富野由悠季監督とその作品をひたすら語るブログ

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富野由悠季2017年上海コミコン質疑応答 全68問

2017/11/09 23:19|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:2
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 富野由悠季2017年上海コミコン質疑応答 全68問
 『機動戦士ガンダム』などで著名なアニメ監督である富野由悠季氏は、先月10月6日・7日の二日に、中国・上海にて行われた2017上海コミコンに参加しましたが、普段お目にかかれない富野監督というスペシャルゲストの登場で、会場は大盛況でした。

 特に、元々予定された講演が、監督による鶴の一声で、すべての時間を質疑応答に当てられるため、現場のファンから次々熱烈な質問が挙げられました。二日の間、ファンミーティングおよびプレス取材が合わせて4時間弱という時間の中、富野監督は全部68個の質問を受けていました。これは日本でもなかなか無かったものです。



富野由悠季総監督の講演会&サイン会も大盛況!ポップカルチャーの祭典「上海コミコン」がスタート! | GUNDAM.INFO | 公式ガンダム情報ポータルサイト

講演会は、普段なかなか聞くことのできない話をダイレクトに聴講できる貴重な機会とあって、現地のファンで大盛況。日本語での質問も多数飛んだほか、『Gのレコンギスタ』への熱い要望も。様々な質問に真摯に答える監督の言葉に、会場からは拍手が湧き起った。






 そんな中国ならではの盛況を、日本の皆様にも知りたくて、中国ファンがまとめてくださったレポート、断片的な映像を元に、その内容を翻訳して再現を試みました。以下はその質疑応答の内容です。

 なお、読む前にお伝えしたいのは、以下の内容はあくまでも「中国ファンが中国語でまとめたレポートの日本語への翻訳」というものですので、大まかな正確性は保障できるものの、細かいニュアンスに関しては、実際の発言とは異なる可能性があります

 さらに、一部の質問応答には多少敏感な話が含まれていますが、それらについて、ここでは私個人の自主判断で省きます。ご自分で探してください。どうかご理解ください。

 それでは、スタートです。


(PART1:質問応答会10/6 13:45~15:45)

ニーハオ。
ようやく上海に訪ねることができました。本当にありがとうございます。皆様のおかげです。
一番初めに、ちょっとだけお話をさせてください。
ぼくは、皆様が生まれる前から、20数年間、毎日こういう仕事を日本国の偉い人たちに納得させるために、一生懸命にがんばってきました。なぜならば、職業として認められていないような仕事でしたからです。そして、機動戦士ガンダムという作品は40年前ですが、その時でも職業として認められていませんでしたので、そうですね、10年くらいは本当に貧しい生活をしました。
ただ、その頃で、アメリカのLAでSF大会のようなものが行われるようになって、コスプレみたいなものが行われるようになっていました。その景色を見て、とても羨ましく思いました。
ですから、今日ここにいらした皆様方がこのような景色を見るのは当たり前なものだと思っていますが、僕にしてみれば、とても羨ましく思います。
一番羨ましく思ったのは、日本人のコスプレというのはアニメにあまり似合わないものなんですが、こちらの皆様方のはものすごく格好になっているのは、腹が立つくらい羨ましく思っています(笑)。
これ以降は年寄りが話してもしょうがないと思いますので、皆様の質問を答えるという形でここからの時間を……行きたいと思っています。


Q01:
(自主判断により省きます)


Q02:
監督の作品では、主人公の両親は大抵一定の社会地位のある人たちです。また劇中ではよく親と子の衝突が出てきますが、なぜこのような設定をしたんでしょうか。
A:
いくつかの理由があります。まず、①このような設定はドラマ上の衝突を描きやすいです。それから、②社会通念上、ある程度の社会地位に付いている人間から通して、より社会全体の構造を示しやすいです。それと、③アニメを見ている視聴者は子供たちだけでなく、その親も見るかもしれませんので、親たちに作品の中に描かれたドラマの衝突を見せれば、大人たちも何か感じることがあるかもしれません。皆様にわかっていただきたいのは、親というものは往々にして子供たちの将来の道を決めたがるものですが、子供たちは必ずしもそのレールに沿って歩いてくれるとは限りません。ですから教育的な意味で、そのようなドラマ構造も興味深いと言えます。


