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井荻麟作詞論 第33回 「Ζ・刻を越えて」

2013/06/30 12:24|井荻麟関連TRACKBACK:0COMMENT:5
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 井荻麟作詞論 第33回 「Ζ・刻を越えて」
  井荻麟作詞論の記事は100回以上予定です。今日の第33回では、テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』の1stオープニング「Ζ・刻を越えて」(第1~23話)を語りたいと思います。



Ζ・刻を越えて
原題:BETTER DAYS ARE COMING/原作詞:NEIL SEDAKA/作詞:井荻 麟/作曲:ニール・セダカ(NEIL SEDAKA)/編曲:渡辺 博也/歌:鮎川 麻弥

今は動けない それが運命だけど
諦めはしない もう目覚めたから
燃えるときめきは 時代を映し
色鮮やかに 燃えさかる炎

 前回でも言ったが、「異世界三部作」を終えた富野由悠季は、この『Zガンダム』をもって、10年の間にガンダムしかやらせてもらず、しかもガンダムを連続に作らなければならなくなった状態に入っていた。そして現在の評価とは裏腹に、作家としては別にして、作り手としてはこの『Zガンダム』から低迷期に入ることも間違いなく事実であった。

 こうした強い挫折と抵抗感、それからそれらに伴う使命感と反抗心は、そのまま『Zガンダム』の核心になっていたといっても過言ではない

 また、『Zガンダム』は前作とうって変わる気分(≒雰囲気)が漂っている上、新たに入れる要素も多々あるため、時折難しい作品と評されている。しかしそれらの気分や要素が、この「Ζ・刻を越えて」からはすべて伺える。なので、この歌詞をよく理解できれば、『Zガンダム』の全貌を把握できると言えるかもしれない。

 なので、この歌詞自体には深読みできそうな部分はいくらでもあるけど、今回はあえて以上の二点を中心的に説明する。



 以上の話を踏まえれば、この「Ζ・刻を越えて」の出だしの部分からは、どうしても「言外の意」が聞こえてならない。

今は動けない それが運命だけど
諦めはしない もう目覚めたから

 前回ではガンダムシリーズ時期の井荻麟作詞の特徴は「意志の表明」と言ったが、この歌詞が一番それを表しているものだ。

 「いま、現実に苦しんでいる。それでも、やるしかない。」この歌詞は、主人公カミーユのことを指してるとは言えるし、真・主人公シャアのこととも言える。しかし、なによりこの二つのキャラを自分から生み出した、作者である監督の富野由悠季のことを言っていると感じられる。作者の意図ではないが、このようなメタフィクション的な読みはいくらでもできる作りとなっている。

 のち、富野は『Zガンダム』という作品を「現実認知」の物語だと言い表したが、この「現実認知」は作詞でも顕著に現れている。しかもこの現実認知は富野が直面する現実ともリンクし、作品により痛切な深さを与えていた

 もちろん、富野は単に作品(もしくは歌詞)を自分の不平不満をぶちまけるものと捉えていないし、そのような作りもしていない。歌詞でも、ちゃんと本編の一要素として還元できるように作っている。それでも、『Zガンダム』がありきたりの続編ものに陥らずに済むだけでなく、ともすれば哲学的だと評価されるわけは、間違いなくこの富野による入魂的な気持ちのこもり方の賜物だ。



 もう一つ注目すべきところがある。

 長く続いている宇宙世紀のガンダムシリーズだが、二作目の『Zガンダム』はよく前作(ファースト)から作品の色が一変したと言われている。いろいろあるが、とりあえず一番顕著に見えるのは、ニュータイプという前作の隠し味的な要素を、この作品で世代論を付け加えて、全面的に出したところでしょう。これは『Z』がよく批判されるところではあるが、逆に一番評価されているところでもある。

 そしてこの気分は、歌詞にも出ている。

暗い街角 ひらく空から
ひどく虚ろに 星が揺れても
そこに残った 若さ取り出し

 井荻麟の80曲の歌詞のなかで、「若さ」という単語はこの曲だけに出てくる(※)。この「若さ」という言葉を中心に、「燃えるときめき」「時を乗り越え」などを、「暗い街角」「空の傷口(きず)」などに合わせて聴くと、その対比が非常に強くて、かなり世代論的な意味が含まれていることを感じ取れる。

 いわば、富野がZガンダムに対する気分は、すべてこの「Ζ・刻を越えて」から読み取れるのだ。若さをもって、時代を切り裂きたいという次世代への富野の期待と願いかけは、この歌詞から伺うことができる。



