富野由悠季監督とその作品をひたすら語るブログ

TOMINOSUKI / 富野愛好病
http://kaito2198.blog43.fc2.com/

プロフィール

kaito2198

Author:kaito2198
台湾人。
ただのファンです。

twitterは@kaito2198です。

仕事やブログ関係のご連絡は
kaito2198@hotmail.comまでお願いします。

給華文圈之富野由悠季愛好者的一些話
關於本站文章的轉載聲明

富野監督関連資料一覧

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

グーバーウォーク

アニメーションにおける「文化性」の話――ある富野作品のシーンを例として説明

2014/02/01 03:19|富野雑談TRACKBACK:0COMMENT:3
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - アニメーションにおける「文化性」の話――ある富野作品のシーンを例として説明
 富野由悠季監督が『映像の原則 改訂版』において一つ面白い例を取り上げましたので、ここで紹介します。

 つぎに、作為的につくらなければいけない雰囲気の音、というものがあります。雑踏のなかでも市電が通っているらしいのなら、それを作る、です。これはシーンによって作意をはたらかせる必要があります。

 さらに、意識的に入れる音があります。が、ここで問題になることが出てきます。画面にまったくその要素がないのに入れるのは良くない、と判断されるケースです。

 今思い出せるひとつのケースは、積雪のあった背景で晴れた朝、木に積もった雪が落ちる音を入れなければならない、と思いついたときです。雪が落ちる画像はいっさいなく、そんな音を入れても、想像できる観客と想像できない観客がいるのだから、どうするか? そういったケースです。

 これは強権発動で入れさせてしまったのですが、十年経って見直しても、いいものか悪いものかの判定に迷っています。


「第11章 画以外のこと=音」より

 黒字の部分は明記されていませんが、『∀ガンダム』のエピローグのある描写のことです。しかもこれは実は、改訂版で始めて追加された文章です。

 富野由悠季監督にとって、きっとそれだけ迷っていた演出なのでしょう。確かに、この例でよくわかるとおり、場面一つに対しても、「わかる」と「わからない」観客が出てきますので、そういった細かい部分でも注意を働く必要があります。実に興味深い示唆です。



 が、この話はよく考えると、実はそのなかから秘めている「文化性」の要素を見いだせることができます。

 どういうことかといいますと、世界中の不特定で多数な観客に見せようとする時、同じく「雪」の音というシーン一つだけに対しても、「わかる」と「わからない」という二種類の観客が出てくるのです。しかも、それは富野監督が挙げた例とは別に、ひょっとしたら、「そもそも雪の存在をよく分からない」という観客の可能性もあります。

 つまり、生まれて一度も雪を見たことない観客ならば、積雪が落ちる声はそもそも知りませんので、音を聞いても、自分の経験を喚起できませんので、当然そのような演出に対しては困惑するばかりなのかもしれませんし、まったく別なものだと想像しちゃうかもしれません。そうすると、演出は当然想定した意図に達すことができません。

 この場合でも、きちんと描写を積み重ねねば、大抵解決できるようになっています。が、積み重ねようがありませんから、どうしても前もって消化できない時があります。上の『∀ガンダム』などもそうです。



 とはいえ、「じゃあ、文化性があるかもしれない描写は全部省いちゃえ!」というのはもちろん暴論ですし、物理的に不可能です。

 上の雪の例一つにしても、「分かっているから面白さを感じてる」という観客は当然として、逆に「分からないから面白がってくれる」という観客はいるかもしれませんし、このような観客両方をわしづかみたいのは創作者というものです。

 なので、どうやってこのハードルをクリアして、より多くの観客にいろんな形で面白さを伝えるテーマ、物語、演出などを絞り出しつつ、センスを磨いていくのはまさに物づくりにかかわる人間の使命であろう。



 この文化性の話を逆説的にいうと、今回富野監督のハリウッド提携作品の意味はまさにそこにあります。そもそもこのプロジェクトの核心は、「日本の感性を持ちながら、ハリウッドにも通用する映像を作る」ところにあります。

 「アメリカ人の感性なんて信じられるか!」と思う日本人はいるかもしれません。確かに、そういった部分はまったくないと言い切れません。

 しかし、ハリウッド・スタイルが「数学を解くみたい」とか「ルーティン」とかに揶揄されているも、いまだにほぼイコール「世界に通用する規格」という理由は、まさに彼らが世界中のより多くの人に伝えたいことに腐心している結果です。