Q03:
監督がアニメを作る時、まず主人公を混乱な状況に放り込んでから、断片的な情報を使い、物語の世界観における設定や衝突を少しすつ述べる手法をよく取っていますが、これは制作開始前から構想したストーリーテリングなんですか?監督はいかにして大きな世界観の中から、観客を引き付ける物語のスタートを考えるのですか?
A:
なぜ断片的なストーリーテリングを使うというと、自分を含めて、ほとんどの人は世界に対して表面的な認識しか持っていないからです。人間は、神の視角で世界の隅から隅まで見ることができないと思っています。
正直言いますと、今まで何十年のキャリアでは、最初に作った設定をスポンサーの意見によって改変され、物語のテーマを変更を追い込まれたというような状況は、たくさんありました。この場を借りて、商売の都合でイメージを変更させられたキャラクターに対してお詫びします。まさにそのために、10年、20年を経っても、今のような質問が出てくると思っています。しかし、ある意味、このような合作行為があったからこそ、作品がこうして生き延びることが出来たといえるかもしれません。
作り手にとっては、スポンサーからのプレッシャーで設定やストーリーを変更せざるを得ないのは、確かに敗北感があります。しかし、それは完全な失敗とは言い切れません。一人の視野には限りがありますので、アニメのような多くの人が力を合わせて作る創作では、そのような考え方のぶつかり合いは、自分の視野を広めることができますし、ある意味、自分にとって今後の精神の糧にもなると思っております。


Q04:
アニメの作り手として、もっとも大切なものはなんですか?あるいは、アニメの作り手になるには、どんな素養が必要ですか?
A:先程話していた通り、自分の視野を広げることはとても大事です。もちろん、初心を忘れず、自分の好きなものと視点を堅持するのは正しいことですが、物作りにおいては、学ぶこと、そして嫌いなものやディテールを適応・把握するのも非常に重要なことです。


Q05:
周りの人たちにGレコ、ロボットアニメを薦めていますが、よくロボットアニメはすでに時代遅れだといわれています。このような意見について言いたいことはありますか?
A:
ロボットアニメのすばらしさが分からない人たちに言える言葉は、僕にはありません。もしかしたら、5年後、10年後、その人たちは今よりGレコを理解できるようになるかもしれません。それが僕がここ2年間Gレコの劇場版に作っている理由でもあります。この作品はより多くの人に理解してもらいたいと思っております。


Q06:
中国の一部のメディアでは、放送当時Gレコを「Gの復国運動(国土回復運動)」と訳していましたが、それについて我々は到底納得できませんでした。「Gのレコンギスタ」というタイトルは一体どういう意味が含まれているのでしょうか。また、レコンギスタを漢字に表すと、どんな意味になりますか?そもそもレコンキスタとレコンギスタの違いとは?
A:
仰ったような翻訳がまったく間違っている、とは思っていません。宇宙世紀を経験した人類にとっては、千年も経てば、彼らにとって地球は自分の母国だというふうに思っていますので、「復国運動」に訳すのも、特にいけないわけではないと思います。現実からいうと、現在我々の経済体系は広い面でいうと、地球そのものを資源を搾取しているだけですが、Gレコはまさにこのように、今までのガンダムと違って、宇宙世紀の千年後の世界を描く物語なんです。


Q07:
Gレコの最後では、クリム・ニックは大統領の息子として、父を殺した行為をしましが、その原因については特に説明されていません。そのような異常ともいえる関係は、アニメにおいては適切な表現だと思っているのでしょうか。
A:
個人的にいいと思っています。アニメというものは不思議で、そのような表現でも一般大衆には受け入れられると思っております。