 ところで、この曲を聴くと、なぜだか違和感を持つ人もいるかもしれない。実際作品の冷徹な色合いに比べれば、「Ζ・刻を越えて」の曲調と歌詞はあまりにも熱いのだ。事実、原曲の作者である二ール・セダカでさえ原曲の差異に困惑していた。

燃えるときめきは 時代を映し
色鮮やかに 燃えさかる炎

 この1stオープニングでは何度も何度も「若さの情熱」というものを強調しているわりに、本編は若者が厳しい現実のなかで挫折していく展開の連続であった。コントラストと言えばそこまでだが、実際この落差が一種のぎくしゃくを醸したことは事実である。

 このような落差の正体はいかなるものかに関して、ここから推測だが、ひょっとしたら富野はこの作品の冷たい色合いを隠すもしくは中和するために、あえてこのような熱さを喚起するような歌詞にしたのではないかと考えられる。

 実際の本編を見終われば分かると思うが、このような続編は当時では皆無でした(現在でもほとんどない)。このような試みを、視聴者とスポンサーの期待を一身に受けるガンダムの続編に出すのは、生半可なことではない。あえてこの視聴者が困惑するであろう色を持ち込んだ富野には、きっと他人には分かることができない思いと考えがあったんでしょう。

 それでも、大衆娯楽作品として成立させなくてはならない。その上ヒットさせなければならない。これをクリアするために、富野はいろいろな苦心をした。そして歌詞においては、初期の大胆な試みをした『ファーストガンダム』や『伝説巨神イデオン』の作詞みたいに、実際のテーマを隠して、正統派かつストレートな歌詞に持っていた。これはガンダムという作品を作り、そしてそれの続編を作らなければならない富野が、作品とスポンサーに対して果たしていた義理なのではないかと考えられる。



 ところで、この「Ζ・刻を越えて」にはいくつかの英語歌詞が入っている。文法的には至って和製英語で、それを詮索してもキリがないので、ここでは意味だけを考えましょう。一字一句訳しないが、とりあえずpure time=「純粋な刻(とき)」、noble mind=「気高い心」、hard time=「辛い時」などを見れば、やはり前述の歌詞の意味から離れず、若さ。英語にしたのはあくまでお洒落か、流行歌の格式に則っているかと想像できる。

 ちなみに、この歌詞はJASRACシステムでは「訳詞」扱いだったが、内容を読めば分かるとおり、原詩とかけ離れて、まったくの井荻麟オリジナルの歌詞なのだ。


 ニール・セダカの原曲。まったく別の曲のように聞こえますが、実際は歌詞を含めて別物です。



Z・刻を越えて/星空のBelieve/水の星へ愛をこめて/銀色ドレス (TV版 機動戦士Zガンダム主題歌)Z・刻を越えて/星空のBelieve/水の星へ愛をこめて/銀色ドレス (TV版 機動戦士Zガンダム主題歌)
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※というのは、実に嘘です。もう一箇所だけ「若さ」というフレーズが出てきます。ただまったく別の意味で使われていますので、こう言っても差し支えないと思います。
コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
#|2013/06/30(日) 23:40 [ 編集 ]
どうもです。
動画の方にリンクにもありますがニール・セダカの原曲ってボサノバ調で割とお洒落なポップソングなんですよね。
一部メロディこそ踏襲してますが、作曲者が和製ロック調に変更して、富野さんのイデオロギュッシュな歌詞が組みあわさって、
解説の通り全く別物ですよね。元の作曲者もこれでは当惑しますよ。

それに不満をもったセダカ氏が、その後の後期OP「水の星へ愛をこめて」で自ら作曲を手掛けるわけなんですけど。
千秋クリストファ #-|2013/07/01(月) 14:50 [ 編集 ]
千秋クリストファさん、コメント頂けるとは嬉しいです。
おっしゃるとおりですね。確かにニール氏の楽曲が必要なのは日本の製作側が新しい風を持ち込みたかったという思いがあったようです。ただ歌詞からしてこの変更はZにとって必要なものだと思いますので、そこらへんの折り合いというか調整は大変だと思いますね。
kaito2198 #L2WcHO2o|2013/07/02(火) 01:10 [ 編集 ]
こういう話だったんですね。

いつか聞いてみようと思っていたので、知れて良かったです。
ありがとうございます。

HaruAihara #bxvF113M|2013/07/07(日) 18:13 [ 編集 ]
それがなによりです。
kaito2198 #L2WcHO2o|2013/07/08(月) 17:25 [ 編集 ]
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