富野由悠季監督とその作品をひたすら語るブログ

TOMINOSUKI / 富野愛好病
http://kaito2198.blog43.fc2.com/

プロフィール

kaito2198

Author:kaito2198
台湾人。
ただのファンです。

twitterは@kaito2198です。

仕事やブログ関係のご連絡は
kaito2198@hotmail.comまでお願いします。

給華文圈之富野由悠季愛好者的一些話
關於本站文章的轉載聲明

富野監督関連資料一覧

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

グーバーウォーク

富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その1 『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』『リーンの翼』『機動戦士Zガンダム』『ファウ・ファウ物語』篇

2011/03/29 02:50|富野由悠季関連TRACKBACK:1COMMENT:2
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その1 『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』『リーンの翼』『機動戦士Zガンダム』『ファウ・ファウ物語』篇
 ご存知のとおり、富野由悠季監督は本職のアニメ制作の傍ら、小説創作にも手がけています。事実、富野監督が書く小説は現時点では23作、75冊にも及び、小説家と言われても恥ずかしくない実績を残っています。また、小説の中にアニメにも負けないくらい面白い作品が多く、その内容はもっと評価されてもいいはずなのに、数があまりにも多いため、今日まで至って一部しか注目されてない現状に、個人的はいつも惜しいと思っています。

 なので、この回を含めて5回に分けて、富野監督が書いた23作を紹介したいと思います。

 今回は第1弾として、『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』『リーンの翼』『機動戦士Zガンダム』『ファウ・ファウ物語』の5作を紹介させていただきます。




機動戦士ガンダム 全3巻 1979~1981年 ソノラマ文庫書き下ろし

機動戦士ガンダム(ソノラマ文庫)ALLsmall(非スキャン)(ソノラマ文庫版)

機動戦士ガンダム(スニーカー文庫)small(スニーカー文庫版)

あらすじ
 宇宙世紀0079、地球から一番遠い宇宙植民地サイド3が「ジオン公国」と名乗り、地球連邦政府に独立戦争を仕掛けてきた。ジオン脅威の技術力によって作られた巨大な機動歩兵「ザク」圧倒された連邦だが、いま反撃に備えて、「V作戦」を発動しようとしており、少年アムロは候補パイロットとして戦争に身を投じることになる…。
 戦いに通じて、少年アムロはいろいろな人と出会い、アニメ以上の成長を遂げる。強敵シャア・アズナブル、愛しい金髪さんセイラ・マスの兄妹との愛憎。ララァ・スンに代ってアムロと交感する第2の女性クスコ・アルの登場。すべてを洞察するニュータイプ、シャリア・ブル。そして、衝撃のラストへ…。不朽の名作『機動戦士ガンダム』のもう一つの顔が、今あなたの目の前に。

作品解説
 最初のテレビシリーズが始まって今日に至るまで、ガンダムの小説はすでに100冊以上出版されたが、その基礎を作り上げたのは、まさにこの『機動戦士ガンダム』。しかも、この作品は単にノベライズに留まらず、原作者・総監督である富野由悠季(当時、富野喜幸)本人の筆により、後半は完全にオリジナルの構成になっている。当時のガンダムブームと相乗効果で大ヒットして、今日までのライトノベルの流れを作ったこの作品は今でも読まれ続けて、まさにガンダム小説の原点にして頂点の一つといえるだろう。

アニメとの関連
 よく「富野由悠季監督は単なるノベライズを書かない」とされているが、これが正しい。この『機動戦士ガンダム』も第1巻こそ大まかテレビシリーズの流れに沿っているものの、第2巻からは同名の映像作品とかけ離れている展開になっている。
 とはいえ、まったくの無関係ではありません。後半のオリジナル部分は実際打ち切られた第4クールに関する原案(通称「トミノメモ」)の一部を流用したものなので、テレビシリーズや劇場版をより詳しく知りたい人は読むといいだろう。また、この作品に出る多くの設定は後にガンダムシリーズやゲームにも取り入れられ、ガンダム世界の深化に大きな役割も果たした(たとえばレビル将軍の「ジオンに兵なし」演説やシャアの第2の名前)。そういう意味でも、必読書といっていい。