Q08:
1970年代の初め、『海のトリトン』を作るとき、原作に対して大きな変更をしたのはなぜでしょうか。
A:
『海のトリトン』は、原作がそれほど面白くなかったんです。しかも、原作はテレビアニメに不向きなお話でした。それに対し、映画版が最終的に過激な物語に仕上げられていたことに関しては、確かに責任があると感じました。当時、マジンガーZのようなアニメの題材の過激さもしくはデビルマンのようなストーリーには、確実に影響を受けました。

Q09:
Gレコの「クンタラ」はいったいなんでしょう。
A:
申し訳ないですが、これは人種問題に関わりますので、お返事を控えさせていただきます。


Q10:
近年では艦コレなどといったメカ娘のような題材の作品は、アニメ・ゲーム・小説に問わずにヒットしています。この現象に関して、監督はどう見ていますか?将来はこれに類する作品の制作に関わる意欲がありますか?
A:
個人的にいえば、そのような題材は好きではありません。が、そのジャンルの作品を作る可能性を否定しません。メカ、美女、野獣など、いろんな違う要素をミックスして表現するのは、昔からエンターテイメントの基本ですから、これからも続くのでしょう。


Q11:
製作側から一切干渉を受けないとしたら、Gレコの制作後、どんな作品を作りたいですか?たとえばガンダムF91とか、クロスボーンガンダムとか。
A:
申し訳ないですが、Gレコ劇場版の制作だけで、今の自分にとって精一杯なので、Gレコ劇場版の後はしばらく新作ガンダムを作る気がありません。


Q12:
逆襲のシャアという作品について、監督の心の中ではどういう地位を占めているようなものですか?
A:
困惑と感激、それとこの英雄叙事詩的なシリーズを完結させなければならない遺憾など、いろんな気持ちが入り混じっている作品です。


Q13:
振り返ってみると、日本のロボットアニメは大抵戦争の物語という形で展開されていますが、これは日本の文化と関係ありますか?
A:
それは文化と関係ない話で、理由は簡単です。アニメ業界、特に日本のロボットアニメのスタッフは、私を含めて能力が足りないからです。昔、ロボットアニメを制作する時、戦闘のシーンが無ければスポンサーと交渉できないと、我々はずっと恐れていました。


Q14:
監督はいろんな個性を持つ主人公を作りましたが、ご自分が好きな個性というのは?
A:
好みは特にありません。常にいろんな個性を持つキャラクターを作れるように頑張っております。


Q15:
(自主判断により省きます)


Q16:
アニメ監督として、ここ数十年のキャリアの中で、私たちに教えて頂けるような心構えがありますか?
A:
特別なものはありません。ただ、私程度の有名になるには、やはり運も重要だと思っております。もちろん、そのような運にめぐり合わせるためにも、毎日努力しなければばりません。


Q17:
(自主判断により省きます)


Q18:
自分の作品のなかでは、監督が一番好きなのはどの作品ですか?
A:
こういう質問には答えられません。というのは、作っている時にはいつも一番だと思って作っています。作り終わった時に、こういうふうにしか作れなかったという反省しか残りませんので、こういう個人的に一番、というものはあまりありませんし、ファンに向かって喋ってはいけないことだと思っていますので、言いません。


Q19:
日本のアニメ、特にオリジナルアニメが大衆に受け入れられてきた歴史および現状に対してどう思いますか?ご自分に何かの願望がありますか?
A:
僕の願望は宮崎駿監督に勝つことです。これは半分くらい本気な話です。


Q20:
Gレコのテレビ版ではニュータイプの描写は少ししか出てきませんでしたが、劇場版にはもっと出ますか?
A:
えっと、その質問はあまり答えたくないけれども(笑)、むしろニュータイプの話は消えると思います。というのもニュータイプのことを考えるのをやめたからです。もう40年過ぎた今でも、人類はニュータイプになれなかったんです。


