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井荻麟作詞論 第27回 富野作品のOP・EDおよび挿入歌におけるビジネス事情その1

2013/06/08 00:14|井荻麟関連TRACKBACK:0COMMENT:3
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 井荻麟作詞論 第27回 富野作品のOP・EDおよび挿入歌におけるビジネス事情その1
 井荻麟作詞論の記事は100回予定です。今回は、井荻麟の範疇を越えて、富野由悠季監督の作品に出てくるOP・EDおよび挿入歌のビジネス事情を語りたいと思います。「その1」は、富野監督が作詞を始めた頃から、『機動戦士Zガンダム』くらいまでの話をします。それ以降の話は、第53回の「その2」で語ることにします。



 第26回までは、われわれはすでに富野由悠季監督が井荻麟名義で『無敵超人ザンボット3』『無敵鋼人ダイターン3』『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』『戦闘メカ ザブングル』などの作品に書いた歌詞を見てきた。また、第27回以降では『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』『機動戦士Zガンダム』などの作品の作詞も取り上げる。こうして井荻麟の作詞を一つずつ検証すると、その中身がいかに深くて豊かだと分かる。

 しかし、作詞そのものを語る際、なにより忘れてならないのは、作詞の外にまつわる環境のことだ。ひとくち環境といってもいろいろあるが、とりあえず商売面から簡単にいうと、作詞はあくまで主題歌・挿入歌のために存在しているものであるため、音楽会社などが歌に対するビジネスの要請を無視することはできない

 そして、井荻麟が作品の作詞における立ち位置を検視すると、そういったビジネスの要請が、富野作品ひいてはアニメ業界の作品全体の音楽に対するスタンスと影響の変遷も、自然に浮かび上がる。


 
 厳密な検証を経ったわけではないが、以下は当時の状況や環境の変化に則って、いくつかの話題と時期を分けて、それらを並行しつつ簡単に説明したい。

 ご存知のとおり、富野が作詞を書き始めたのは1977年からのこと(※異説あり)だった。そして当時のアニソンはレコード会社においては、学芸部の統括に置かれるものだった。よく言えば童謡、小学唱歌と同等視だったが、実際では「たかが子供が聞く歌だ」という扱いだった。

 しかし、こうしたレコード会社のアニメ音楽に対する無視に近い軽視が、富野に突き抜ける余地を与えた。そして、富野はこの余地を最大限に利用して、やがてアニソンの突破点を作り上げた。

 富野本人の述懐によると、当時は音楽会社のアニメ音楽(歌含め)に対する重視、さらにアニメ音楽のレベルの底上げを望んでいた。そして作詞活動も、その一環として行うものだった。いわば、初期の井荻麟作詞は当時のアニソンに対する「異論申し立て」だった



 今までも記事で論じたが、初期の井荻麟作詞曲の最大の特徴は、「ロボットものらしい歌詞をしつつ、本当のテーマやメッセージを中に隠している」というものだった。出来は別にして、富野がそれらの挿入歌を作った意図は、やはりアニソンに深みを与えたいほかなかった。そして、『ザンボット』『ダイターン』を経て、『ガンダム』で手応えを感じたか、富野が『伝説巨神イデオン』の主題歌においては、すでに最初からより高い年齢層を狙うような歌詞を用意し始めた。

 しかし一つ注意してほしいのは、今まで井荻麟作詞論の一連の記事を読むと、まるで井荻麟が主体として働いてきたようにも見えるが、それは違う。最終の決定権を持っているのは、あくまで音楽会社だった。いくら思いのたけを歌詞にぶつけたくても、会社がイェスを言わない限り、そのような歌詞が世間に出ることは決してなかった。なので、我々がいま見える井荻麟の作詞も全部、妥協と創作の間にもがいた末に、ようやく出来た苦心の産物だ

 つまり、作詞においても、井荻麟は富野喜幸と同じ戦いをしてたのだ。作品で受ける「ロボットありき」という縛りがあるのと同じように、作詞においても、「いかにも当時のアニソンらしいルックス」という縛りがあったのだ



