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井荻麟作詞論 第12回「コスモスに君と」

2013/01/28 03:03|井荻麟関連TRACKBACK:0COMMENT:7
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 井荻麟作詞論 第12回「コスモスに君と」
 井荻麟作詞論の記事は100回予定です。第12回を迎えた今回では、テレビアニメ『伝説巨神イデオン』のエンディングテーマ「コスモスに君と」について論じたいと思います。



コスモスに君と
作詞:井荻麟/作曲:すぎやまこういち/編曲:すぎやまこういち/ 歌:戸田恵子

たったひとつの 星にすてられ
終わりない旅 君とあゆむと
いつくしみ ふと わけあって
傷をなめあう 道化しばい

 OP「復活のイデオン」の快活で勇ましい曲調に比べ、EDのこの「コスモスに君と」は穏やかでしみ込む旋律で展開されて、両者が対になる曲となっている。美しい旋律に隠れている悲しげな歌詞が印象的で、ファンの間に長い期間で話題が絶えることがないだけでなく、歌手の戸田恵子氏にとって思い出深い一曲だという。

 歌詞を見てみると、1番目の歌詞は『イデオン』という作品そのものの方向性を提示し、作品全体の印象付けをしてくれた。字数から見ても決して多くない歌詞だけで、本編のあらゆる事象を語りきったといっても過言ではないほどの会心的出来だ。極めてシンプルな歌詞でありながら、富野由悠季作品のなかでももっとも大きなスケールを持っている作品のテーマを上手く込めたという意味では、まさに井荻麟作詞のなかでも傑作だと言える

 また、エンディングテーマであえてこのような歌詞を一番目に持ってきて流させたのは、ザンボット~ガンダムまでの作品と違うパターンで、監督の富野喜幸が「イデオン」に対するただならぬ意欲を伺える。



 この曲が特筆なのは、なんといっても言葉の組み立てでしょう。

たったひとつの 星にすてられ
終わりない旅 君とあゆむと

 出だしからは、たった一つかけがえのない、大切な拠り所である故郷の星に捨てられ、終わりが見えない旅を強いられている。だからこそ、出会った君が持つ人のあたたかさにも縋る。

 そして、上を受けて、この詞に持ってくる。

いつくしみ ふと わけあって

 まるで落ち着いてる水面に、一滴の雫が落ちこぼれたように、「ふと」という言葉が持つ間は、これまで静的な情緒を動かす一瞬を、美しくも的確的に表した。

 しかし、いちばん素敵な一句は、なんと言ってもこれである。

傷をなめあう 道化しばい

 「傷をなめあう」とは、「似たような不幸の下にある者がなぐさめ合うこと」。「道化芝居」とは、「こっけいなしぐさやせりふで観客を笑わせる芝居」。単に言葉の意味から見れば、前者は惨めさ、後者は滑稽さが溢れている。にも関わらず、井荻麟がこの二つの言葉を繋げて用いたとき抱えているのは、ただの嘲笑ではなく、むしろシニカルだけれど、どこか悲哀や慈愛を込めているやさしさ。そんなものが感じられている。

 人と人、そして人の出会いと別れは突き詰めると、所詮こういうものだったのかもしれない。惨めで滑稽でどうしょうもなくて。そういうのは悲しいし、哀れなことだ。しかし、そういうところを含めて、人というものは慈しむのに値する愛すべきものだ。

 子供向けのアニメで、こういう人と人の世のどうしょうもなさをこうまであからさまに言い切った歌詞は、視聴者の心を揺さぶり、彼らを打ちのめした。当時の青少年たちは衝撃を受け、どう解釈すればいいのか分からず、ただ男と女の性と本質のようなものを想像しかできなかった。しかしやがて彼らが成人になり、再びこの歌詞を聴くと、今度こそそれをわかってしまうのだろう。

 一句だけで「男」と「女」、そして「出会い」と「別れ」の本質をこれ以上なく表現したこの詞は、「コスモスに君と」全曲のなかでももっとも光っている歌詞で、シンプルだけれど無限の密度を込めていることでいえば、井荻麟作詞のなかでもこれ以上のものが存在しないだろう



