい手入れをしていたため、前の2巻は実質的に合作に近いスタイルとなっている。

連載と各版本の比較
 版本の違いはない。

入手状況
 ハルキ文庫より出版されたもので、ほかの富野小説と比べて近年のものだったが、やはり絶版になっているっぽい。しかし比較的に探しやすい部類なので、入手するのにあまり苦労いらないかも。

イチオシのセリフ
追加中




 というわけで、去年から始まるこの富野由悠季監督の小説を紹介する一連の記事は、とりあえず今回の話をもって一旦終了します。といっても、前話したとおり、まだ修正や追加の作業を残していますので、まだまだ皆さんのご応援と拍手とコメントをお願いします。

▽続きを読む▽

富野由悠季が目指す小津安二郎

2012/12/04 21:30|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:2
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 ガンダムエース2012年6月号に収録されている、富野由悠季監督と與那覇潤氏の間に行われていた対談のなかで、富野監督がかつて小津安二郎監督を目指したという話が出てきました。その内容はとても興味深いものですので、その部分の文字起しをしました。

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富野 先生が『中国化する日本』以前に著した『帝国の残影-兵士・小津安二郎の昭和史』は、僕にとっては非常に興味深い視点で書かれた本でした。
 僕は戦後の小津作品は全部観てますし、何より演出技法的には小津を目指している人間なんです。ただ、技法面での評価しかしておらず、内容的にはつまらない家庭劇しか撮れなかった、かなりオタッキーな人間だと思い込んでいたんです。それが大きな間違いだったと先生の本で知りました。
 小津安二郎という人は、長く中国戦線にいて、陸軍の軍曹までやってる。つまり、非常にシビアな戦争体験の持ち主なんです。

與那覇 丸二年くらい行ってましたからね。

富野 先生が引用されている戦争に関する小津の言葉は、量としては少ないけれどそれ故にどんなに苛烈な体験だったのかというのが伺えます。あれ以上はしゃべれない、しゃべりたくないという兵士の気分はすごくよくわかるんです。小津は、戦場でリアルに殺し合いと被災者と死体と前線というものを体験した人だった。だから、ささやかな家庭劇を作り続けることで、自分は戦争を描かないということを徹底的に意思表示してるんですよね。この凄まじさがわかったときに、観念的にですが、僕、小津作品が大好きになりましたもん(笑)。ここまで耐えたのか、と。それほど兵士の体験というのはなまじのものじゃなくて、もしかしたら小津も中国人を殺しているかもしれない。そんなものはうかつに映像化できるわけがないんですよ。
 これはほかの戦争体験者も同じで、本当の生き死にをやってきた人は絶対しゃべらないですよね。戦争の話をしてるのは、その周辺にうろうろしてた奴で、そういう戦争体験しか僕らは知らない。だって、人を十人殺した奴は絶対しゃべりませんからね。その痛みを持って表現者に戻ったときに、それは原節子に行っちゃうよなぁっていうのはすごくわかるんです。ただそれは小津の作品だけを観ただけじゃわからない。そんなに簡単なものじゃないんだということを教えられて、本当にありがたかったんです。

與那覇 富野監督が小津作品を目指したというのは、文化史的に非常に貴重な発言なような気がします。もしかしたら、アニメーションって小津作品に近いんじゃないでしょうか?

富野 アニメの場合、技術的にそんなに自由に動かせないから小津的になるんですよ。特に僕はそれを意識しました。小津の映画って、横の動きだけじゃなくて奥行きを感じさせる前後の動きがものすごくきれいなんですよ。こんなにきれいに人が動く映画ってまずない。恐らく外国人が小津作品を好きな理由もそこにあると思います。

與那覇 なるほど。監督はかつて松竹ヌーベルバーグへの反発心があったとおっしゃっていますよね。ヌーベルバーグとは、動きのひとつひとつをきちんとカット割して撮るよりも、置きっぱなしのカメラの前で役者に勝手にやらせたほうがリアルだとして、それまでの映画の文法を破壊するような試みだったわけです。それに対してアニメというのは、まず描かなきゃ画面にすらならないわけですから、自分で世界を作る必要がある。作品世界をきちんと演出しきるというスタイルが、小津安二郎から富野監督を経て、実写ではなくアニメのほうへと流れていったというのは、僕にはとても重要なことに思えます。

富野 そういう意味では宮崎監督もそうだけど、アニメの監督という目線で語られてしまうことが多い。でもね、劇を組み立てる、物語の世界観を構築するということに関しては、アニメ監督の方が実写の監督よりもはるかにレベルは高い。”らしさ”を作るのに、実写のような力のある映像ではなく、絵という記号を使うしかないんだから。それを組み立てる構造論はなまじのものじゃない。でも、映像関係者はとにかくこれをわかってくれませんね。実写の方がリアルだと思って。

與那覇 それは小津が戦後に浴びた批判と同じですね。街角にカメラを持ち出すのがリアルなんだ、お前のは作りものじゃないか、こんな嘘臭い理想の家族なんかどこにもないよと叩かれたわけですが、実際には映画の中で現実を構成していく力というのは、小津の方がはるかに高かったんですよね。

 非常に興味深い話で、富野が今までも何度か小津映画を言及したことはありましたが、ここまではっきりとそれを目指したのは、おそらくこれが始めてです。また、小津の戦争体験が映画に及ぼした影響とかに対する指摘も興味深いものです。

 とはいえ、私には小津を論じる力がありませんので、皆さんのご判断に任せます。

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