トミノ的必見ポイント!
 この作品は富野監督が始めて出版した小説で、そして「小説家・富野喜幸」の華やかなデビューでもあった。これより以前も、富野監督は『無敵超人ザンボット3』の小説を書いたことがあったが、初めて出版を遂げたという意味では、富野の処女作といえる必読の書だろう。
 たが、この本の価値はそれだけではない。富野喜幸による始めての「文芸」に対する挑戦でもあった。富野の文芸的エッセンスが映像作品に発揮されるのは『イデオン発動編』まで待たなければならないことから考えれば、この小説はまさにエポックメイキングと言っても過言ではない。ラストの裸身で海に飛び込むセイラさんは美しい。

連載と各版本の比較
 朝日ソノラマ版はもともと第1巻しか予定されていないため、第1巻と第2、3巻のカバーデザインはまったく違う。これに対し、角川スニーカー版の表紙は一貫として美樹本晴彦氏が担当。
 中身に関して、スニーカー版はソノラマ版に比べて多少加筆補正がされてるほか、巻頭に人物紹介や口絵、巻末に解説が追加される。充実度でいえばスニーカー版だが、オリジナルのトミノエッセンスを味わいたいなら、あえてソノラマ版を選ぶのもよし。

入手状況
 この作品は発売当時から大ヒットし、朝日ソノラマ版と今の角川スニーカー版を合わせて、売上げは100万冊、再版が100版に行っちゃうくらい超ベスト&ロングセラーです。今は角川書店よりスニーカー文庫のレーベルとして出版されていますので、入手は非常に簡単(KINDLE版も発売されています→)。
 また、朝日ソノラマ版も数量が非常に多いので、探せばすぐ中古本が見つかると思います。

イチオシのセリフ

「乳首って意外と小さいんだな……」




伝説巨神イデオン 全3巻 1981~1982年 ソノラマ文庫書き下ろし

伝説巨神イデオンsmall(ソノラマ文庫版)

伝説巨神イデオン(角川文庫)(非スキャン)ALLsmall(スニーカー文庫版)

あらすじ
 時ははるか未来。ソロ星。バッフ・クラン名はロゴ・ダウという惑星に、二つの文明、二つの種族はここで接触を果たした。そして、ほんの少しの行き違いと誤解で、交戦が始まった。戦闘のなか、古代文明の遺跡のなかに眠っている「イデオン」が自らの意志で発動し、覚醒をした。遺跡から3つのメカが突如起動し、巨大な人型に合体して立ち上がったのだ。イデオンの力を借りて一時敵を撃退した主人公コスモ・ユウキらだが、イデオンに執着しているバッフ・クランの追撃から逃げるために、果てしない逃亡を余儀なくされる。しかし、これが銀河の無限力「イデ」発動の序曲になることは、その時はまだ誰も知らなかった…。

作品解説
 ご存知のとおり、テレビアニメ『伝説巨神イデオン』の同名小説で、『機動戦士ガンダム』に続いて原作・総監督富野喜幸の2作目の小説。テレビ版や劇場版と微妙に展開が違いながらも、ベースとなる設定背景は同一のため、テレビ版ではドラマ展開のために語られなかった社会的背景、文化的背景などは、この小説を読めば存分に堪能できる。

アニメとの関連
 オリジナルの結末で展開された前作小説『機動戦士ガンダム』と違い、本作はテレビシリーズと近いベースで書かれたため、テレビ版では語られなかったイデの伝説やバッフ・クランの社会組織、さらに主人公コスモたちの背景などを分かるようになる。そういう意味では、正統なノベライズといえるかもしれない。
 さらに、実はこの小説版は『イデオン』の世界観に関する大きな秘密が秘めている。その秘密はいったい何なのか、ここではあえて伏せてるが、一つだけヒントを挙げると、「アニメ版も小説版もバッフ・クランの目線から導入される」ということの意味をじっくり考えてください。これを分かれば、「二つの地球」「母星」の深い意義も分かるはずだ。