 ご存知のとおり、『ガンダム』がヒットしたと共に(ガンプラのそれとは別の話)、レコードもかなり売れた。また、『ザンボット』と『ダイターン』もそこそこの売り上げを記録した。こうした勢いに乗じて作ってきたのが、『ガンダム』劇場版の三部作における曲だ。映画のヒットと共に、曲も大ヒット。一般ソングに比肩するまで行かなかったものの、一気に大衆に認知されている存在となっているのは間違いないのだ。

 富野が6曲のうちに5曲の作詞を担当したが、そのうち井上大輔氏と組んで作った4曲は特に人気だった。この時期は、まさに井荻麟の絶頂期だった。アニメの曲なのに、アニメのさらに上へ行っている――そんな曲調と歌詞の出来は、当時のアニメ視聴者および一般大衆の度肝を抜いた

 この人気とヒットぶりに、もちろんレコード会社が気付いていなかったはずは無い。この機を乗じて、一つの作品の商売を最大化し、さらにアニソンという領域全体を拡大させようとする意図も、きっとあるのでしょう。しかし、あまりにも突然なことだったのと、現に井上+井荻がヒットした実績の前にして、この時期のレコード会社もとりあえず受け入れるしかなかった。

 こうしたレコード会社の戸惑いが、劇場版1部に谷村新司とやしきたかじん、そして3部の補作として売野雅勇が起用されたことからも伺える。いわば、レコード会社はすでにこのビジネスにおいての可能性に気付いたけど、どうやって正確に操作するのをまだ分からなかった模索期でった。『イデオン接触編・発動編』の主題歌において水原明子が起用されたのも、こういった思惑はあったからでしょう。



 そして、『ザブングル』。この作品において、富野がもっとも多い作詞を手がけたが、外部のビジネス事情まで考えると、実は緩やかに下降線に辿っているとは言えるかもしれない。ちょうどこの時期から、アニメ音楽に関する業界もだんだん模索期を越えて、いよいよ転換期に入ってきた。

 『ザブングル』ではOPとEDの主題歌以外、挿入歌も作られたが、作劇上あまり挿入歌を入れる余地を考えていない富野にとっては、作品に挿入しなければならない歌というものは、むしろ作品を作るときの一種の縛りと言える。そのうえ、曲と歌手をヒットさせなければならないという商業的要請も絡んでいるから、作品におけるオモチャのように「ヒットしてなんぼ」という圧力が、皮肉にもこの波を作った本人である富野に襲い掛かった。

 『ダンバイン』では、富野が『ザブングル』に引き続き、オープニングテーマとエンディングテーマの作詞を行った。しかし、挿入歌の二曲はプロの作詞家三浦徳子の手に渡した。挿入歌で作品の側面を描く機能がなくなり、代りに軟調のポップソングが作品のなかで入れてきた。さらに、同時期の映画『ザブングル・グラフィティ』でも売野雅勇が主題歌に起用され、そしてヒットした。井荻作詞でポップソングに比肩するヒットが継続できなかった以上、プロ作詞家の参入はもはや決定的だ。いわば、『ザブングル・グラフィティ』と『ダンバイン』は、すでに井荻麟の商業上の負け戦を示したのだ

 そして、決定的な敗北は『エルガイム』だ。この作品において、富野はいよいよ前期および後期の主題歌を手放すことを余儀なくされた。「エルガイム」の二曲の記事で言及するとおり、富野が作詞で世界観をコントロールするという一大武器を無くした。そして、ここまで至って、レコード会社が「アニメという媒体で、プロ作詞・作曲家の作詞・曲を使って、歌手を売り込む」というパターンを、ようやく成立させた。かくして富野も井荻も絶頂期を終えて、長くて苦しい低迷期に入ることになる



