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井荻麟作詞論 第43回「いくつもの愛をかさねて」

2014/05/09 22:03|井荻麟関連TRACKBACK:0COMMENT:5
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 井荻麟作詞論 第43回「いくつもの愛をかさねて」
 井荻麟作詞論の記事は108回くらいの予定です。今日は第43回で、テレビアニメ『機動戦士Vガンダム』の挿入歌「いくつもの愛をかさねて」について語りたいと思います。



いくつもの愛をかさねて
作詞:井荻麟/作曲:岩崎元是/編曲:岩崎元是/歌:岩崎元是

引き裂かれた 愛が
それっきりおしまいになると思わず
一度、知った 愛は
鍛えられ 次のもの さがす 力に

 この「いくつもの愛をかさねて」は、『Vガンダム』の4曲ある挿入歌のうち、最後に登場してた曲だ。

 50話と51話のラスト間近に二回使われて、どれも情緒ある使い方をされているが、富野が『Vガンダム』においてEDの作詞を手がけなかったことを考えれば、この曲はまさに『Vガンダム』という作品そのものの真のエンディングに相応しい一曲だ。



 本論に入る前に、少しだけ「愛」のことを語りたいと思う。

 富野由悠季という作家は、作詞を含め、愛そのものを否定しているイメージが強い。しかし、あれは主に「哀戦士」という曲からのイメージで、実際の状況とは少々異なる。「愛しい」などの単語を除外しても、歌詞のなかに「愛」という単語が出てくる井荻作詞は、実は全体の1/4ほどを占めている。

 そもそも、愛は人の感情のなかでももっとも重要なファクターなので、人間を語りたいならば、愛を避けるのは不可能なことだ。富野の「アンチ・愛」は、当時の「ガンダム」の仮想敵である『宇宙戦艦ヤマト』の映画の副題「愛の戦士たち」という愛を声高く謳っている作品に対する打ち出したものだったが、その(半ば本心として、半ば戦略としての)カウンターとして出した「哀戦士」にしても、ただ実態のない愛を反対するものであって、本当の意味の愛を軽視するものではなかった。

 このことから見ても、富野は実はよく「愛」を語っている作家であることは分かるはずだ。



 さて、本論に戻る。以上を踏まえて、富野は実は「愛」を忌み嫌うわけではなく、作詞ではむしろ数多くの「愛」を出している。それでも、あえて指摘しなければならないのは、この「いくつもの愛をかさねて」は、井荻作詞のなかでも「愛」を全面的に出した一曲であることなのだ。

いくつもの愛かさねあわせて
果てることないスペースライツに
So,like a……I,I,
melting into the image of GALAXY with you

 歌詞を見ると、全曲は「愛」から初め、「愛」で終わる構成となっていて、かつて「哀戦士」であえて「哀」を重ねて歌わせるトリック的な手法を考えれば、驚くほど素直な描き方をされている。

 さらに、歌詞の「愛」の中身を見てみると、広辞苑の解釈にある「いつくしみあう心、思いやり、大切にすること」などいくつかの広義的な愛からも離れて、実はものすごく単純に性の間に存在している「愛」のみを歌っているようにも取れる。これほどストレートな形で情愛を語るのは、井荻麟の作詞のなかでもおそらくこの曲のみだ。

 しかし、極めて狭い範囲内で愛を語ったのにもかかわらず、曲全体は心地よい広がりが溢れていて、ぬくもりに包まれているように聞こえるのは、この「愛」という究極的に小さいものを、「生命の営み」という究極的に大きいテーマに結びつけたからなのだ。一人の小さいな心性を通して、果てしなく大きい宇宙を描くのは、まさに富野の真骨頂と言える。



 そう、この歌はいわば生の賛歌だ。

あれから八つ 季節はすぎて
あの唇 時代(とき)を越えて
過去のものより あかあかと
今のぼくに 生命(いのち)続く源 くれる

 このように、全曲には生への喜び、生命のぬくもり、生きのびるための気力が溢れている。それでいて、どこか暗い影を落とすように聞こえてならないのは、その背後には、厳然なる死が潜んでいるからだ。

 しかし、親が死んでも、子のなかに生きているから、子が生まれたら、その人生が終わることはない。このように、生は必ず新しい始まりじゃないし、また死も決して単純な終わりとはいえない。生と死の境界は実は、常に曖昧なものだ。

 こうして、生と死という人間にとって二律背反的なテーマを、同時に取り上げながら、上手くそれぞれの持つ意味を融和させ、人類にもたらす意義を伝えることができたのは、両者の間に「愛」という生を産み、死を乗り越えられる力を持つ意志の要素を全面的に打ち出したからだ。

 世代交替、と書けば味気のないものだが、「愛」という時間と空間をも越える永久なる意志を通して、生命の「生」と「死」の両面性を描きながら、人類の生きる意味を次の世代へ伝えるのは、この作詞のテーマであり、『Vガンダム』が全編を通して一貫しているテーマでもある。作詞面においても、第41回の「いつか生まれた時のために」、第42回の「生まれてくるものへ」、そして今回の作詞の根底に流れているのは、全て同じようなメッセージとは言える。だからこそ、この曲は『Vガンダム』のラストを飾るのに相応しい格をも獲得できた。



