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井荻麟作詞論 第52回「月の繭」

2016/01/08 15:26|井荻麟関連TRACKBACK:0COMMENT:2
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 井荻麟作詞論 第52回「月の繭」
 井荻麟作詞論の記事は、富野由悠季監督が書いた作詞を語るものです。全部は100回以上の予定です。今日の第52回では、テレビアニメ『∀ガンダム』の2ndエンディングであり、最終話の挿入歌でもある「月の繭」について語りたいと思います。



月の繭
作詞:井荻麟/作曲:菅野よう子/編曲:菅野よう子/歌:奥井亜紀

山の端 月は満ち
息づくあなたの森

 この曲は井荻麟が『ターンエーガンダム』において作った5番目にして最後の作詞であり、第41話から第49話まで使われている2ndエンディングなのだが、最終話のラストにも挿入歌としてフルサイズで流されていた。特筆すべきなのは、この曲の旋律の大元となる「MOON」は音楽担当の菅野よう子氏が『∀』において一番最初に作った曲で、1話のラストシーンに使われていたものであるため、この歌詞は数々の井荻麟作詞のなかでも数少ない曲先の仕事となる。

 こんな特異な経緯からも分かったとおり、「月の繭」は今までのどの井荻麟作詞とも異なる特色と雰囲気を持っている。



夏草浴びて眠る
愛(いと)おしい 横顔
おぼろな この星
大地に 銀の涙

 今までの記事で論じたとおり、井荻麟の作詞だいたい「意志表明」か「物語性」のどちらの特徴を持っている。しかし、この曲は「意思」「物語」など動的な要素をもっておらず、むしろ静的な情景の描写に徹している。「あなた」というフレーズに入っているものの、やはり方向性(=物語の明確な変化)が入っていない。カメラワーク的な視点から、その歌詞に表した景色の並び方を見ると、地面に対するアップから空、宇宙に対するロングへと、普通の風景(具体的)からどんどん幻想的な情景(概念的)となっている。

 また、「あなたの森」というのは、ガンダム』のモチーフの一つでもあった「金枝篇」で取り上げられた「ディアナの森」のことだろう。神話においてディアナは月の女神である同時に森を司る女神でもあることを考えれば、おそらく間違い無いなのだが、森がまた安息する場所ということを本編の描写にてり合わせれば、劇中の最重要人物で月の女王であるディアナ・ソレルが静かに眠る(=死)という場所だと分かる。そういう意味では、この曲は「死」へ捧げる歌詞だといえる。



 2番目の歌詞を見ると、1番目に比べて少し動き出す感じがある。

あの月 あなたなら
悲しみを写さずに
世の揺らぎ見つめて
嘆かず飛んでみる

 ここで指す「あなた」は一番目とは違う感触で、むしろディアナが自分を見取るロランに語りかけてるように聞こえる。明言されていないものの、「世の揺らぎ」「悲しみ」は長い歴史の暗部のことを示すように読み取れる。それが劇中の黒歴史ではあるし、今までガンダムシリーズで描いてたあらゆるもののことなのでしょう。また、1番目の歌詞との対比性から見ると、「生」を称える歌詞と解かすこともできる。

繭(まゆ)たる蛹(さなぎ)たちは
七(なな)たび身をかえる

世の揺らぎ見つめて
嘆かず飛んでみる

 そして、Aメロの終わりの部分より少しの動き出す予感を思わせて、曲調と共にBメロ――つまりメインテーマの部分へ昇華していく。



青にLaLaLu LaLaLu染まる 恋し繭玉(まゆだま)
揚羽(あげは)の蝶になる

 ここらの歌詞は非常に曖昧である上、やはりストーリー性を帯びていないため、その解釈を完全に視聴者に委ねている。しかし、エンディング映像で見られるように、メタモルフォーゼという意象(心意と物象)を借りて、人類と時と空間のことを描いている。ひどく静的な流れのなかに、繭が蝶へ幻化する歌が展開され、それは人の心のなかで揺らぐ陽炎のようなものである。

 また、その色彩感覚も見逃せない。エンディング映像を見ると、歌詞のなかにもあった色の幻化模様は、よりはっきりとしたイメージによって描かれている。「七たび」=「七生」という言葉がある通り、揺れ動く七色の羽は宇宙の色に照り合わせて、まさに無限なる永遠を象徴している。

