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井荻麟作詞論 第14回「哀戦士」

2013/01/31 00:01|井荻麟関連TRACKBACK:0COMMENT:7
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 井荻麟作詞論 第14回「哀戦士」
 井荻麟作詞論の記事は100回予定です。今日の第14回は、劇場版『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』の主題歌「哀戦士」について語りたいと思います。



哀戦士
作詞:井荻麟/作曲:井上大輔/編曲:井上大輔/歌:井上大輔

哀 ふるえる哀
それは 別れ唄
ひろう骨も 燃えつきて
ぬれる肌も 土にかえる

 劇場版第1部に代わって『Ⅱ』からの主題歌の曲・歌手担当は井上大輔となったが、井上は当時のヒットメーカーだけでなく、監督の富野喜幸の大学での同級生という経歴の持ち主でもあった。以降、二人は『ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』まで、4作の曲を共に作ることになる。

 さて、映画タイトルにもなっているこの曲「哀戦士」は、主題歌らしくこの映画のテーマを示すものとなっている。タイトルの「哀戦士」は富野によれば、映画のタイトルが難航するとき仕方なく付けた造語なのだが、実際に当時のいろんな発言から察すると、『宇宙戦艦ヤマト』の映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」に対する対抗意識があったと思われる。実際、歌詞のなかでは「愛」はこの「哀」の下位にいる位置となっている。

 それだけでなく、この「哀」と「愛」をかけて、ダブルミーニングを狙っているトリッキーな描き方は、全曲のなかでももっとも光っている詞とはいえる。実際の歌詞を聞いてると、「あい」という響きはほとんどの人が「愛」という言葉を意識するのに、歌詞の力によって無理やり「哀」を感じさせられる。このような「愛」と「哀」の間のギャップを作り、その倒錯的かつアンバランスな情感を聴衆に与えることによって、戦場に存在している「生」と「死」を同時に描けることができた。



 ところで、「哀戦士」は当時のザベストテンに入っており、長くファンの間に愛され続けているが、その歌詞を吟味すると、戦場全体に渦巻く感情や生死を描くものとなっている。これをテレビシリーズの挿入歌と照りあわして、直接に主人公たちを描かせず、周りの人々を描くという点からして、その性質はむしろ「シャアが来る」に一番近いと言える。世界の広がりを示し、戦場の雰囲気を増やすことによって、アムロたち以外の無名な戦士たちも生きている/生きていたことを物語っている作用を見れば、「哀戦士」歌詞の役割は実に三部作のほかの曲とも違うといえる。

 また、「シャアが来る」の性質に近いといったが、歌詞をよく読めば分かる通り、「哀戦士」は「シャア~」が持っているストーリー性を持っていない。その原因とはおそらく、映画の主題歌である以上、語ろう必要があるストーリーはただ映画そのもので、それ以上のサイドストーリーが必要されていない。映画のメインテーマの役割は、あくまで映画の雰囲気を醸すことだ。

 さらに、この歌詞は「シャアが来る」をはじめとしたTVシリーズの挿入歌に比べて、新しい要素も追加されている。

死にゆく男たちは
守るべき女たちに
死にゆく女たちは
愛する男たちへ

 テレビシリーズの曲と違って、「哀戦士」という歌詞では全面的に「男」と「女」を打ち出している。映画の内容に合わせて作ったというところもあるが、なにより男と女を語ることによって、包括的に「人の普遍像」を提示したところが大きいと考えられている。

 ご存知のとおり、「人の普遍像」というものは『ガンダム』という作品が提示したいもので、ニュータイプまで成長していく道筋上、それを知るのは不可欠なことと、監督の富野が考えている。そしてテレビシリーズのとき、それの役割をもっとも背負っていたのは、ランバ・ラルという成人の男とハモンという成人の女のカップルだ。ほかにもマチルダ・アジャンやウッディ大尉などがいるが、それらをすべて包括して聞く人に伝えようとするのは、この曲の歌詞であり、この映画のテーマでもある。

 映画的、かつ遍く作中の人物像を括るという条件が要求される曲。だからこそ、「哀戦士」は「シャアが来る」と同じタイプの曲でありながら、より俯瞰的な歌詞となっているのだろう。



 ところで、この曲の歌詞には二つ面白い視点の転換がある。一つはこれである。

疾風(はやて)のごとき 死神の列
あらがう術(すべ)は わが手にはない

 上で言った通り、この曲は俯瞰的な視角で展開され、これまでの歌詞ではいかにも客観的な角度で描かれていた。しかし、この歌詞が来ると、語り手もこのどうしょうもない戦場に身を投じる一人だと仄めかしている。このように神の視角ではなく、戦場に直面した者たちが自分の最善を尽きたものの、「抗う術は我が手には無い」という感慨は、かえって視聴者に一種の没入感をもたらす、アンバランスな高揚感を与えることになる。

