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レビュー:『ガンダム世代への提言Ⅰ 富野由悠季対談集』

2011/08/07 01:02|レビューTRACKBACK:0COMMENT:2
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - レビュー:『ガンダム世代への提言Ⅰ 富野由悠季対談集』
 今日『ガンダム世代への提言 富野由悠季対談集 I』を入手し、さっそく読破しましたので、ここで簡単なレビューをしたいと思います。これから購入しようとする方への指南になってくれればありがたいです。



 この本はご周知のとおり、月刊ガンダムエースにて好評連載中の対談企画「教えてください。富野です」(初期:「富野さんこんにちわ」)の単行本化したものです。7月は1巻、8月は2巻、9月は3巻といった具合で三ヶ月連続刊行とのことで、収録分は2003年5月から今年の5月号まで網羅する仕様です。6年前も一度単行本がありましたが、今回は版型を変えて新たな単行本なので、それに合わせて変わった部分もいろいろあります。

 まず、1~3巻共通の変更点を以下で説明します。

1.版型の変更により、ページや収録数も変わる。雑誌の8ページから新単行本の12ページになり、収録回数も旧単行本の24回から今回の32回に大幅増加。1巻と2巻のページ数はそれぞれお399ページと400ページで、かなり厚くてお買い特仕様。

2.その代わりに、紙質がそれほど良くない。いわゆる「わら半紙」ってやつに印刷されている。ほぼ文字だけの本だから、ただ読むだけでは支障が出ないが、長く持ちたいという点から見ればややマイナスか。

3.本書の注意書きによると、年齢、肩書き、数値などのデータは基本的に対談当時のものに基づくが、一部2011年7月時点のものに修正されたものもあるらしい。また、この本は2003年~2006年の対談を収録されるもののため、一部の話題が今読むといささか古く感じるかもしれない。

4.対談始めの前振りは大半省略された。例をいうと、対談のはじめに、富野監督はよく「僕は~~を見て、~~と感じました。それで~~さんに感心してますが、まず~について教えてください」みたいな前振りを言っているが、これらは今回の単行本ではカットされた部分も多い。

5.文章自体はかなりの編集が入っているが、それで内容的に損なった部分はほぼ無い。しかし編集が入っているため、ユーモラスな部分、富野監督の素直な反応や、逆に対談者が富野監督の鋭い指摘に感心する掛け合いも無くなった。個人にとってはかなり惜しい部分。

6.写真や図解などはほぼ削除された。写真自体に拘らない方にとって別になんともないが、写真で対談の雰囲気を伝ったり、図解で対談の内容の理解への促進したりする機能も無くなってた分、読んでであまり飲み込めない話もあるかもしれない。

7.また、対談終えての富野監督の感想やオススメ著書も収録されていない。対談集とはいえ、富野監督個人の魅力に負う部分は否めないので、そういう結論代りの感想は残ってほしかった。

 以上は今回の対談集を購入する際、ぜひ参考してもらいたい部分です。以下は、この第1巻について簡単なレビューをします。



 まず、これは本書の対談者の一覧です。

『富野由悠季対談集』7月26日発売! 第1~32回対談者紹介

森津純子  ホスピス医
中村好寿  軍事アナリスト
山本すず  (旧姓千葉)水泳インストラクター
坂村 健  東京大学教授/YRP ユビキタス・ネットワーキング研究所所長
上妻宏光  津軽三味線奏者
かづきれいこ フェイシャルセラピスト/医学博士
出口恭子  Johnson and Johnson, Global Leadership Associate
松井 誠  役者
斎藤 孝  明治大学文学部教授
加藤陽子  東京大学大学院人文社会系研究科教授
米濱和英  リンガーハット代表取締役会長兼社長
水谷 修  『夜回り先生』著者
石崎晴己  青山学院大学文学部教授
野口聡一  宇宙飛行士
赤星栄志  バイオマス(生物物資)研究開発
沖 大幹  東京大学生産技術研究所教授
山崖俊子  津田塾大学教授(臨床心理士)
藤井あけみ チャイルド・ライフ・スペシャリスト
大月隆寛  民俗学者
GEN CORPORATION 一人乗りヘリコプター開発会社
三沢直子  臨床心理士
大和ミュージアム  呉市海事歴史科学館
セーラ・マリ・カミングス  枡一市村酒造場代表取締役/唎酒師
山折哲雄    国際日本文化研究センター所長(現名誉教授)
伊藤比呂美   詩人
川勝平太    国際日本文化研究センター副所長(現静岡県知事)
宮坂宥洪    岡谷市照光寺住職
山崎バニラ   活弁士(活動写真弁士)
土屋アンナ   モデル・アーティスト
小菅正夫・坂東元  旭川市旭川動物園園長・副園長
日野晃  武道家
石川正俊  工学博士/東京大学教授


 簡単に分けてみますと、収録されている対談には以下の種類があります。

1.「今」の人:
 対談当時、富野監督が着目した人。対談相手は大抵一つの特定した領域で活躍していた人。それらの対談者は大抵生半可ではない道を歩いてきて、鮮やかな人生を過ごした人だが、対談時期は時期なので、こういう種類の対談は相手によっては今読むと話題が古くなったり、対談者が当時ほど活躍しなくなったりするので、全体でいえば鮮度が一番落ちやすい種類の対談。
 この1巻でいえば誰かは明言しないけど、シンカーとかスポーツマンとか賞味期限が短い職業の人はこれに当る。

