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『リーンの翼』新装版は飛んでいけるのか? 前編 《新訳Zでは処理できない小説版リライトと、神事や能によって開放されたバイストンウェル世界》

2009/11/07 00:57|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:2
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 『リーンの翼』新装版は飛んでいけるのか? 前編 《新訳Zでは処理できない小説版リライトと、神事や能によって開放されたバイストンウェル世界》
 前書きとして書かせていただきますと、この『リーンの翼』リライト小説についての文章は、元々何ヶ月前から記事にする予定したものです。しかし、新装版の発売が決定した今となって、やや時期を逸れたものになってしまったかもしれませんし、その実態とかけ離れるものになる恐れもあるかもしれません。
 それでも、以下の『リーンの翼』のリライトについて、いくつかの建言をするつもりで書かれている文章は、決して無駄なものではなく、今まであまり語られていない視点や考え方によって、皆さんにもう一度『リーンの翼』の小説とアニメを考え直すきっかけを与えれると信じたい。

富野由悠季小説『リーンの翼』、2010年新装版発売決定!




 小説『リーンの翼』は、富野由悠季が83年から86年まで3年かけて書かれた、『聖戦士ダンバイン』などで描かれたバイストンウェルワールドと同じ背景をした作品です。富野の初オリジナル小説で、ハードボイルド的な物語とファンタジー的な要素を持ちながら、日本人のメンタリティを問いかけたこの騎士小説は、長年ファンに支持され、05~06年ではパラレル的な続編であるアニメ『リーンの翼』も制作されたほどであった。
 で、この小説『リーンの翼』のリライトはここ数年間ずっと噂されていましたが、最近はようやくその新装版の発売が決定され、ファンの間でも大いに盛り上がっている。

 しかしその一方、今から数えて26年前の小説を改稿・リライトするのは、決して生易しいことではありません。しかも富野の場合、近年の考え方は往年と比べて大きく変わっていたため、なまじ手を入れたことが、かえって悪くなることもあるかもしれません。
 この文章は、『リーンの翼』のリライトについて、いくつかの建言をするつもりで書かれているもので、以下は一つの言説を大胆に断定したいです。つまり、『新訳Z』の方法論をベースにする『リーンの翼』リライトは成り立てませんけれど、『リーンの翼(アニメ)』の方法論をベースにする『リーンの翼』リライトなら可能、ということです。


アニメ『リーンの翼』が示してくれたもの

 『リーンの翼』リライトの成立にあたって、一番大事なのは、小説版とアニメ版を繋ぐことではなく、昔の小説版のあの感動的な結末(ネタバレを避けるためあえて明言しません)と余韻を残したままで、サコミズをもう一度生まれ変わせることです。つまり、旧来の小説版とアニメ版を両立させることです。
 昔の与えられた話と結論を削らないんで、新しい何かを与えるには、ただ健やか(ただ、という言い方は『新訳Z』に失礼ですが)になる『新訳Z』の方法論を持ってでは、『リーンの翼』のリライトを上手く処理できませんので、ここではさらなる一歩に進んだ方法論が必要となります。
 そこで、アニメ版『リーンの翼』の出番です。

 『リーンの翼』は『新訳Z』よりさらなる進歩(=富野本人の進歩)を遂げたのは、一見究極的な結論である肉体性(肉体の抱擁)を越えて、肉体に宿っている精神を、時間と空間の軸で表してたところです。そしてこれがあるからこそ、『リーンの翼』はバイストンウェルシリーズの突破といえるのです。
 