 その結果、一部陳腐に落ちかねない部分や綺麗すぎる部分が否めないにしても、「もっとも多い人数に伝えられるかもしれない描写」を手に入れたのです。商業上の部分をクリアする上、より多くの観衆に伝えようとする表現の手法としては、極めて正しいものだと感じます。

 これは、富野監督本人が『映像の原則』などでも取り上げた話題なのですが、別に富野監督が言わなくても、台湾人である私にとってはものすごく自然に頷ける話です。



 アメリカ人のこういうおおらかであっけらかんなメンタリティはある種、日本人の極まりない繊細さとは対極にあるものといえるかもしれません。そういう意味では、日本人にとっては道理として分かりつつも、納得できない部分もあるのでしょう。

 あるいは、どうやって両方の文化性を一つの作品にうまく落とし込むのを理想との厳しい戦いと感じているかもしれません。

 しかし、台湾というアメリカと日本文化がごく自然に融和している風土に育っててもらった台湾人の感性にとっては、この日本的なものとアメリカ的なものを共存させるのは、常に日常生活と一体となり、実経験を通して体感できるものですので、日本ほどハードルを感じずに乗り越える部分があるといえます。

 そういう意味では、富野監督をはじめとした世界クラスの監督が目指している文化性の融和という理想は決して容易いことではありませんが、不可能ということも決してありません


 結局、最正解なんてきっとどこにもありませんけど、ベターな答えはあるはずです。

 クリエイティブな仕事に多数決的な判断はいりませんけど、こういう多方面の文化性をうまく溶け込む感性が必要だと感じます。そういう意味では、すべてのクリエイターにはこれを目指して頑張ってほしいですし、富野監督が今回の仕事を通じてそういう才能のサポートを獲得してほしいと心より願っています。

コメント
改訂版持っていないので、初耳(初目?)でした。
そうだったんですね、ターンエーの最後の方の描写のことですね。

実際、私も言われて思い出した位なので
意識としてあれが「落雪の音」って気付いてなかったかもしれません。
不自然な音とも思っていなかったですけど。
(ほとんど雪の積もらない地方だけに、どちらにも感じないというは
 ただ単に私がぼけーっと見ているからかもしれませんけど。)

文化性は一番上の表層の部分、衣装の部分であると思います。

中身は皆同じ「人間」(=普遍的な面白さ)でなければなりませんが、
その一番外側の薄い部分にそういう文化性のアクセサリーなりお化粧なり
してあげると、より人としての魅力が増しますもんね。
あまり厚化粧しちゃうと本当にそれがストライクの人しか好きにならないとか
わかる人にしかわからないとかになっちゃいますからほどほどで。

料理や言語を見てもわかるように日本人は、
他の文化を取り入れ、アレンジすることが昔から上手です。
でもそれを外に発信することはあまり得意でないよう思います。

それは日本人の感性に落とし込むことのみに特化しているからとも思えます。
外国の方々が、それを「面白い」と勝手に(こちらが強く宣伝しなくても程度の意味です)
思ってくれているからいまのク〜ルジャパ〜ン(?)みたいなのが成り立っているんですけど、
「いざ、我々から!」となったときはどうなるんでしょうね。

もうちょっとそういうところが「上手くなれ」とも思いますが、
プレゼンだけ宣伝だけ上手くなっていく現状もあまり歓迎できなくもあり。。。

長文失礼いたしました。
まそきぃ〜 #-|2014/02/01(土) 10:03 [ 編集 ]
本放送当時、この音がディアナ様が倒れた音だ、とかいう意見も
ネット上にあった気もします。
まそきぃ〜 #-|2014/02/05(水) 14:48 [ 編集 ]
文化性は、皮膚の部分もありますけど、体感として存在しているものだと思います。
それこそ日本では雪が降らない地域もありますが、
教育とか環境などで「日本」に生まれたものならば、雪をまったく知らないことはありえない、
みたいな話を私はしたいわけです。
とても複雑な話題ですので、これ以上うまく語れると思いませんけど、
どうやってより外に受けるためには、何から何までじっくり考えなければいけないと思います。

それから、当時のお話を紹介してくださってありがとうございます。
言われてみれば、そういう考え方もありうると思いますね。
kaito2198 #L2WcHO2o|2014/02/06(木) 00:10 [ 編集 ]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら
http://kaito2198.blog43.fc2.com/tb.php/1442-1064dd0f

