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芸能のなかには、素朴な楽しみがあるはず:『映像の原則』から見る富野由悠季監督のエンターテイメント観(1/3)

2010/01/28 23:54|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:3
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 さてさて、「リーンの翼 COMPLETE」も無事発売しました。小粒ですが確実に売れており、発売当日の昨日はアマゾンで一時的に品切れとなるほどだった。『リーンの翼』と富野ファンのオレにとって嬉しいかぎりです。
 で、今日は富野由悠季監督が著作なさった『映像の原則』からエンターテイメントとは何かについて紹介したいと思います。エンターテイメント論についてこれまで富野監督も数多く述べましたが、『映像の原則』は富野監督が唯一執筆した技術書であるため、おそらく富野監督の考えをもっともまとめた論述ではあります。
 以下の文章は『映像の原則』(キネマ旬報社)の第12章「エンターテイメントとは何か」からの引用で、同書の結論代りの最終章でもあります。

『花伝書』より

 白洲正子・吉越立雄著の『お能の見方』(新潮社/トンボの本)という本によりますと、申楽というのは、神社のお祭りのたびにお祭りの意味を翻訳して大衆に見せていたというようなもので、滑稽で猥雑な物真似劇だったようです。
 それが室町時代になると能にちかいものに育ち、世阿弥という天才があらわれて芸術にした、とあります。
 その本で、世阿弥の理論書である『花伝書』の紹介をしています。ぼくは不精ですから岩波文庫になっている『花伝書』もこの40年読もうともしませんから、孫引きからはじめさせてもらいます。

 申楽というのは、天鈿女命(あめのうずめのみこと)の踊りにある。申楽の名称は神のヘンをとったもので、物真似というのは、神の姿を真似ることであり、神社の祭礼も天の岩戸の神話を模したもので、人間健康的、鈿女命の踊りも古事記や書記が語るように滑稽でエロチックで、だからこそ岩戸をも動かす力をもっていた。が、頭がすすんでも人間の肉体が変わらないように、何らかの形で元に帰らないかぎり、いかなる芸術も根を持たない草にすぎません。
 お能の現在の硬い姿の奥に原始的なものを求めるのは無理かもしれないが、この一筋のエネルギーがあったから600年ももったのではないか、というのです。

 長い年月がたつと苔がつもり、わりきれないものをたくさん含んでしまうのですが、よく見ればわからないものはひうとつもない、といいます。
 形式のなかに原始の形式が残るという例については、紹介した本を読んでください。
 また「美しければ良い」とも書いてあります。

 さて、ここでは、エンタテイメントとは何か、ということですので、『花伝書』の要約はここまでにしますが、すでに説明し尽くしています。
 歌、踊り、物語が、お楽しみの要素で、それを演ずることがエンタテイメントです。日本では芸能といいましたが、その発祥は、世界中どこでも同じでしょう。
 すべては神への祈願であり、神への慰みものであり、そうしなければならなかったのは、日常生活があまりにも過酷であったからです。そのための助けを神に求めていくうちに、ある形式が確立していったのでしょう。
 それが芸能に進化したときに、人の楽しみごとになったのですが、そこに理屈が張りつき、次第に難しいものになっていったようですが、根本は、芸能であり素朴な楽しみであったはずなのです。
 それがいつしかカタカナ言葉になり、デジタル時代になって、エンタテイメントが変質したような誤解が蔓延しています。
 しかし、そうでしょうか?
 肉体と感性が、デジタルになったのでしょうか? なってはいないでしょう。
 ですから、映像であっても”芸能”をなぜしていいのではないか、とぼくは思うようになりました。
 それが30年以上アニメをやってきたぼくの結論なのです。
 アニメで芸能?
 それがどういう形態のものか、どのような”出し物”かは想像つきませんが、映像的に格好が良く、映像的に素晴らしいものだけが芸能的であろうとは思えない、ということだけはしるさせてください。
 そのときに考える素材として、世阿弥の『花伝書』で指摘しているようなことは考える余地があるのではないかということです。

 ご存知のとおり、富野監督の作品は元々演劇っぽくなのだが、だいたい『ブレンパワード』の頃からか、富野は「芸能」をいい始めました。「映画」を目指す志はまったく変わらないが、アニメも「映画」という考えの上に、さらに「芸能」を実現させたいという命題を自分に課するようになった。
 そして、リハビリの『ブレンパワード』へ経って、『∀ガンダム』で一旦総決算にして(『∀ガンダム』はいかに映画だったかについて、ラストシーンを見ればわかるはず)、芸能として始めて投げかけたのは『OVERMAN キングゲイナー』です。

 この作品において、富野は自分の今までのストーリーテリングを(結果的に)捨て、舞台設定としての世界観を作り、登場人物キャスティングとしてのキャラクターをも作り、大量な芸能に使えそうなネタ(ミイヤの祭りとか)を埋め、最初の展開だけ提示して、若いスタッフが作った「劇」の演出だけに集中しようとしたのですが、若手たちのストーリーは結局核心になるテーマや展開が持てなかったため、富野の初めての芸能に対する挑戦もあくまでも表層に留まった。
 『キンゲ』以後、富野の考えは変わった。「他人の劇を演出できなければ、自分の劇を演出すればいい」という発想のもと、富野は次のステージに転換する。長年若手育成に腐心し、後継者を求めている富野にしてみれば仕方ないことですが、とにかく作ってきたのが『機動戦士Zガンダム A New Translation』三部作だった。

