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物語が変質する

2014/01/05 17:08|富野雑談TRACKBACK:0COMMENT:0
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 物語が変質する
 2年前に考案したも、いつまでも纏まらずにそのまま放置した話ですが、せっかくなので簡単な形でさせていただきます。

 小説作品に見られる「語り口」の変化が、作品にもたらす「変質」に関する話です。



 『リーンの翼』新版小説の1巻2巻と、3巻4巻の雰囲気がまったく違うといわれることが多いです。

 もちろん、1巻と2巻の底本が旧版6巻分で、3巻と4巻は書き下ろしであったことがその一因です。しかし、曲がりにも作者が同じ作品として(修正などを経て)書き上げた内容であるにも関わらず、なぜこうも違うのだろう。

 その原因は、「語り口」にあります。

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 『リーンの翼』新版の1巻と2巻(旧版『リーンの翼』)はヒロイックファンタジー、つまりあくまで主人公一人の物語です。一介の特攻兵士が、いかに厳しい環境や異なる文化・思想の洗礼、生死の狭間にある戦いを経て、ようやく英雄となるべきの資質と了見を持つようになったのかは、この小説の何よりの魅力です。

 対して、『リーンの翼』の3巻4巻は、迫水の建国壇から地上侵攻に至る話で、物語の質からしてそもそも違います。質が違えば、語り口が変わるのもまた自然です。

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 この現象は、『オーラバトラー戦記』にも見かけます。

 1巻~4巻の「ガロウ・ラン闘争」、5巻~11巻の「オーラバトラー戦争」が物語の性質は『リーンの翼』ほど差異は無いものの、読んでみれば分かると思いますが、雰囲気はまるで違います。

 それをもらたしたのは、やはり「語り口」の問題です。前半が「ガロウ・ランと攻防が繰り広げられる物語」であるのに対して、後半が一変して「かつての味方同士が敵味方に分かれて戦う状況」から入り、だんだん「世界の理を洞察させる物語」になっていますので、「違う」「読みにくい」「ガラッと変わるな」と思われても当たり前のものです。

 これは別に作者が下手とかのせいではなく、そもそも作品上の意図なのです。



 「物語が変質する」ということでいえば、この完結できれば自然に世界レベルの名作入りの漫画もなんかそうです。

 5巻途中のエウメネスの前半生と、5巻以降のマケドニア仕官は、やはりガラリと色が変わります。「前半のほうが面白い」という声もあるとかないとか。

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 この作品に関して、前半がまったくの虚構であるのに対して、後半はわずかな断片(ディアドコイ戦争までは)を頼りに再構築するものであるから、このような異なる雰囲気になるかもしれません。加えて、仕官前のエウメネスは自由そのものだったので、マケドニア家臣としてのエウメネスと身振りが違うのは当然のことです。

 とはいえ、やはり一番感じさせるのは「語り口」の差異です。前半は全部フィクションであるため、読者はひたすら作者の「一から作り上げる力」を楽しめればいい。単純にストーリーを追う楽しさである。

 対して、後半は読者はわずかな歴史事実の断片をもとに、「行間を読む」というもう一つのロジックを駆使しなければなりません。いわば、エウメネスが一躍して歴史の表舞台の主役になってたディアドコイ戦争に起きた数々の出来事から逆算し、ピリッポスとアレクサンドロス大王の家臣であるエウメネスの人生を「想像」しなければなりません。

 一つの例を挙げてみよう。第5巻の48話では、エウメネスがプレゼントを献上するところで、入り口のところに若い貴族ら(アレクサンドロス時代の幹部)と短い会話を交えましたが、ほんのわずかなものでしたが、さっそく読者に人間関係の軋轢を感じさせてくれました(この構図は第6巻でも少し解説されて$ます)。

 匠の技である。わずか5ページで、「若い世代に派閥がある」「派閥の発言もしくは主導権やなど」「その場にいる5人のそれぞれの距離感」「エウメネスとそういう関係が無縁」。これは作品の現時点においてまったく意味不明に近い描写ですが、将来の歴史を知れば、このようなすれ違いは大きな意味を持つと分かります。

 また、第6巻では「鐙」という当時のオーパーツを使って、文官や武官の意識の違いと、エウメネスの賢明さと迂闊さを一気に描いたのも、非常に説得力があります。もちろん、行間を読まなくても楽しめます。しかし、読むとその楽しさは倍増のどころではありません。三倍のスピー…ではなく楽しさなのです。

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 作者の岩明氏はもうこの通りあのペースでしか描けませんし、その上史実をあと20年くらい描かなければなりませんので、作者にとっても、演出や描写はともかく、展開や場面に関してすでに何一つ無駄も許されない状態のはずです。なので、これから『ヒストリエ』の物語は、やはりごく自然で淡々と流すけど、よく読めばいくらでも深読みができる展開(特に人間関係の)が続くと思います。なので、このように行間を読まなければならない語り口も、やはりこれからも続くと思います。
 このようにして、「ヒストリエ」もまた終局へ持っていくために、物語を変質させてる作品なのです。



 この現象は、古典にも見られます。

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 三国志の前半と後半…というよりおそらく新野か諸葛亮こと孔明が参入前後、物語の雰囲気は大きく異なっています。

 前半が関羽や張飛などの豪傑をはじめ、「武」が目立つ時代であった。また英雄たちが立ち上げたばかりの時期だったので、人物の浮き沈みが激しいが激しく、読者にとって目まぐるしい楽しさいっぱいでした。稀代の裏切り者呂布はもちろん、公孫瓚・袁紹・袁術・孔融・陶謙などの群雄も、それぞれ読者にインパクトを与えました。

 しかし、後半の孔明登場から、戦争の仕様に関する描写が知略的なものに一変し、知恵と知恵の戦いが強調されるようになる代りに、今までの武に関する重要性が影を潜めるようになっていた(物語の味付けとして残っている)。

 いわば、三国志の前半は「戦術」の物語で、後半は「戦略」の物語なのです。

 これはもちろん色々な要素と原因がありますが、劉備を主人公とした物語ならば、この「語り口の変化」が最正解に違いませんし、このように「武」と「智」を描ききった作品だからこそ、千古に伝わる価値がある古典になれます。



 今回の「物語が変質する」という話に、結論はありません。しかし、このような語り口の変化に対する感度さえ持てば、より一層物語を楽しめるようになります。

 富野由悠季監督の小説作品に戻りますと、『オーラバトラー戦記』なんかもそうですし、『リーンの翼』ももちろんそうです。「作者の文体がー」「作者の文章力がー」とか言う前に、ひょっとしたら我々が単に読み取れなかったのではないかと自問する必要も、たまにあると思います。


 余談ですが、原典を読めば、手塚治虫の『ネオ・ファウスト』もおそらくこういう変質の物語になると予想できます。今となってはすでに無理ですが、それでもこの巨匠はいかにして変質する物語を処理するのか、実に興味深いものです。

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