やがて宇宙(そら)をつつむ 無限の翅模様(はねもよう)
いのち輝かせよ

 蝶というメタファーは本編では月光蝶、あるいはディアナ・ソレルを想起させるが、そもそも蝶という存在は命短し儚い存在であり、まさに広大な宇宙(時間と空間)に身を置かれる人間のようだ。しかし、そんなちっぽけな存在でも、一生懸命に生きて、世代を重ねているからこそ、永久という時間を存在していける。その終わることの無い生と死のなかから、我々は命の尊さを感じることができる

 このように、歌詞とエンディング映像で壮大な象徴性を用意させながら、最終話のエピローグで淡々と人の営みを描く場面に投入したからこそ、逆に平凡のなかの非凡という、美しいまでに偉大なコントラストを表現することができた。そこから見ると、「月の繭」という一見難解なタイトルの意味も自ずとわかってくるはずだ。

 すなわち、繭というものが羽化する前の蛹(未成熟な生命)を守る存在だとすると、繭が地球のメタファーという意味になる。いつか羽化(成熟)して銀河へ飛び出す日が来るまで、何度も何度も地球という繭のなかで生と死を繰り返しながら生きていく。つまり、「月の繭」はディアナを歌うものであると同時に、地球そのものを称える歌でもある。このように、井荻麟は天才作曲家・菅野よう子が第1話で提示したメロディと、監督である富野由悠季が作った『ターンエー』という長大な物語を通して得た感触を融和させたことによって、ガンダムと生と死と時間と空間とを遺憾なく最高なハーモニーとして作り上げた。



 上の説明にもあったが、この曲は2ndエンディングという触れ込みであったが、そのスケール感を出すには1分くらいの尺ではとても足りなかった。なので、真価を発揮するのはやはり最終話の「黄金の秋」だろう。この曲から醸し出した命の尊さ、それから時と生命が永遠に続くだろうというテーマは、2015年時点での最新作『ガンダム Gのレコンギスタ』まで包括できるものなので、ガンダムシリーズにおいて究極なエンディングテーマであることと言っていいだろう。

 「月の繭」はガンダムシリーズの終着点とも言われる『∀ガンダム』のエンディングであることと、1話に流された曲が最終話に換骨奪胎した形で物語を締めくくった効果的な使い方などから、ガンダムシリーズ史上最高の名曲とよく称えられるが、それはただ立ち位置があるからの評価ではなく、むしろその位置に恥じない傑出な出来があったからこその評価なのであろう。



 以上の説明をしましたが、この曲は曲調と情景と最終話のイメージを見せる/聞かせる部分がむしろ重要なので、正直説明がなくても感じ取れるものがあるはずだと思います。しかし一方、難解の声が多いですので、あえて説明させていただきました。もし何かご意見ご感想があれば、ぜひコメント欄にて教えてください。

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コメント
歌詞のみの評価ではなくなっちゃいますが、
最後の赤字の部分はこの文章を読んでるだけでも
エンディングの映像と歌が頭の中に流れてきて
胸が熱くなりました。

外国語さっぱりなのでよくわかりませんが、
「moon」の歌詞について
むかーしネット上で菅野さんが適当な言葉で作ったとか
読んだことがあるのですが、それが信憑性のあることだとすれば
一番最後でおっしゃられているように
「感じる」ことが優先されてしまって
ちっとも深く考えることがありませんでした。
(『金枝篇』2回も途中で断念しちゃったおばかさんです)

1つの歌で主体が変わるのは井荻歌詞では結構あるのでしょうかね?
まそ #-|2016/01/08(金) 17:44 [ 編集 ]
MOONは、菅野氏が作った「音」です。
そういう意味では音楽の一部です。
ですからターンエーという物語は、「月の繭」という歌詞を獲得するためのものだと解釈できると思います。

>1つの歌で主体が変わるのは井荻歌詞では結構あるのでしょうかね?
のように読めるものは少なくありません。「銀色ドレス」などがそうです。
kaito2198 #-|2016/01/15(金) 09:45 [ 編集 ]
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