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井荻麟作詞論 第53回 富野作品のOP・EDおよび挿入歌のビジネス事情その2

2016/01/11 18:50|井荻麟関連TRACKBACK:0COMMENT:0
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 井荻麟作詞論 第53回 富野作品のOP・EDおよび挿入歌のビジネス事情その2
 井荻麟作詞論の記事は、富野由悠季監督が書いた作詞を語るものです。全部は100回以上の予定です。今日の第53回では、井荻麟の範疇を越えて、富野由悠季監督の作品に出てくるOP・EDおよび挿入歌のビジネス事情を語りたいと思います。話の内容は『ブレンパワード』から『ガンダム Gのレコンギスタ』に収める範囲内のもので、それ以前の話は第27回の「その1」に収録されています。



 今回の話に入る前に、まずは以下の記事を読んでいただくことがオススメ。

井荻麟作詞論 第21回 ザブングル~エルガイム時期の富野由悠季と井荻麟
井荻麟作詞論 第32回 Z~V時期の富野由悠季と井荻麟
井荻麟作詞論 第27回 富野作品のOP・EDおよび挿入歌におけるビジネス事情その1

 簡単に説明すると、ガンダムからのアニメブームを作った一翼として、富野は井荻麟という立場からアニメ音楽の地位上げとビジネスに貢献したと同時に、作詞を作品作りの手法の一つとして多くの作詞を書いた。作詞によっては「「方向性を示す」「意思表明」などの微妙な違いがあるものの、それがすべて作品の一部として作品と緊密に連結できた。

 一方、そこまで子供のものでしかなかったアニメ音楽が大きな商売になれると、レコード会社はより売れるようなプロの作詞家を起用し始めるようになった。富野作品においては、そこには監督である富野本人の意思も入っているものの、映像だけでなく、音楽をも作品作りのために駆使してきた富野にとっては、一大武器を失ったとは言える。



 確かに、OPとEDで作品をコントロールできなくなる意味では、一時の敗北と言えなくもない。しかし、V以降の富野は、また新しい方向性を模索し始め、新しい転換に入った。具体的にいうと、「他人の手によるOPとEDでも出来るだけ指示を出す傍ら、挿入歌で世界観を深化する」という手法を取った。

 詳しい内容は60回の「劇中歌と芸能としての作詞」で語るので、ここではそのビジネス的な部分について語りたい。V以降の井荻麟は、OPとEDを手がけることが少なくなる一方、挿入歌を多く書けるようになった。一番顕著的な違いはどこにあるかというと、つまり「アーティスト」と「収録媒体」にある。メジャー(あるいはメジャーを目指す)歌手が歌い、「シングルCD」として発売されるOPやEDと違い、挿入歌はアーティストがマイナーな上、オリジナルサウンドトラック――つまる「サントラCD」に収録されるようなものだ。これはどういう意味かというと、つまり挿入歌は(比較的に)商売から離れているところにあるという意味を示している。

 作品のことを誰よりも重んじる富野にとって、メジャーなところで発揮できないでいるのはさぞ心苦しいであろう。しかし、そういう苦渋の選択でも、作品のためならば存在価値がある。いわば、商売の最前線から退いた代わりに、後方支援に回ったのだ。そして『V』や『ターンエー』『キングゲイナー』などを見れば分かるとおり、その挿入歌が確実に作品にプラスな効果を与えていて、井荻麟は、再び自由に発揮する場を獲得したのである。



 それだけじゃない。転機もいずれ訪れる。

 ガンダム20周年という節目、および富野由悠季が『ターンエーガンダム』前後で鮮烈的に遂げた復活にあわせて、再評価の機運が燃え上がり、いわゆる「富野ブランド」に近いものが形成した。ガンダムからやや距離を置かれたものの、アニメファンに強い訴求力と高い知名度を有する作品群として注目されていた。その傾向から井荻麟に与える影響も見かける。

 富野ブランドの形成の過程にはいろんな模索が見られるものの、その中に存在している井荻麟の立ち位置を一言でいうと「ビジネスの一番メインストリームとなる部分を譲りながら、(前述の挿入歌で作品を深化する部分を含めて)作品の核となる部分を最大限に自分で把握する」というものだった。具体的にいうと、歌手の売り込みという意味も入っているOPは他人に任す代わりに、ほとんどのEDが井荻麟作詞という特徴が挙げられる。この傾向が形成された1998年の『ブレンパワード』がそうだったし、最新作である『Gのレコンギスタ』も同じではあった。

 さらに、『ターンエーガンダム』というガンダムの節目になる作品に関しても、売れっ子や売りたい歌手が用意されたものの、やはり作品自体が富野由悠季でしか作れないという理由でOPの歌詞を作ることができたし、『キングゲイナー』の富野全開という方向性の元では、やはりOPを自ら手がけることができた。そういう意味では、近年のこの形こそは一番「商売」と「作品」のバランスを保っていた采配と言えるかもしれない。



 最新作の『Gレコ』においても、富野は二つのポップ歌手によるOPを許容しながら、ちゃんと作品の方向性を大きく規定したEDを自分の手で書いた。それが作品においてもビジネスにおいても大きくプラスを働いたし、富野作品といえども、必ずしもビジネスと抵触しないことを証明できた。『ブレンパワード』以来、試行錯誤もあったんでしょうが、将来、新作の富野アニメがまた作られる時、今のような形はまた踏襲されるのであろう。

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