トミノ的必見ポイント!
 『ガンダム』の小説版と比べていまいちマイナーだが、この作品にも見所が満載であることを忘れられない。いろいろあるが、もっとも特筆すべきなのは、これが富野監督が初めて「文化論」を作品に持ち込んだ挑戦である。
 『ガンダム』以前の富野作品の世界観は、あくまで設定の程度に留まっている。『イデオン』のアニメ版では一応バッフ・クランの社会について設定しておいたが、実際のドラマに全然反応できなかったため、実質的に無いにも等しい。しかしこの作品においては文化論に関する部分は大きな作用を発揮していて、物語のカギといっても良いだろう。これがのちの『戦闘メカ ザブングル』、『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』といった異世界三部作の作り方にも繋がって、富野作品において文化論の嚆矢といえる。
 ちなみに、我らがヒロイン「キッチ・キッチン」は期待を裏切らず(?)に、この小説版ではテレビシリーズとも劇場版とも異なる死に方を遂げる。どう考えても嬉々と書いたな、富野さん(苦笑)。

連載と各版本の比較
 朝日ソノラマ版はテレビシリーズのキャラデザインの湖川友謙によるもの。角川スニーカー文庫版のキャライラストは後藤隆幸だが、話題はもっぱらメカイラストの小林誠のイデオンに取られるばかり。アフロじゃないコスモや美少女美少女してるカララもそれはそれで衝撃だと思うけどな…。
 スニーカー版は持っていないので、本文の加筆があるかどうかは分からない。ご存知の方はご情報を提供して頂けると嬉しい。

入手状況
 この作品は朝日ソノラマより出版され、のちに角川書店にて発売されたが、今はどちらも絶版。しかし古本市場ではソノラマ版の出荷量が絶対的に多いので、入手したいならソノラマ版が見つかりやすいだろう。

イチオシのセリフ

「あなたってどうしょうもないのねえ。どうしてカララに会う前に女の口説き方の一つも習わなかったの? 女っていうのは口説かれるのを待っているのよ。こんなことじゃ……もう私だって抱けやしなくてよ……フフ、……もっともこんな悲しい醜態をさらす女を口説く気にもならないでしょうがね……」




リーンの翼 バイストン・ウェル物語より 全6巻 1983~1985年 野性時代連載

リーンの翼 (カドカワノベルズ)ALL1small(カドカワノベルズ版)

リーンの翼(角川文庫)ALLsmall(スニーカー文庫版)

あらすじ
 時は1945年、太平洋戦争の末期。大日本帝国海軍の二飛曹、迫水真次郎が秘密兵器「桜花」で米軍のB-29へ特攻を仕掛けたが敵機に撃墜され、空中に投げ出された瞬間に、異世界バイストン・ウェルへと召喚される。
 異世界の地に落ちた迫水は、国おこしを目指す豪傑アマルガン・ルドルと盟友となり、さまざまな困難を乗り越え、女王リンレイ・メラディを始め、いろんな人との出会いを経て、一介の猪武者から自立する戦士にまで精神的に成長する。やがて、鍛えた直心陰流剣術と、伝説の勇者の証である「リーンの翼」を顕現したことにより、「聖戦士」と呼ばれることになり、戦雲渦巻くバイストン・ウェルの乱世を平定する英雄となるのだが…。

作品解説
 1983年から85年、角川書店の文芸誌「野生時代」にて連載された作品。富野由悠季による初のオリジナル小説である同時に、富野由悠季による始めてロボットが登場しない作品でもある。大日本帝国の特攻兵でありながら、異世界に落ちて剣一本で戦い抜いた主人公迫水真次郎のその姿とその物語は、戦記ものであり、SFであり、ロマン・ファンタジーでもある。日本人のバイタリティを真正面に描く傑作小説。

トミノ的必見ポイント!
 テレビシリーズの作品に頼らないオリジナルということは、「小説家・富野由悠季」の誕生を意味するものであろう。事実、この作品はアニメ監督、富野由悠季は小説においても優れる制作能力を発揮し、それをヒットさせられることを証明した。当時「野生時代」で連載されたこの作品は文芸作品と見なされ、著者の富野監督も「現代用語の基礎知識」にて赤川次郎らと並びに、代表的なノベルズ作家の一人として挙げられるほどだった。
 また、富野監督の文章は時々下手と挙げられるが、それが間違いである。『ガンダム』と『イデオン』の頃はまだ不慣れが見られるものの、この作品になると、すでに流暢に読めて魅せる文章となっている。