Q21:
近年、3D技術はアニメ業界ではどんどん使われますが、この傾向について監督は作り手としてどう思いますか?
A:
試しに接触したこともありますが、少なくとも僕の場合は基本的に手書きをベースにしております。3D技術の持っている、実をいうと映像的にとても危険な問題があって、あまりにも自由に映像を作れるために、絵が動画になっているかどうかかなり怪しい作品が一杯出ていますので、3Dで作ることは僕自身には疑問があります。


Q22:
将来に自由にファーストガンダムのリメイクを作れる機会があれば、監督は設定などを修正するのですか。
A:
機動戦士ガンダムについて40年を過ぎているからといって、付け加える必要性があるのか、という作り直す必要があるかについては、あるとは思っていません。技術的な問題として、多少手直ししないといけないのがあるということも認めます。認めますが、作品というものがすごいと思えるのは、作品が一度作り手から離れてしまいますと、やはり独立な存在になります。作り手であっても、もう勝手に作り直していいというものではないと思います。機動戦士ガンダムはその程度の作品ですが、作り直してはいけないじゃないのと思っております。


Q23:
ガンダムオリジンについてどう思いますか?
A:
オリジンは作品として知っていますが、僕にはよくわかりませんから、見ることができないです。


Q24:
Gレコが完結したら、ガンダムじゃないオリジナル新作を作る予定がありますか?ガイア・ギアはアニメ化する可能性がありますか?
A:
先ほど上げた作品のアニメ化はないと思います。そして次の仕事があるかについては、ありそう、という形でしかいえません。制作するための出資が手に入れられるかどうかが本当に分かりませんので、フリーランスとしてはなにも言えません。ただし、今後少なくもう一本作りたいなぁという思いは、そりゃあります。


Q25:
いかにして∀ガンダムの企画を考え出したんでしょうか。
A:
ターンエーというタイトルを思いついたのは、理工系出身じゃない自分にとって大発見です。∀という記号がすべてという意味の数学の記号なんです。今までのすべてのガンダムを包むような作品を作りたいと考えました。ターンエーに関しては、ターンエーガンダムはターンエーガンダムになったんだろうかというと、実をいうとちょっと狭い作品にしてしまった反省がありますが、未だに多くの人に愛されていることに関しては、とても嬉しく思います。


Q26:
ガンダムシリーズでは、大人と、子供と、両者の間の関係を描く話がたくさん出ていますが、日本アニメの大人と子供に関する描き方についてどう思いますか?
A:
Gレコの前に僕じゃない人の作ったガンダム作品はすでにいろいろありますが、大人向けのガンダムというものは、ある意味「アニメを作る」ということから偏っているのではないかと思っております。先ほどニュータイプの話が出てきましたが、その言葉を作ってから40年に経っても、やはり人類は革新しないという事実もありました。そしてターンエーガンダムを作ったときは、20年以来全部のガンダムを総括したと思ってやったわけですが、失敗しました。
つまり、自分が大人になってから、ニュータイプ的な革新があるとは思えなくなった。そういう覚悟もありますので、Gのレコンギスタを作るのにあたって、どうしょうかと考えた結果、ガンダムワールドの時間を千年飛ばすということを考えました。つまり一度地球というものはもう人類が使えなくなるくらいに荒れた星なんだ、だけどそこから再生する人類がいたんじゃないかというふうに設定した時に、今までのガンダムと違うものが作れるんだろう、と。現代社会に起きた様々な問題を解決するには、現在の大人というものがしても間に合わないじゃないかと思っていますので、子供たちに分かってもらいたい、今の我々の地球の問題を考えてほしいと思って、子供向けの作品にしたわけです。
皆様方は大人になった、大人になりつつあるのですが、現状を皆様の世代で全部解決するとは思えません。だから、それを描くために、1000年後のことを描きながら、現在の問題点を過剰的に並べたというふうに思っています。だから!Gのレコンギスタを見てくれた皆様方のお子さんたちが「なんだ、この変なアニメなんだよね。何が問題なのだろう」と考えながら、現在の問題を解決していくという願いを込めたのは、Gのレコンギスタという作品だと思っています。