 『新訳Z』三部作では、富野はテレビ『Zガンダム』のいくつか見せ場を統合し、よりはっきりとした場面として打ち出した。そのことにより、ときどき平坦と評されるテレビ版から一転、かなり生き生きしてる演出となった。また、テレビ版のストーリーに秘めてる曖昧さを、映像演出の原理原則によって表層まで引き出したため、人物も話もテレビ版の「読める」から劇場の「見れる」になった。そのため、全体の出来は多少バラつきがあっても、作劇においてはかなりの成功といえるはず。

 そして、『新訳Z』で「自分の劇を演出すること」が一応の成功を収めた後、富野が取り掛かったのは『リーンの翼』。『リーンの翼』の前半は『新訳Z』の気分に引っ張られたものの、後半は完全に自分色が出てきて、富野の作劇もさらに爆発的な飛躍を得ることができました。
 詳しい話は以下の記事を読んでいただきたいが、簡単に言うと、普通の世界(地上界)に対して別の世界(バイストン・ウェル)を作り、その非日常の特異性を一度示してから、さらに前の二つの世界とも性質が違う限定的な舞台(第5話で見せた第3の時空)を作ることによって、その「神事」的な展開と「能」的な要素を許容する。とても難しい話なので、以下の記事を参照していただければ幸いです。

『リーンの翼』新装版は飛んでいけるのか? 前編 《新訳Zでは処理できない小説版リライトと、神事や能によって開放されたバイストンウェル世界》
『リーンの翼』新装版は飛んでいけるのか? 後編 《小説リライトを可能とするもう一つの翼と、肉体と精神が再び整合を求めるサコミズ》

 これにより、富野が一気に「芸能の達成」「演出の大成」「バイストン・ウェルシリーズが求める日本的な何か」を達成して、自らの進歩を示したわけである。


 芸能で映像を語る。これは決して理想だけではない。映像を志にしている人なら誰でも抱くべきものですし、実際富野という先人がこうして示したことですから、こういう数百年間も生き続けている原理原則に対し、我々がもっと大切すべきなのではないでしょうか。
 次回は『花伝書』から離れて、アニメと映画の話になります。


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 『映像の原則』。発売以来約半年ごと重版される、確実に売れている富野監督の著作。
アニメ制作の原則と心得を得れるだけでなく、アニメを含めての色んな映像を鑑賞目を養うのも最適ですので、アニメファンや映像に興味を持ている一般の方にもオススメな一本です。



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コメント
>記事を読んで興味をもったのでリーンの翼のDVDを買い、HMVで小説を予約しました。
ありがとうございます。リーンの翼の小説とアニメは見所満載でとても刺激になれるような作品なので、是非1人でも多くの人に見せて欲しいです。

>自分が持っているDVDの範囲で言うとブレンパワード、∀に比べキングゲイナー、新約Zは些か作品力がおちると感じています。
そうですね、実を私も多少そう思っています。でもそこにはちゃんと理由があります。なので、富野監督が退歩とかいうわけではありませんし、私も失望してないです。

>リーンの翼はネット配信を一度見ただけであまり大きな印象はなかったのですが、これを機にもう何度かよく見てみることにします。
それはよかったですね。将来機会があれば是非ご感想ご意見聞きたいです。
kaito2198 #L2WcHO2o|2010/01/29(金) 13:35 [ 編集 ]
以前ダブル主人公の件でトラックバックを送らせてもらったbonzokuでございます。個人的にはブレン~キンゲまで富野監督は割と若手に仕事を任せていたのに、新訳Z以降は何で監督が全面に出てきたんだろうと疑問だったので、この文章を読んでそのあたりが納得できました。
監督個人の力で引っ張っていく作品もいいけれど、やっぱり安彦さんや湖川さんのような有能な右腕がいると監督は200%ぐらいの力を発揮出来ると思うので、早く若い後継者が見つかって欲しいものです。

bonzoku #-|2010/01/30(土) 11:10 [ 編集 ]
bonzokuさん、こんばんは。

>個人的にはブレン~キンゲまで富野監督は割と若手に仕事を任せていたのに、
そうですね、もう一つ付き加えいただきますと、ブレンと∀ではストーリー面を若手にかなりの部分を譲りながらも、ラストの着陸点は間違いなく富野監督のものですね。そこがキングゲイナーと一番違うところ。
ですから個人にとってブレンや∀みたい、富野監督がコンセプトを提示し、そして若手にシナリオやらを任せつつも手綱を握り、話の展開とラストをコントロールするスタッフワークのほうがいちばんいいと思います。そうしたらキンゲの「不及」と新訳Zやリーンの「過」も起こらなかったはずです。

>新訳Z以降は何で監督が全面に出てきたんだろう
もう一つ付き加えいただきますと、「テレビ」という長期決戦型と「映画、OVA」という短期決戦型の差もあるのですね。

>早く若い後継者が見つかって欲しいものです。
本当にそうですね。後継者ではないのですが、たとえば重田敦司氏がブレン~キンゲのメカ関係での貢献は非常に大きかったのですね。同じく個人のご贔屓演出家さんですが、森邦宏さんの演出も非常に安心に見られるものです。
kaito2198 #L2WcHO2o|2010/01/30(土) 20:03 [ 編集 ]
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