アニメとの関連
 『聖戦士ダンバイン』と同時に展開された「バイストン・ウェル物語」創生期の作品であり、アニメや小説に留まらず、ゲームや模型にも展開されたバイストン・ウェル物語の基礎を作った作品でもある。そのエッセンスは後に派生作品『オーラバトラー戦記』や『ガーゼィの翼』に継承され、2005年にはアニメ版が制作される。特に2005年のアニメ版『リーンの翼』(原題は『21世紀リーンの翼』)は、一部の話が繋がらないものの、重要キャラはそのまま継承される形となっているので、そういう意味でも必見の作品といえる。
 また、ちょっとウンチクとして、『ダンバイン』でゲスト登場を遂げるハロイ・ロイもこの作品の重要人物の一人だ。

連載と各版本の比較
 連載版は読んだことないのだが、加筆や修正がある模様。カドカワノベルズ版や角川スニーカー文庫版はどちらも文章が同じで、違いは挿絵はそれぞれ湖川友謙と大森英敏が担当くらい。
 内容に関しては単行本になった新版『リーンの翼』にもほとんど収録されているが、新版の迫水は敬語になったり謙虚になったりして雰囲気はやや違う上、結末も違うものになっているため、読むときは要注意。

入手状況
 旧版であるカドカワノベルズ版やスニーカー文庫版は共に絶版したが、最低でも10版以上が再版されるので、全巻揃うところも少なくない。古本屋で丹念に探しましょう。

イチオシのセリフ

“俺は、女のしょんべんの餌食かっ!”“ええい! 日本男児が、フェラリオごとき得体の知れない女の……”




機動戦士Zガンダム 全5巻 1985~1986年 講談社単行本書き下ろし

機動戦士Zガンダム (講談社)(非スキャン)ALLsmall(講談社版)

機動戦士ZガンダムALLsmall(スニーカー文庫版)

あらすじ
 宇宙世紀0087、1年戦争からすでに十年近いの歳月を過ぎたが、戦争の爪跡は未だに人々の心のなかに残っている…。ジオン残党狩りの名目で権力を振るって、地球連邦軍を私物化したエリート部隊「ティターンズ」に対して、反政府組織「エウーゴ」が武力をもって挑む。そのなかに、かつて「赤い彗星」と呼ばれる男、シャア・アズナブルの姿もあった。一度地球圏から離れた彼だが、時代を見極めるために、再び戻ってきた。
 やがて、両者が武力衝突する時が来た。そしてその戦火のなか、一つの少年が立ち上がる。昔のアムロ・レイのように…。彼の名はカミーユ・ビダン。

作品解説
 『機動戦士Zガンダム』の小説版。小説『機動戦士ガンダム』が後のガンダム小説シリーズと繋がらないオリジナル展開になっているのと違って、こちらは比較的に原作のテレビシリーズに忠実している展開なため、アニメのサブテキストと捉える人も多い。
 アニメ版と比べて、展開はよりマイルドになり、キャラクターは深く掘り下げられ、構成も丁寧で、こちらの物語がアニメ版より見やすいという評判もある。また、『ガンダム』世界に関する設定や描写の満載も見所の一つ。

アニメとの関連
 よくアニメ版との差異が分からないといわれるが、カミーユの家族に渇いてるフラストレーション、シャアの考え、シロッコの思想、ハマーンの描写など主要キャラに重さを置くことやエピソードの差し替え以外、一番違うのは、レコア・ロンドの中途退場だろう。これによりドラマがエマやレコア拡散されず、よりカミーユに集中することに。そのほか、「スィートウォーター」などアニメしか見ない人から見れば『逆襲のシャア』に突然に出る設定だが、実際はこの作品ではすでに決められたものだった。