 今までのバイストンウェルシリーズが直面したもっともやっかいなのは、ほとんどの主人公が最初では訳もなく突然バイストンウェルに落ちる、いわば導入部の問題です。日本ファンタジーものにありがちな「勇者になって異世界を救う」という安いところに落とせないのはバイストンウェルシリーズの特色ですが、そうなると、あちらの世界に行く/行った意味性は、どうしても弱く見えます
 しかし、小説『リーンの翼』はほかの大勢なバイストンウェル作品と違って、すでに特攻という生死を分ける一瞬で生と死の狭間に落ちたという意味性を帯びてる形を示してくれましたし、アニメ『リーンの翼』ではさらに「こちら来た状況と共にバイストンウェルに落ちてる(戦艦が地上界に現れ、また戻る)」という解決法によって、その意味性の追求を不要にした(巻き添え状況の強み)
 これをもって、バイストンウェルが求められる最初から持ってる意味性は、アニメ『リーンの翼』ではきれいに軟着陸させ、物語の全体に溶け込ませた。

 となると、ここからは舞台としてのバイストンウェルが面目躍如するところです。


『リーンの翼』に見る「能」と「神事」二つの要素

 『リーンの翼』で多くの人が感じてるように、作品のなかに描かれたバイストンウェル世界は、あの世のことです。あの世といっても、別に黄泉の国とか具体的なものではなく、別の世界、もっと言ってしまえば、この世の反映です。特に第5、6話では、さらに明確にこの世とあの世の繋がりを画(画面)として落とし込んでいた
 となると、バイストンウェルという限定される箱世界も、一人の作り手が作った独善世界にとどまらず、日本の伝統芸能の一つである、能の舞台みたいに活用できるはずです。能の舞台や演目の功能は、まさに一つの世界(=あの世)を作っておいて、我々が生きている現世(=この世)を描くです。四方舞台と柱が、別の世界・別の時空を暗示したものであり、そのなかに発生する世界も、すなわち見る側の心境を反映する世界である。
 以下は、『リーンの翼』が持つ二つの性格から語ります。

 能。
 『リーンの翼』の第5、6話(特に第5話)で出現した主人公の主客転換が、すなわち『リーンの翼』の能要素を示した演出です。サコミズが話の中心にいるシテ(主役)となって語る。シテが己の視界の限界を越えて、世界そのものを語る。物語の前進が、シテの語りと直接つながりとする。人物の反応(語り)が、直接画面に反映する。さらに、感情や思考などの内面描写が、まったく表面まで浮かび上がる。これらが、まさしく演劇としての能の使い方である。
 アニメにおいては、ここでのストーリーとドラマを表舞台まで引き上げて、世界そのものと同一化させる能の成立は、富野がここ数年考えている芸能(=日本の風土に基づいた文化)、『OVERMAN キングゲイナー』以後ようやくの到達点で、演劇のリアリティ(虚構と現実の複合体)を限界まで引き上げた富野演出の新境地である。
 そして、能以外には、もう一つの到達点があります。

 神事。
 サコミズが乗っているオーラバトラー「オウカオー」が持っている一体の刀もこの名前ですが、これは決して偶然ではありませんでした。迫水真次郎(さこみずしんじろう)の名前のなかには、すでに「神事(しんじ、かみごと)」が含まれているように、富野は初めから『リーンの翼』に、神事の要素を導入したかったのです『リーンの翼』がある種のサコミズ成仏ものになりうるのは、第5、6話自体が修羅と化身したサコミズを鎮魂するための話だったからです。
 修羅は能の演目の一種であり、元々仏教の教えである六道輪廻のうちの一つですが、能では、武人の亡霊(=死にきれない者、死に損なった者)がシテとなり、ワキ(と観客)に対して、己の生前の戦いの有様と、死後もなお修羅道に苦しむ様を語る「修羅物」となっています。そのような演劇は、元々戦いのなかに散っている者たちを慰め、鎮魂(=神事、祭り)する意味合いが強いもので、まさしく『リーンの翼』の物語のなかのサコミズの立ち位置とピッタリ合っているのです。
 このように、神事は能のなか極めて日本的なものである。そして、日本的なものこそ、バイストンウェルがずっと求めているもの。