2.「今」の物事や事物:
 対談当時、富野監督が着目したあらゆる物事。物流のシステムだったり薬物問題だったり珍しい会社だったりする。これも対談の内容によっては古くなったりする。でも、だからといって、その物事から学べないことはないので、単に「人」に着目した対談よりはタメになる気がする。
 この1巻でいえば、一人乗りヘリコプター、ユビキタス、リンガーハットや旭川動物園などがこれにあたる。

3.目立たない特定の領域:
 ある分野で確実に必要されている、もしくはもっと重視されるすべき職業や領域で頑張っている人に対しては、富野監督は賞賛を惜しまないし、対談を借りて世間の注目を喚起する。実際、富野監督が注目しているこれらの領域は10年近く経った今でも、十分な発展や理解を得たとはいえず、こういう方面から見ても、これから我々はもっと重視しなければならないと言える。
 この1巻でいえば、フェイシャルセラピストやチャイルド・ライフの話などはこれにあたる。

4.科学技術や工学などテクノロジー的なもの:
 ある意味上の「2」とダブる部分もあるが、富野監督は感性的な人である一方、科学や実学について興味を持つ同時に、日本の理系軽視にカウンターを置く意味でも、それらの知識をとても重視する。こういったものはたかが10年間で否定されるわけがないので、今読んでも感心させられる対談は多い。
 この巻でいえば、バイオマスがこれにあたる。1巻はどっちかいうと理論や思想的な対談は多いが、2、3巻に収録される部分はさらに理学的なので、こういう話題好きな人はぜひ。

5.ある特定領域が提起する普遍的テーマ:
 富野監督は何がすごいと問われたら、たぶんこの特定した領域から「普遍的なもの」を探ろうとする心が一番すごいでしょう。歴史的なもの、あるいは人自身から何か「普遍的なテーマ」を見つけようとするこの種類の対談は、10年近く経った今読んでも、全然古く感じさせない。だって普遍的なものには鮮度という概念さえない。人の心性、社会の問題、国家の在り様、世界の未来。これらをきちんと見つめている対談こそは、ある意味この富野監督による対談の真骨頂。
 この1巻でいえば、森津純子氏の人の生死の話、宮坂宥洪氏の仏教と般若心経の話、伊藤比呂美氏の詩とファンタジーの力の話などはこれにあたる。

 全部の対談を分類したわけじゃないが、大抵以上の4種類に分けていると考えれば、だいたい掴めると思う。



 最後、本書の最後にガンダムエース2008年11月号に掲載された「トミノの出来方」が収録されてるが、当時掲載されていない新しい写真も収録されている。もっとも、この「トミノの出来方」は第1回こそお宝写真満載だったものの、その2とその3はものすごくショボイ記憶がするのだが。

 大好評発売中の『『ガンダム世代への提言 I 富野由悠季対談集』。1400円で32種類の知識や新しい話を獲得できる。まだ買っていないなら是非試しに読んでください。



 それから、ここでブログを呼んでくださっている皆さんに頼みたいのですが、本書には読者アンケートハガキがついていますが、もしアンケートを送る余裕がございましたら、どうかガンダムエース編集部や富野由悠季監督に「『はじめたいキャピタルGの物語』なり新しい小説を読みたい」というご意志を伝えて欲しい。アニメ企画はなかなか先が見えない今だからこそ、富野監督のガンダムエースまたは角川書店での新作が見たいです。そう思いませんか?


 2巻と3巻もただいま好評予約中。




コメント
お久しぶりです
さすがkaitoさん、仕事がはやいですね

読み始めたばかりなのですが、僕の記憶力がないせいか(!?)そう違和感なく読めています
前の対談本なり、雑誌なりで読んでいた人は、対談者の写真がドッカと載っていないと寂しいわけですが
初めて読む人にはとりあえず問題のない構成だと思います
前のは対談者24人で1900円。今回は省略された部分もあるとはいえ、32人で1400円ならば、リーズナブルですし手に取りやすいのではなかろうかと

が、ここで一つ大きな問題があります
日本の書店では、ガンダムエース発のためか、あくまでガンダム関連のものとして扱われていることです
僕自身は、オリジンの横に置かれているのを発見しました(苦笑)
オリジンに恨みはないのですが、余りにも本の内容と店の扱いが噛み合っていません
もう少し正当な扱いを受けられるように、角川書店に頑張ってもらいたかったですね
クロノクル=ローマの人 #-|2011/08/09(火) 21:05 [ 編集 ]
久しぶりですね、クロノクルさん。書評いつも拝読しておりますよ。

それはある意味仕方ないことですよ。公式サイトを読めば分かると思いますが、角川書店に「コミック本」扱いされてますから。内容はそれこそ硬派な対談本にも関わらずこんな扱いされて、わたしだってもっと上手くやれないかと思っております。

kaito2198 #-|2011/08/10(水) 19:13 [ 編集 ]
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