トミノ的必見ポイント!
 ほかの富野監督によるガンダム小説と比べて、特徴らしい特徴(例えば『ハイスト』の前日談や『F91』の建国話)を持っていないため、知名度や普及度の割にいまいち話題に上がりにくい『Zガンダム』の小説だが、実際は戦闘シーンの描写は他の小説と比べて平坦だけれど、構成に関してはピカイチ。テレビシリーズのいくつかのエピソードを順番入れ替わりまとめた結果、実質的にアニメより丁寧な作りだった。
 また、後の作品と比べて粗が見えるものの、ガンダムの続編でガンダムシリーズの始まりということで、本格的な世界観に対する設定も始まる。この世界観は『逆襲のシャア』『ガイア・ギア』『閃光のハサウェイ』なども共通してるもので、『Zガンダム』のテレビシリーズは放送に追われてそれどころじゃないのを考えて、この作品は文化論をガンダムに導入する初めてのガンダム作品といえるかもしれない。
 さらに、この作品はアニメ版に比べて、「家族論」に比重を置いてるため、『逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』に繋がることを判明できる。言い換えれば、この作品は富野が構想しているガンダムがあるべき姿に近いということにもなる。

連載と各版本の比較
 最初の講談社版は、永野護が表紙と挿絵担当するのは何よりの特徴であろう。角川スニーカー版は共通として巻頭に人物やメカ紹介、巻末に解説や富野監督によるあとがきが挿入される。また、『ガンダム』に加筆修正があると同じように、こちらのスニーカー版も講談社版に比べて一部の修正がなされている。

入手状況
 『ガンダム』に次ぐガンダムシリーズのベストセラーで、25年を経って最低でも50版以上が再版されて、今でもスニーカー文庫で簡単に新品を買えるほどの人気作(KINDLE版も発売されています→)。また、永野カバーの講談社版は全巻揃っているのがそこそこ見かける。

イチオシのセリフ

『君の無謀さは、まるでアムロ・レイの再現だと思ってな……』




ファウ・ファウ物語(リストリー) 全2巻 1985~1986年 ニュータイプ連載

ファウ・ファウ物語(リストリー)small

あらすじ
 バイストン・ウェルを覚えていますか? 誰しも知っている、けれど生まれた瞬間に忘れてしまう、たとえて言えば母胎の羊水に包まれたような暖かい世界なのです。
 そんなバイストン・ウェルからひょんなことから、地上界に産声をあげた主人公ファウ・ファウは、少女エミコと出会い、さらに大人という別種族にも出会い、この世界をパニックに陥れた、天使ちゃんです。

作品解説
 1985年、月刊ニュータイプの創刊と同時に連載がはじまった作品。『聖戦士ダンバイン』などバイストン・ウェル物語でお馴染みのミ・フェラリオが主人公で、物語も一切殺伐なものはなく、童話風の御伽噺で展開されている。
 冒険を物語主体に置かずに、少女と妖精の触れ合いを描くストーリーは主な読者が青少年であるニュータイプにとっては新しい試し。この異色作の連載期間は『重戦機エルガイム』から『機動戦士Zガンダム』をまたにかけるものを考えれば、当時富野由悠季の創作のバイタリティを伺える。

アニメとの関連
 ご存知のとおり、「ミ・フェラリオ」という種族は『聖戦士ダンバイン』などバイストン・ウェル物語に出てくるチビの妖精のこと。しかしながら、『ダンバイン』にはチャム・ファウ、『エルガイム』にはリリス・ファウ、『ガーゼィの翼』にはファラン・ファ、『リーンの翼』にはエレボスが登場しているわりに、ミ・フェラリオはいったいどういう存在なのか、本当の意味で知っている人は少ないと思う。
 しかし、この『ファウ・ファウ物語』は全編ミ・フェラリオにフォーカスする分、それをより知ることができる。アニメ版では語られなかったミ・フェラリオの存在意義、そして地上界とバイストン・ウェルを繋ぐ使者的な役割はいったいどういうものなのか、そしてミ・フェラリオは決して耳元でうるさいだけの存在ではないこと、この作品を読めば分かる。

トミノ的必見ポイント!
 現時点、富野監督が書いた唯一の童話風小説。ちなみに、富野は1997~8年でも角川春樹事務所の依頼より『どろろんKAGUYA』というタイトルで女の子向けの童話を書こうとしたが、後に精神不調で挫折した。なので、この『ファウ・ファウ』は今日まで至って富野小説のなかでも格別といえるだろう。
 この物語の主人公であるファウ・ファウはバイストン・ウェルから突然落ちたミ・フェラリオで、そしてもう一人の主人公エミコはまだ小学生なので、当然ながら戦闘的な冒険は一切ない。しかし、チビちゃんのファウ・ファウにとって地上界での生活は他ならぬファンタジーそのものだし、不思議な存在であるファウ・ファウが地上界に侵入することによって、普段の生活もなんだかファンタジーになっている。ファウ・ファウの目線、少女エミコの目線から見た大人の世界は、たとえ可愛いらしくても、やはりどこか不条理でおかしいかもしれない。激しい展開と複雑な愛憎劇がない分、この作品はバイストン・ウェル物語の本質を示しているかもしれない。