 曲の1番から3番目の最後は全てこれで結ぶが、これがまた味わい深い歌詞である。

コスモス宇宙(そら)をかけぬけ
いのりを いま君のもとへ
コスモス宇宙(そら)をかけぬけて
いのりを いま君のもとへ

 単純に言葉を見ると、実におかしい。なぜならば「コスモス」も「宇宙」も実は宇宙の意味だから、直接に言葉の意味を捉えると重複になる。しかし、そうではなく、前はただでかくて黒い宇宙空間を連想させるのを避けるために、あえてコスモスというやや曖昧な言い回し(SF的だし、花の名前でもある)を使い、そして後ろは富野が得意な「宇宙と書いて『そら』と読ませる」によって、柔らかくて心に響くフレーズに持ってきた。人の思い・祈りを、コスモスという無限大にも近い時空から、宇宙(そら)という人の心性が感じる景色を通して、人という限りなく小さい個体に届けるという意味が込められている

 また、この詞は単純に二回繰り返すのようだが、それは富野が作詞において多用する手法であり、実在の祈りにも通じるものがあった。その上、すぎやまこういち氏の曲によって、同じ詞でも違う感情を与えられた。一回目は高揚感を与えて、そして二回目は安堵をもらたした。作詞と作曲のシンクロの極致は、ここにあり。

 富野喜幸監督が作品に込める主張あるいは表現法はしばしば「トミノイズム」と呼ばれているが、もし井荻麟にもそれに類する「井荻イズム」とよばれるものがあれば、この曲はまさに「井荻イズム」の極致といっても過言ではない



 ところで、この歌詞の1番、2番、3番目ではそれぞれ異なる出会い&別れが描かれているが、特段に劇中の特定な対象を指していないと思われる。それでも、あえて劇中に成立しちゃったカップルから見れば、それぞれシェリルとギジェ、べスとカララ、コスモとキッチ・キッチンと無理やり当てることもできるかもしれない。ただ、実際の歌詞を吟味すると、1番~3番目はそれぞれ「生」「生き別れ」「死」を描くものと想像できるので、やはり特定な対象を指していないほうがしっくりくる。

 ちなみに本編では、3番目は第25話「逆襲のイデオン」、2番目は第31話「故郷は燃えて」、1番目は第37話「憎しみの植民星」に使われていた。


 この曲が実際聞くことができるCDです。基本的に「イデオン」に関しては総音楽集だけで十分だと思います。

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コメント
イデオン。
小説版から入って、ようやくTVシリーズをブルーレイで
観終えました。インタビュー本では作画のことが指摘されたところも
ありましたが、平成世代の私から見て、気になる作画崩壊はありませんでした。
おそらくそれは、ドラマの重厚さやすぎやまこういち氏の奏でる劇伴に
ずっと魅了されていたからなのかもしれません。戦闘シーンも見事でした。
キャストの演技…とくにギジェは良かったです。

エンディングテーマである「コスモスに君と」
音楽は非常にきれいなのに、歌詞はとてもエグいです。
本編で歌の一番が流れていた時期って、物語的にはちょうど
ソロシップクルーの結束が強まっていたところなわけで、そこで
“傷をなめあう 道化しばい”と流れる・・・。すごい発想です。
それゆえに、終盤におけるシェリルの精神崩壊は見てて辛かったです。
「逆襲のイデオン」ではキッチ・キッチンが死ぬところで、
“生きつづけたら 君はかなしい”という歌の三番。一種の倒置法と
みるべきなのでしょうか・・・? 

救いのない歌だけれども、私はこの歌が好きになりました。




ところでふと気になったのですが、 

>ちなみに本編では、3番目は第25話「逆襲のイデオン」、3番目は第37話「憎しみの植民星」に使われていた。

たしか、37話で流れたのは1番だった気がします。あと、ベスの両親が
登場する31話では2番が流れてました・・・。
黒 紅 茶 #-|2013/03/02(土) 23:25 [ 編集 ]
黒 紅 茶さん、コメントありがとうございます。ブログ時々拝読しております。

「コスモスに君と」が作品に与える影響は、おそらくご指摘のとおりだと思います。
よほどの自信作か、ガンダムと比べて挿入歌として使うことはダントツに多かったんです。
あの旋律と歌詞が一種の暗示みたいなもので、話全体を支配するところは感じられます。

>“生きつづけたら 君はかなしい”という歌の三番。
倒置法はさておき、確かに美しい旋律と歌声と裏腹に、理解不能的な衝撃ですよね。

>たしか、37話で流れたのは1番だった気がします。あと、ベスの両親が
>登場する31話では2番が流れてました・・・。
指摘のとおりでございます。というかタイプミスしました。
なぜか31話の2番と37話の1番と混同しました。直しました。ありがとうございます。
kaito2198 #L2WcHO2o|2013/03/03(日) 00:13 [ 編集 ]
『コスモスに君と』の背景には絶対、富野監督の『産霊山秘録』(半村良・作)読書体験があるはず!