ブログ内検索

なんとなく富野商品

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリー

まともに機能しなくてすみません。これからゆっくりペースで直します。

RSSフィード

FC2カウンター

富野監督作品一覧

  • 海のトリトン
  • しあわせの王子
  • 勇者ライディーン
  • ラ・セーヌの星
  • 無敵超人ザンボット3
  • 無敵鋼人ダイターン3
  • 機動戦士ガンダム
  • 伝説巨神イデオン
  • 機動戦士ガンダム(劇場版)
  • 機動戦士ガンダムⅡ 哀戦士編
  • 戦闘メカ ザブングル
  • 機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編
  • 伝説巨神イデオン・接触篇 -A CONTACT-
  • 伝説巨神イデオン・発動篇 -Be Invoked-
  • 聖戦士ダンバイン
  • ザブングル グラフィティ
  • 重戦機エルガイム
  • 機動戦士Zガンダム
  • 機動戦士ガンダムZZ
  • 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
  • 機動戦士ガンダムF91
  • 機動戦士Vガンダム
  • 闇夜の時代劇 正体を見る
  • バイストンウェル物語 ガーゼィの翼
  • ブレンパワード
  • ∀ガンダム
  • 劇場版∀ガンダムⅠ 地球光
  • 劇場版∀ガンダムⅡ 月光蝶
  • OVERMAN キングゲイナー
  • 機動戦士Ζガンダム A New Translation -星を継ぐ者-
  • 機動戦士ΖガンダムⅡ A New Translation -恋人たち-
  • リーンの翼
  • 機動戦士ΖガンダムⅢ A New Translation -星の鼓動は愛-
  • RING OF GUNDAM
  • ガンダム Gのレコンギスタ
  • 富野参加作品一覧

  • 鉄腕アトム
  • 戦え!オスパー
  • リボンの騎士
  • 巨人の星
  • アニマル1
  • 夕やけ番長
  • 海底少年マリン
  • どろろ
  • 紅三四郎
  • 巨人の星対鉄腕アトム
  • おらぁグズラだど
  • 男一匹ガキ大将
  • ムーミン
  • シートン動物記
  • 赤き血のイレブン
  • アタックNo.1
  • あしたのジョー
  • 男ドアホウ!甲子園
  • 昆虫物語 みなしごハッチ
  • さすらいの太陽
  • 天才バカボン
  • ふしぎなメルモ
  • 新・オバケのQ太郎
  • 国松様のお通りだい
  • いなかっぺ大将
  • 正義を愛する者 月光仮面
  • アニメ・ドキュメント ミュンヘンのへの道
  • モンシェリCoCo
  • ハゼドン
  • ど根性ガエル
  • けろっこデメタン
  • ワンサくん
  • 山ねずみロッキーチャック
  • 侍ジャイアンツ
  • 新造人間キャシャーン
  • アルプスの少女ハイジ
  • ゼロテスター
  • 昆虫物語 新みなしごハッチ
  • 小さなバイキングビッケ
  • 宇宙戦艦ヤマト
  • 破裏拳ポリマー
  • フランダースの犬
  • 母をたずねて三千里
  • アンデス少年ペペロの冒険
  • 超電磁ロボ コン・バトラーV
  • ゴワッパー5 ゴーダム
  • ろぼっ子ビートン
  • あらいぐまラスカル
  • 合身戦隊メカンダーロボ
  • 超電磁マシーン ボルテスV
  • シートン動物記 くまの子ジャッキー
  • ヤッターマン
  • ペリーヌ物語
  • 闘将ダイモス
  • 未来少年コナン
  • とびだせ!マシーン飛竜
  • まんが日本昔ばなし
  • 宇宙魔神ダイケンゴー
  • 赤毛のアン
  • 科学忍者隊ガッチャマンⅡ
  • ザ・ウルトラマン
  • 宇宙大帝ゴッドシグマ
  • ルパン三世(TV第2シリーズ)
  • 新世紀GPXサイバーフォーミュラ
  • 銀河漂流バイファム
  • ママは小学4年生
  • GUNDAM EVOLVE 5
  •  |  富野作品感想 | 富野由悠季関連 | 井荻麟関連 | 富野情報 | 富野雑談 | レビュー | ブログ運営 | 日常話 | 未分類 | 給華文讀者 | Gのレコンギスタ | 
    Copyright(C) 2007All Rights Reserved. TOMINOSUKI / 富野愛好病
    Powered by FC2ブログ.
    template designed by 遥かなるわらしべ長者への挑戦.