連載と文庫版の比較
 連載版は持っていないので、よく分からないが、加筆修正はされてる模様。また、文庫化される際には口絵と語りが挿入される。

入手状況
 『ファウ・ファウ物語』は角川(スニーカー)文庫より出版されたが、今や絶版。しかしそこそこの数が出回っているため、古本屋かネットオークションをこまめにチェックすれば、そんなに見つからないものではない。
 しかし、ここでは一つ重要のポイントがあって、絶対に見落とさないでほしい。上巻は二版以後口絵がなぜか下巻と同じものに差し替えられて、そして下巻はなぜか初版だけが連載第11~13回(文庫の第17~22章に当る)が未収録になっているため、上巻を買いたいなら初版、下巻を買いたいなら初版以外。絶対です。詳細は私が書いた記事「『ファウ・ファウ物語』各章タイトル」を参照ください。

イチオシのセリフ

「でも、動くのって、命あるから動くのでしょう? この絵、命がないわ。動いてはいけないものが、動いているなんて、とても気持ちが悪くない?」




 以上は今回の内容でした。次回は『「イデオン」ライナー・ノート―アニメの作り方教えます』、『破嵐万丈シリーズ』、『機動戦士ガンダム逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』、『機動戦士ガンダム逆襲のシャア ハイストリーマー』、『シーマ・シーマ』の5作を紹介したいと思います。


関連記事
富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ 前置き

富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その2
『「イデオン」ライナー・ノート―アニメの作り方教えます』
『破嵐万丈シリーズ』
『オーラバトラー戦記』
『機動戦士ガンダム ハイストリーマー』
『機動戦士ガンダム逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』


富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その3
『ガイア・ギア』
『シーマ・シーマ』
『機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ』
『機動戦士ガンダムF91―クロスボーンバンガード』
『機動戦士Vガンダム』


富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その4
『アベニールをさがして』
『ガーゼィの翼』
『王の心』
『密会-アムロとララァ』
『ブレンパワード③記憶への旅立ち』


富野小説の世界へようこそ ~富野由悠季全小説案内~ その5
『OVERMANキングゲイナー』
新版『リーンの翼』
『はじめたいキャピタルGの物語』
コメント
Zガンダム1巻は、ララァとアムロに関するくだりに1ページ位加筆訂正箇所があり、2巻のヘンケンのセリフで第二次世界大戦の時期が20世紀後半から20世紀中頃に訂正。なおソノラマ版の出版がアナウンスされていましたが、中止に。講談社版は一応原作という位置付けだったので、2巻を除いて、TVより先にストーリーが先行発表されていました。
グレイ #BlAdbuXU|2011/05/14(土) 09:24 [ 編集 ]
講談社版は持っておりませんので、助かりました。
時間ありましたら吟味して記事を修正させていただきます。
本当にありがとうございます。

なるほど、作品の整合のうえの修正ですね。
kaito2198 #-|2011/05/14(土) 13:26 [ 編集 ]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
先日の「TOMINOSUKI / 富野愛好病」さんの富野小説紹介記事に触発されて、こんな企画を考えた。 題して、DVDで見られる富野動画一覧。 特典ディスクや映像特典としてDVD・Blu-rayに収録されている富野動...
ひびのたわごと 2011/04/16(土) 20:16
トラックバックURLはこちら
http://kaito2198.blog43.fc2.com/tb.php/932-f003fbb4

