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富野由悠季の絵コンテ演出術

2009/08/10 00:02|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:0
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 ひびのたわごとの子犬さんは「∀ガンダム」にみる映像の原則という素晴らしい話を紹介してくださったので、こちらも富野演出に関する内容をこの記事から独立して紹介します。『リーンの翼』DVD第1巻ライナーノートから引用。インタビュアはお馴染みの氷川竜介氏。


絵コンテを描きはじめる

――基本的な質問ですが、絵コンテはストーリーの順番に描いていくんでしょうか?

富野 僕の場合はそうです。まず、途中多少不都合があっても構うものかと思って、第一稿を描きます。『リーンの翼』はシナリオで既に「ここがヤマだろう」と的を絞り込んでいるところもあったけれど、そこをあまり気にせずに、まずは描く。ここで問題がひとつであって、第1話の時点では脚本はまだラストが見えていないんです。だから、ラストからの逆算で描くということが完成にできるわけではない。でも構成としては「ここへ落ちるだろう」という目算は立っているから、それで作業はできるわけです。これはひょう並行して作業していた『Zガンダム』の新訳のほうでも同じ感じですた。
 で、第一稿を描いた後に、シナリオという、文字ではわからなかったことが、絵にすることで見えてきます。たとえば、手前にいる人物の奥にいるキャラクターがどこまで見えているか。それがわかると組み替えを始めます。たとえば「ならば、奥の人物を手前にしてもいいのでは?」とか。
 どうしてそんなことをするかというと、ひとつはシナリオが文字で論理的に段取りを組んでいたものを省略できる場合があるからということと、もうひとつは、絵のツラの印象から、こいつのキャラをここで立たせなくてはいけないということがわかるからです。そういう場合は後ろから必要なセリフも持ってきて、芝居のほうも歌舞伎の見得ではないけれど印象的な”見せ芝居”をさせたりします。
 ただ、それだとそのシーンが”重く”なりすぎる。重くなりすぎると、そのまま後で印象がフェードアウトしてしまうことが多いので、その印象を受け継いで、次のシーン、次のエピソードへとつないでいくようにしなくてはいけない――と作業が続いていきます。

――キャラクターの見え方については、シナリオはあくまでもバックボーンで、絵コンテで演出していくということですか。

富野 そうです。そして今いったようなことを踏まえて、絵コンテの第二稿を描いていくわけですが、目標はあるんです。『リーンの翼』のように20分強のフィルムであれば、だいたい2~3分オーバーに收まるように尺を決めていくのです。
 シナリオで論理的に組まれていたものを絵コンテで崩して、自然に見えるようにしてはいるんですが、それでも「絵を描いて、ト書きやセリフを書く」という絵コンテの作業の持つ特性ゆえ、やっぱり場面場面が緻密に組まれてしまいます。この場合の”緻密”というのはいい意味ではなくって、むしろ、ダラダラとだらしばなく場面が流れてしまうことが多いと言ったほうがいいでしゅ。そこで余っている2分が必殺兵器として効いてくるわけです。ダラダラと流れているシーンをカットしていくんです。イメージでいうと、たるんでいる布の皺を寄せてきて、余っている部分をちょん切るみたいな感じですね。そうすつよ本編全部を通して見たとき、シュッと見られるようになる。「絵を描いて、、ト書きやセリフを書く」というスピード感に縛られたままだったら、本編がトロくなるのは当たり前でしょうね。

――そのやり方は昔からそうだったんですか?

富野 そうです。

 ここで言ってた「だらしない部分をなくす」部分もそうですが、実をいいますと、この『リーンの翼』はまさに富野が65歳(当時)という年齢になっても進歩し続けてやまないの何よりの証です。特に『新訳Z』の最後の一見究極的な結論である肉体の抱擁を、『リーンの翼』ではただの下敷きとして使わないところに、自分はとても感動しました。宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』と同じように直感で訴える境界になっても、そこに留まらず、いつまでも前に進んでいるからできたことなんです。
 話数の少なさとプロデュースする際のセッティングの不備で、『リーンの翼』全体は分かりにくくなってましたが、それでも物語と映像として力は充分ある力作だと思います。

 次回こそ富野の「皺をなくす」演出術を紹介します。

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