舞台として大成したバイストンウェル

 しかし、このように『リーンの翼』を能と神事で語れるのは、ほかでもなく、バイストンウェルという限定的な舞台、二つの世界をごちゃ混ぜする状況、現世を反映する機能があるからです。あの物語世界のなかにいるもう一つの世界としての舞台の上では、時間・空間あらゆる要素は人物の思いのままに転換してゆき、現世を照らし、現実世界と物語世界を媒介させる。そして、舞台の限定性を確立すると同時に、開放感を与えれます。
 逆に言いますと、あのような状況を構築でき、自然に作品に溶け込むことこそ、バイストンウェルという世界最大の強みで、一番存在意味を持ってるところなんです。

 ここに至って、バイストンウェル世界はこれをもって完成した気配さえします。そしてこれが、何故一般的評価が低めと言われている『リーンの翼』に、私が失望を覚えていない原因。富野が『新訳Z』を突破でき、進歩し続ける証を、この『リーンの翼』で確実に残していたからです。


 次回は、以上の話をうけて、『リーンの翼』リライトの話に入ります。

『リーンの翼』新装版は飛んでいけるのか? 後編 《小説リライトを可能とするもう一つの翼と、肉体と精神が再び整合を求めるサコミズ》


 余談ですが、宮崎駿監督は『千と千尋の神隠し』『崖の上のポニョ』などでも「あの時空、あの世」を描いたんですが、宮崎のはアニメーションの動きと画面で繋げるあの手のアニメならではのものに対して、富野は意識的に『リーンの翼』で「あの世」をバイストンウェルという舞台設計に導入してきたのです。当然、神事と能が成立できるのもそのため。
 このような方法論の違いから見ても、富野と宮崎はまったく別のタイプな演出家と確認できます。

コメント
はじめまして。SHUZOと申します。
いやあ…素晴らしい考察です。僕自身小学六年生の頃にファーストガンダムをリアルタイムで観てしまい、それ以降は「富野由悠季なんて関係ないよ」といくら軽口を叩こうと、間違いなくどんな局面でも、僕の思考の中には富野由悠季が影を落としており、何か特別な作品や錯綜した状況に遭遇すれば「富野氏ならこれをどう思うのだろう」と考えてしまいます。それだけ富野由悠季は自分の思考を形成する上での重要な存在になってしまっているようです。そんな自分ではありますがアニメ「リーンの翼」はまだ未見なのですが、貴方の文章を拝見すると「これは観んわけにはいかんなあ」と俄然思わせます。富野氏の作品群(思考する旅)の中でもターニングポイントなのかも知れないわけですね。ありがとうございます。リライト小説も合わせてチェックしてみます。
SHUZO #-|2009/11/08(日) 00:18 [ 編集 ]
はじめまして、SHUZOさん。コメントありがとうございます。ネットではkaito2198と名乗っているものです。

富野監督に関しては、やはりなんといってもその何事に対しても真剣な態度でしょうね。この思考が貫徹して原理原則を語っておられますから、仰られた言葉も伝われると思います。私はSHUZOさんより年下でおそらく別の年代に属していますが、それでも富野監督のメッセージや物事に対する態度を受け取っている感じです。

今回の『リーンの翼』記事に関しては、多少ですが、富野監督という切り口を意図的に外している意識があります。なぜなら作品は一旦作り手の手から離れると、自立してるものなので、今回はあえて『リーンの翼』という作品自体が滲み出す良さだけに注目したいと思っております。もちろん、この作品も富野監督のものですから、どう語っても完全に富野を外せないのですが。

アニメ『リーンの翼』は是非一度見てください。正直欠点もちらほら見えてる作品ですが、それ以上に上回る見所がありますゆえ、レンタルもしくは今度の『リーンの翼COMPLETE』で是非視聴してください。その時、もしまたご感想を伺えればありがたいです。
kaito2198 #L2WcHO2o|2009/11/08(日) 02:26 [ 編集 ]
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