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井荻麟作詞論 第107回「Gの閃光」

2016/12/30 17:11|井荻麟関連TRACKBACK:0COMMENT:3
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 井荻麟作詞論 第107回「Gの閃光」
 井荻麟作詞論の記事は、富野由悠季監督が書いた作詞を紹介・分析する話です。いきなり予定より飛びますが、今日の第107回では、『ガンダム Gのレコンギスタ』のエンディングテーマ「Gの閃光」について語りたいと思っております。



Gの閃光
作詞:井荻麟/作曲:菅野祐悟/編曲:菅野祐悟/歌:ハセガワダイスケ

元気でいられるから 元気でいられるから
手を挙げて やってみる
前を向いて やってみる

 この曲は、2006年『リーンの翼』以来、8年ぶりに富野由悠季が手がけた長編アニメ『ガンダム Gのレコンギスタ』のエンディングテーマである。井荻麟名義で作られた作詞としても、2008年の古谷徹の個人アルバムに提供された「眠ったままでは」以来、6年ぶりの仕事となっている。エンディングテーマでありながら、オープニングテーマ以上に強烈な印象を与える歌詞と映像は、富野の久しぶりのテレビ新作に相まって、大きな話題となっている。



 字数といい、言葉使いといい、この歌詞は一見すると呆れるくらい簡潔なのだが、よく吟味すれば、たくさんの井荻エッセンスが詰め込んでいると分かる。

元気でいられるなら 元気でいられるなら

元気のGは 始まりのG

 全編に渡って再三に強調するように、歌詞全体が明るく仕上げられ、テーマはストレートに「元気であれ」と訴えるような内容となっている。タイトルの連呼といい、『ブレンパワード』以来の、いわゆる「白富野」の精神を受け継いでいる部分は健在で、映像に相まって、「キングゲイナー・オーバー」などとの共通点も見られるはずだ。

明日のことなんて 分からないからって
動かないままなら 始まらないから

つかめプライド つかめサクセス

 それから、命令というにはやや誇張にしても、作詞者から聴く人にメッセージを伝える部分を読み取れる部分は、「眠ったままでは」など近年の作詞で見られる、「次の世代に希望を託す思いがあまりに強すぎるために、結果的に説教的に見えてしまう」という、いわば「説教性」が伺える。作者である富野と、彼の想定した観客の年齢差を考えれば仕方ないかもしれないが、全体的に押し付けるような説教くささがないのは、決して上から一方的な目線ではなく、自分に言い聞かせる部分もあるからだろう。

 しかし、なにより重要なのは、以下の部分だ。

リアルは地獄

出来ると思ってない 出来ると思ってない
だからだろ チャレンジだ

 この最初に打ち出したテーマから一転して、眞逆な方向から切り込んで展開させつつ、最後はテーマを強化する歌詞は、まさに富野がよく使われている手法なのだが、よく吟味すれば、そもそも作り手自身に言い聞かせるようにも聞こえる。となると、この歌詞は若い観客に伝えるメッセージであると同時に、この井荻麟作詞論シリーズで今まで再三繰り返した、富野がガンダムシリーズの歌詞を手がけるときに頻繁に見せる、作品を通さずに直接作者から観客への「意志の表明」というものでもあると分かるはずだ。

 つまり、監督の富野はしきりと「Gレコは脱ガンダムを意識している」と発言しているが、この面から見れば、この「Gの閃光」は潜在意識ではむしろ富野ガンダムの精神を非常に色濃く反映している歌詞といえる。



 ところで、富野はこの曲に対して「AKB48を意識するように作った」という、一見奇妙な発言を残している。しかし、AKB48は富野が常に理想とする大衆芸能の代表という角度から考えれば、その発言の意味も自ずとわかってくるはずだ。井荻麟作詞論では普段作詞と映像を切り分けているが、Gの閃光の芸能性を解かすには、やはり同じく富野が作った映像から考えなければならない。

元気のGは 始まりのG
Gのレコンギスタ

 前の記事で言及したように、近年の富野作品における芸能でいえば、『ターンエーガンダム』や『キングゲイナー』のように、常に踊りや祭りなどといった形として劇中に出している。しかし、「Gの閃光」がそれらと違ったのは、本編でではなく、むしろ現実と作品世界の境界ともいうべきエンディング映像で踊らせるところだ。それが、「Gレコ」きっての名物、敵味方入り混じりで交わした「ラインダンス」というものなのだ。

 本編の関係性を考えれば、海賊とアメリアとキャピタルアーミィの面子は決して集って一緒に踊るわけがない。また、本編のストーリー展開においてもありえないのだ。しかし、ある程度本編と切り分けて考えてもかまらないエンディングなら、それが成立できる。むしろ本編にも縛られないぶん、伝えたいテーマ(歌詞)は明瞭に見せる性能がある。

 つまり、「Gの閃光」のエンディングは、作品世界の登場キャラクターを借りつつ、ダンスという現実に共通する「ハレ」の要素を通して、現実にも作品世界にも属さない「第三の世界」で芸能を再演じることによって、視聴者に登場人物やテーマ性への共感を与えるものだ。シンプルな作りの裏に秘めている極めて高度な手法は、富野由悠季的な演出と井荻麟的な作詞を完璧に融和しないと到底できないもので、路線がまったく異なるものの、その密度が「コスモスに君と」や「月の繭」に比肩するものだと考えると、「Gの閃光」はまさに井荻麟の作詞の集大成にして、究極的な作りといえる。



 異論はあるかもしれないが、「Gのレコンギスタ」という作品の本編映像が特殊な作りゆえに、そのメッセージがやや散漫になっていた部分は否定しようがない。そんな中、作品のテーマを固定して、最初から最後まで持たせたのは、実質的に「Gの閃光」というエンディング曲といっても過言ではないだろう。富野がこの曲を「真のテーマソング」と呼んでいるのも、きっとこれのためだろう。


 Gレコの全部の曲が収録されています。

TVアニメ ガンダム Gのレコンギスタ オリジナルサウンドトラック
TVアニメ ガンダム Gのレコンギスタ オリジナルサウンドトラック
コメント
 いつも素晴らしい井荻麟論、毎回楽しみにしています。

 今回、引用させていただきました。

 ご容赦のほどを。
shiwasu5 #mQop/nM.|2017/02/05(日) 11:07 [ 編集 ]
ご無沙汰にしております、shiwasu5さん。
そちらの記事も拝見させていただきました。貴サイトにでもコメントをいたします。
kaito2198 #-|2017/02/06(月) 15:31 [ 編集 ]
>元気のGは 始まりのG
始まりのG=GENESISだったんですか、GなんでGLORY(栄光)とかGRAVITY(重力)とおもっていたんですが
森 和正 #SFo5/nok|2017/09/06(水) 17:04 [ 編集 ]
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