ブログ内検索

なんとなく富野商品

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリー

まともに機能しなくてすみません。これからゆっくりペースで直します。

RSSフィード

FC2カウンター

富野監督作品一覧

  • 海のトリトン
  • しあわせの王子
  • 勇者ライディーン
  • ラ・セーヌの星
  • 無敵超人ザンボット3
  • 無敵鋼人ダイターン3
  • 機動戦士ガンダム
  • 伝説巨神イデオン
  • 機動戦士ガンダム(劇場版)
  • 機動戦士ガンダムⅡ 哀戦士編
  • 戦闘メカ ザブングル
  • 機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編
  • 伝説巨神イデオン・接触篇 -A CONTACT-
  • 伝説巨神イデオン・発動篇 -Be Invoked-
  • 聖戦士ダンバイン
  • ザブングル グラフィティ
  • 重戦機エルガイム
  • 機動戦士Zガンダム
  • 機動戦士ガンダムZZ
  • 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
  • 機動戦士ガンダムF91
  • 機動戦士Vガンダム
  • 闇夜の時代劇 正体を見る
  • バイストンウェル物語 ガーゼィの翼
  • ブレンパワード
  • ∀ガンダム
  • 劇場版∀ガンダムⅠ 地球光
  • 劇場版∀ガンダムⅡ 月光蝶
  • OVERMAN キングゲイナー
  • 機動戦士Ζガンダム A New Translation -星を継ぐ者-
  • 機動戦士ΖガンダムⅡ A New Translation -恋人たち-
  • リーンの翼
  • 機動戦士ΖガンダムⅢ A New Translation -星の鼓動は愛-
  • RING OF GUNDAM
  • ガンダム Gのレコンギスタ
  • 富野参加作品一覧

  • 鉄腕アトム
  • 戦え!オスパー
  • リボンの騎士
  • 巨人の星
  • アニマル1
  • 夕やけ番長
  • 海底少年マリン
  • どろろ
  • 紅三四郎
  • 巨人の星対鉄腕アトム
  • おらぁグズラだど
  • 男一匹ガキ大将
  • ムーミン
  • シートン動物記
  • 赤き血のイレブン
  • アタックNo.1
  • あしたのジョー
  • 男ドアホウ!甲子園
  • 昆虫物語 みなしごハッチ
  • さすらいの太陽
  • 天才バカボン
  • ふしぎなメルモ
  • 新・オバケのQ太郎
  • 国松様のお通りだい
  • いなかっぺ大将
  • 正義を愛する者 月光仮面
  • アニメ・ドキュメント ミュンヘンのへの道
  • モンシェリCoCo
  • ハゼドン
  • ど根性ガエル
  • けろっこデメタン
  • ワンサくん
  • 山ねずみロッキーチャック
  • 侍ジャイアンツ
  • 新造人間キャシャーン
  • アルプスの少女ハイジ
  • ゼロテスター
  • 昆虫物語 新みなしごハッチ
  • 小さなバイキングビッケ
  • 宇宙戦艦ヤマト
  • 破裏拳ポリマー
  • フランダースの犬
  • 母をたずねて三千里
  • アンデス少年ペペロの冒険
  • 超電磁ロボ コン・バトラーV
  • ゴワッパー5 ゴーダム
  • ろぼっ子ビートン
  • あらいぐまラスカル
  • 合身戦隊メカンダーロボ
  • 超電磁マシーン ボルテスV
  • シートン動物記 くまの子ジャッキー
  • ヤッターマン
  • ペリーヌ物語
  • 闘将ダイモス
  • 未来少年コナン
  • とびだせ!マシーン飛竜
  • まんが日本昔ばなし
  • 宇宙魔神ダイケンゴー
  • 赤毛のアン
  • 科学忍者隊ガッチャマンⅡ
  • ザ・ウルトラマン
  • 宇宙大帝ゴッドシグマ
  • ルパン三世(TV第2シリーズ)
  • 新世紀GPXサイバーフォーミュラ
  • 銀河漂流バイファム
  • ママは小学4年生
  • GUNDAM EVOLVE 5
  •  |  富野作品感想 | 富野由悠季関連 | 井荻麟関連 | 富野情報 | 富野雑談 | レビュー | ブログ運営 | 日常話 | 未分類 | 給華文讀者 | Gのレコンギスタ | 
    Copyright(C) 2007All Rights Reserved. TOMINOSUKI / 富野愛好病
    Powered by FC2ブログ.
    template designed by 遥かなるわらしべ長者への挑戦.