 そして、もう一つ吟味できるところを指摘したい。

思いを深く 投げあえば
森と海の 深さにまでも
生気あふれ あざやかに
生命(いのち)そだて 傷の痛みは癒えて 星に

 母なる星・地球を謳歌するのは、ガンダムシリーズに一貫しているところとは言えるが、『Vガンダム』の優しさと残酷さの両極端に揺れる描写に則って、本編で描ってきたテーマ・物語を考えれば、その一見何の変哲もない言葉は、実に深く重い意味が持っている。

 地球に回帰して、生命(いのち、生きる命)を癒し、大地に帰って、眠りにつく。これは、ウッソたちのことではあるし、カテジナのことでもある。なにより、作り手である富野自身のことを暗示しているように聞こえる。

 『Vガンダム』以降、精神不振になった富野が再び立ち上がるまでは、4年弱の時間を要した。本人の弁によれば、死ぬ妄想にまで取り付かれた彼を救ったのは、「土」そのものだった。ちょうど彼が『Vガンダム』で執拗までに、人との関連性を強調してきた要素だった。

 『Vガンダム』は時折『ブレンパワード』以後の富野作品を予言するアニメといわれるが、この「いくつもの愛をかさねて」はまさにそういう方向性を物語っていた。それと同時に、アニメ演出家としての富野本人もこの曲で示した土の感触に触れて、のちの「復活富野」へと繋ぐように考えられる。このことから見ても、「物語は人の力を癒すことができる」ということは本当であろう。


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コメント
曲中の「愛」が「生命の営み」を指しているというのは同意です。
しかし、地球だけが皆の帰る場所というわけではないと感じます。
各々が深く愛をかさねた場所がそうであり、愛が深まれば
いずれスペースコロニーも母なる故郷(=命を営む場所)となり得る。
むしろこの曲は、そういったスペースノイドの立場で歌っている
ように聞こえます。
最終話にて、エンジェル・ハイロゥや戦艦が空に消えたのも、
サイキッカー達の「故郷への回帰」という祈りの力だと、そう考えると、
彼らの帰るべき場所は、かつて愛を重ねたコロニーだったのだと思います。

宇宙は過酷な環境かもしれないが、そこが故郷なのだと語る、
また、故郷を失った者・旅立つ者へ、次の故郷を見つけることが
出来るようにと応援する曲だと・・・

ちなみに、
曲中のシャクティの涙は、かつてともに生活こともあるカテジナを
自分の場所へと迎え入れることができなかった、後悔の涙。
そして、故郷をなくした彼女を想った、同情の涙だと。
そう、解釈しているんですが、真相はどうなんですかね・・・?

それにしても、サイトとつなげてくれたこの曲には、感謝!
これからも更新楽しみにしてます。
goby #-|2014/05/10(土) 23:13 [ 編集 ]
gobyさん、素敵な意見ありがとうございます。
確かに、本編の描写を見ますと、私も故郷がそれぞれだと感じました。
そういう意味では、この曲は「ひなげしの旅のむこうに」(宇宙を新しい故郷するための旅)に繋がって、
まさに表裏一体と言えます。

ただ、単純に歌詞を見ますと、やはり地球のことを言っている感じが気持ち強いかなと感じます。
それに主人公ウッソが大地(人間の故郷)に育った子という立ち位置を考えますと、
最後は大地に回帰するのは、やはりテーマの一つなのではないかと思っております。
記事の文脈上、カバーできない部分も多々あると思いますが、
これからもよろしくお願いします。
kaito2198 #-|2014/05/12(月) 00:43 [ 編集 ]
どうもです。
いつもながらあなたのお書きになる論評は完成されてて私なんかが付け加えるのが
無粋なんじゃないかと思えてきます。

ただ僭越ながら少しVガンダム本編に引き寄せて語るのなら
劇中には人の妬みや憎しみなどの負の感情が徹底して描かれますが
それらを乗り越えた上での強靭な意志や剥き出しの感情こそがこの詩で語られてる
「愛」なのではないかと私は思います。

ただここでまた意地の悪いこと言うのですが、主人公のウッソは自分の憧れのお姉さんの
カテジナを救えずにシャクティと共になし崩し的に故郷に還ってきてビルディングスロマンとしては
破綻してて成長できないままドラマツルギー的にこの詩とは真逆の終幕を迎えてしまったと思っております。

この詩で語られてる「愛」がドラマとして結実するのは数年後のブレンパワードまで待つことになったと今になって思っております。

長文失礼しました。
千秋クリストファ #-|2014/05/12(月) 02:07 [ 編集 ]
これは僕の富野さんの一番好きな歌。
ありがとうカイトさん、あなたのブログは最高です。
騎士絵利久 #YAusonqo|2014/05/12(月) 19:40 [ 編集 ]
>千秋クリストファさん、ありがとうございます。
「負の感情を乗り越えるための愛」というご指摘は、確かにそう思いました。
今回一番書きたかったことをさらっと言ってしまって、ありがとうございます。
あとでその件を参考して、記事を修正させていただきます。

>騎士絵利久さん
はじめまして。
褒めていただいてありがとうございます。
確かに素敵な歌だと私も思います。
kaito2198 #-|2014/05/13(火) 23:27 [ 編集 ]
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