 富野喜幸が日本サンライズでアニメの監督をやり始めた初期、アニメ音楽はまだレコード会社にとっては「たかが子供のもの」だった。富野がそこに着眼し作詞を作り始めたのは、確かにアニメ音楽の可能性に気付いて、アニメ音楽がレコード会社における待遇の改善、ひいてはアニメ音楽そのものの成長を願うというという純粋な思いがあったのだ。

 そんな中で、富野がレコード会社に働きかけをしつつ(初期の作品でよく富野のレコードなどに対する逸話が聞こえるのも、そのためだろう)、自分で作詞を模索した結果、だんだん自分なりの方法論を確立し、「井荻麟」というスタイルを立ち上げた。この方法論の確立は(井荻麟作詞論で論じたように)作品にプラスな効果をもたらし、やがて曲にもヒットさせ、アニメ音楽ビジネス上の可能性を見事にレコード会社に見せたのだ。

 しかしながら、このビジネスにおける可能性は諸刃の剣なのだ。「商売」を求めつつ、あくまで「作品」を作ることにこだわっている富野にとって、ビジネスの「介入」は喜ばしいことである同時に、自分が一度勝ち取った立ち位置を奪われることを意味する。ビジネス事情におけるプロ作詞家の参入の良し悪しはさておき、井荻麟にとって取って代わられたことは、挫折以外の何者でもなかった。そして作品的でも、作詞で物語世界を把握する方法論を失った。


 『Zガンダム』では、6年越しのガンダム作品であったためか、1年ぶりに富野がオープニングのみで作詞に復帰した。しかしエンディングと二番目のオープニングはやはりプロの作詞家に任せることになった。かつて作詞のすべてをアニメ制作側においている日々は、もはや二度と戻ることがなかった。このような状態が富野と富野作品にとっては、『Vガンダム』まで続くことになる。

 とはいえ、ここで諦めるような富野ではなかった。『エルガイム』は富野にとって確かに挫折だった。しかし、ここから富野はまた転換を試みつつ、さらなる境地を迎えることになる。この話は、またいずれ語ろう。



 今回の文章は文脈上、富野作品以外のアニメを言及しませんでした。富野作品以外でアニメ音楽にまつわる環境や扱いに一石を投じたアニメは、もちろん他にもたくさんあります。これらの作品や関係者には敬意を払っていますし、今日までのアニメ音楽の環境を作り上げたことにもとても感謝しております。

 ただ、「井荻麟作詞論」という記事は文章の趣旨上、あくまで井荻麟こと富野由悠季をテーマにするものゆえ、今の形になりました。この場を借りて説明して、皆様のご理解をお願いします。


 よく考えてみたら、この記事は以下のタイトルでも通用できるはずです。

富野由悠季作品から見るアニソンにおけるビジネス事情

富野作品の井荻麟作詞を軸に、70年代後半から80年代中盤、アニメ音楽がいかに「児童の歌」から変革し、現在のいわゆる「アニソン」までになった経緯およびビジネス事情を説明。

コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
#|2013/06/09(日) 22:00 [ 編集 ]
素晴らしい記事です
「たかがアニメ」と言われたところから社会的地位を引き上げてしまった故に、失われたものがあるわけですね
いまやアニソンは、凋落するJポップの草刈り場になってしまいました
作品と共鳴する主題歌が少なくなりましたね
読みきり以蔵 #-|2013/06/27(木) 22:37 [ 編集 ]
クロ…読みきり以蔵さん、コメントありがとうございます。
ブログ常に読んでおります。いつも上質なレビューと感想を堪能しております。

褒めていただいてありがとうございます。
自分もこの記事の出来は会心の一撃だと思っています。あまり反響はないですけど(苦笑)。
おっしゃる通り、今は作品と共鳴する主題歌が少なくなっていると思います。
このへんに関して、のちにSEEDのOP「INVOKE」と高橋良輔氏の作詞を取り上げて、富野監督の作詞と比較しつつ、説明したいと思います。ぜひご期待ください。
kaito2198 #L2WcHO2o|2013/06/28(金) 00:02 [ 編集 ]
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