……って、まあ、富野監督も当然、読んでいるだろう名作だし、読んだからには大なり小なり影響を受けているはずだろうから、鬼の首を獲ったように指摘するほどのことでもありませんでしたね。
なにを慌ててるんだ、僕。

まあ、しかし、僕の脳内大河(SF)ドラマ『産霊山秘録』のエンディングテーマは、今日から『コスモスに~』に決定しました。
starship #-|2013/04/03(水) 11:29 [ 編集 ]
イデオンは、A・C・クラーク(Arthur Charles Clarke)『幼年期の終わり』や小松左京『果しなき流れの果に』などより、ぜったい半村良の作品のほうに近しいよなあ。
イデオン/ソロシップ≒産霊山じゃんねえ……(←本当か?)。
今まで誰も、指摘したり並べて論じたりしてないのかしらん??

角川春樹も、『果しなき~』じゃなくて、『産霊山~』の実写化を持ちかけたほうが良かったんじゃないのかあ……まあ、嵌り過ぎで、それはそれで面白くないような気もしますけどね。
starship #-|2013/04/03(水) 11:43 [ 編集 ]
産霊山秘録は読んだことありませんな…。ググッたら、ものすごくとんでもない作品らしいとしか(笑)。紹介されて読んでみたい気もしますが、あのあらすじだけでめまいがするのはなぜかな。

イデオンと産霊山秘録の指摘は確かに一度も見たことありませんよな。どっちかいうとバイストンウェルの領分だと思いますし。そういや角川春樹はかつて富野監督と「卑弥呼大和」とかいうものをやりたかったんですが、あれに近いものなのかな? でも『ヤマタイカ』みたいな話だったりして。

kaito2198 #L2WcHO2o|2013/04/03(水) 12:03 [ 編集 ]
僕もこの週末に『パイの物語』を観に行きますから!!(笑

僕が『産霊山秘録』を初めて読んだのは小学生のころ。日本史の知識なんて大してない子どもの僕でも夢中になったのだから、kaitoさんなら充分に楽しめることでしょう。そして、物語の終わり近くで提示される、哀切で透明な諦観に満ちた宇宙的展望に涙するはず。
半村良の世界観・生命観、人間観(人生観や男女観)などには、『コスモスに君と』の作詞者のそれらと共通する部分が多々あります。欧米(キリスト教圏)のSF作家には無い、日本(SF)独自のものといえるでしょう。

気になって検索してみたところ、『SFイズム』という雑誌の6号で「半村良特集」と「富野由悠季特集」とが並立して行われたらしい。1983年のことです。比較検討などしてるのかなあ? ちょっと古書店であたってみますよ。

いずれにせよ
「たった一つの星に棄てられ」
「宇宙を駆け抜けて、祈りを今、君の元へ」
といった詩句の源泉(の一つ)は、ぜったい『産霊山秘録』(や『妖星伝』)ですよ!
特に「たった一つの星に棄てられ~」なんて、Spade Runawayとは相反してるんだから。

とにかく凄いんだから読みましょう! 読まなきゃ人生損するから!!
starship #-|2013/04/04(木) 13:43 [ 編集 ]
>是非お読みなさい!
>僕もこの週末に『パイの物語』を観に行きますから!!(笑
オーケー、探してみます。
ちょっと弁解させてもらいますと、日本史の知識は人並みありますよ(笑)。
半村良は正直詳しくないのですが、この本をきっかけにいろいろ勉強したいと思います。

SFイズムは面白そうですね。見つかりましたらぜひ教えてください。
kaito2198 #L2WcHO2o|2013/04/04(木) 23:03 [ 編集 ]
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