 二つ目はこれである。

戦う男たちは
故郷(ふるさと)の女たちに
戦う女たちは
信じる男たちに

 1番目と2番目の歌詞では「死にゆく男/女たち」となっていて、戦場の無常/無情に身を投じて、死という運命に自覚しても、なお自分の愛する人のために奮戦する壮烈な気概が感じられる。しかしラストでは「戦う男/女たち」となっていて、前よりかえってトーンをちょっと落としたと感じられる。

 しかしながら「死にゆく」先人たちと違って、「戦う」我々だからこそ、生き残って新たな時を開くことができる。この先は死か生かよく分からない。だが死んでゆく先人たちがいたおかげで、先人たちと違うかもしれない道を歩くことができる。そんな不確定感は、この歌詞のなかに込めている。この「死にゆく」の現在進行形と「戦う」の現在形の差異は実に微妙だが、じっくり吟味する隠し味になりえると信じたい。



 ところで、歌詞には「I pray, pray to bring near the New Day」という英語がある。単語の並びでなんとなく意味が分かる人も多そうだけど、実は、英語版の『SOLDIERS OF SORROW』ではここは「I pray, pray for a new day」と直されている。ただし文法的な間違いはこの際無視として、実際の歌詞ではどういう意味なんでしょう。

 ここで自分のブロークンジャパニーズで訳すると、「私は祈る。新しい未来がいつか来るように祈る」というようなになるが、井荻麟が伝えようとするのは、おそらく「bring」の「運んで来る」が持っている「自主的意志」と「near」の「少しでも近づく」が持っている「足掻くする意志」で、大きな運命に抗えないと分かりつつも、なお抗えようとする。上手く言葉で伝えられないが、その意味は皆さんもきっと分かってくると思う。


 ところで、現在我々が見た「哀戦士」の歌詞は、実は修正が入っているものです。井荻麟的な決定版と思われるバージョンを、ここでちょっと紹介しましょう。

現在
黒くゆがんで 真赤に燃える


無気味にゆがみ 真赤に燃える

現在
血の色は 大地にすてて


血しおを 大地にすてて

現在
名を知らぬ 戦士を討ち


名前知らぬ 戦士を討ち

 なお、修正は井上氏の指摘を受けて、井荻麟本人が行ったものだそうです。

コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
#|2013/01/31(木) 02:22 [ 編集 ]
先日舞台芸術の教授とカラオケにて哀戦士を熱唱してきました、教授は機動戦士ガンダム、無敵超人ザンボット3が大好きだそうです。
大学教授レベルの人にまで浸透しているガンダムは凄いなと改めて思いました。

追伸
当サイトで紹介されているミードガンダム復刊記事のおかげで復刊後すぐに入手することができました、有り難う御座います。
ボルジャーノン #-|2013/02/02(土) 11:41 [ 編集 ]
ボルジャーノンさん、コメントありがとうございます。
ガンダムというか富野作品は愛され続けているのはほんとうにいいですね。

ミードガンダムは良かったんですね。12年越しの念願ですもんね。
kaito2198 #-|2013/02/02(土) 23:44 [ 編集 ]
修正前の歌詞を初めて見ましたが、明らかに修正後の方が良いですね。
修正前のものは説明的過ぎて、幅がない感じがします。

共同作業の利点が出てますね。
グリーン #JUGsyThY|2013/02/05(火) 14:01 [ 編集 ]
グリーンさん、コメントありがとうございます。
井上さんが的確な指摘を出したものですよね。仰るとおり、共同作業の意味はまさにそこにあると思います。
そういう意味でも、共作の作詞に関してはいろいろ話をしてみたいと思いますので、これからも応援していただければ嬉しいです。
kaito2198 #-|2013/02/05(火) 14:56 [ 編集 ]
ガンダムは見ていないのですがこの曲はよく流れていたので好きでした。思い違いかもしれませんがTVCMでは「ガンダム 男たちは ガンダム 女たちへ…」と歌っていた覚えがあるのですが。
りな #-|2014/02/04(火) 22:20 [ 編集 ]
そうですか、私は日本人ではありませんでしたので、そのようなCMをまったく見たことありませんが、
CMバージョンなりのアレンジもあるかもしれませんよね。
kaito2198 #L2WcHO2o|2014/02/06(木) 00:11 [ 編集 ]
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