Q27:
富野先生は作品のテーマソングのための作詞をよく行われておりますが、僕の一番好きなガンダムの歌はTM NETWORKの「BEYOND THE TIME」です。作詞は小室みつ子先生ですが、その歌詞は監督が決めたものだとインターネットに書かれています。これは本当のことなのでしょうか。また、「逆襲のシャア」は本編では恋愛に関してそれほど描かれていなかったものの、テーマ曲には「YOU BELONG TO ME」や「I BELONG TO YOU」など曖昧な関係を匂わす台詞がたくさん出ています。ここでの私とあなたはアムロとシャアのことですか?
A:
違う違う(笑)! 当時の小室哲哉さんはすでにヒットメーカーでしたので、こちらの意見なんて聞くわけがありません。先ほど仰った内容は、半分くらいは嘘です。


Q28:
あらゆる外の制約がないとすると、一番素敵なガンダムはどれだと思いますか?
A:
1/1ガンダム立像のファーストガンダムです。


Q29:
監督のいろんな作品にはマスクしているライバルが出てきますが、それはなぜですか?
A:
40年前に、安彦というやつが勝手にシャアにマスクをつけた上、絶対キャラクターデザインを変えてくれなかったからです。その後、マスクをしていないキャラも作っていましたが、エンターテイメントというのは不思議で、マスクをしているほうが分かりやすいですので、今はとても好きです。


Q30:
Zガンダム劇場版の時、シャアのダカール演説などといった重要なシーンは削られましたが、それはなぜですか?Gレコ劇場版には同じようなことがありますか?
A:
申し訳ないですが、時間制限のある映像作品では、監督としては取捨をしなければなりません。取捨においてはえり好みをしないつもりだったんですが、その結果は皆様のご覧の通りです。なお、Gレコの劇場版では、重要なストーリーが削られるような状況は起きません。


Q31:
ガンダムZZや∀ガンダムなどの作品では、男性の主人公が女装をする描写が出てきますが、それは監督の趣味ですか?
A:
正直申し上げますと、女装という行為は大好きで、僕自身も女装をしたことがあります。これに関しては、誰の指図も受けません!(笑)


Q32:
監督の作品では、いろんな女性が描かれています。女性に対する見方は、年齢の変化とともに変わるものですか?70歳以降、女性に対しては何か新しい理解や認識がありますか?
A:
基本的に、アニメに限らない話ですけれども、特にアニメ的な作品では女性というものを極めてステロタイプに描かれているのは腹が立っているので、本当に意識して、いろいろなタイプの女性を描くことに心がけました。そして70歳を過ぎてから、女性に対する新しい発見は基本的にありませんが、僕本人は女性の持つ多様性、対応性、それから男性に比べて感性が強いということに、やっぱり男性としては理解できないけれども、とても好きなのです。


Q33:
Zガンダムの劇場版のラストはテレビとだいぶ違いますが、当時はこうした変更ではZZの物語上の繋がりとの矛盾を考えたことがありますか?
A:
申し訳ないですが、そこまでは考えていませんでした。


Q34:
Gレコはこの前にTVシリーズのほか、Gセルフとユニコーン3号機と戦うといった、長さ9分のプロモーションアニメがありました。そのアニメが制作された理由とは?
A:
もちろん、販促のためです。見ればわかるでしょ?(笑)


Q35:
ガンプラやロボットのプラモは単体のほうか、それともジオラマのほうが好きですか?
A:
直接お答えできないのは、プラモデルの歴史を知っている年齢ですので、40、50年前のミリタリープラモデルでも同じようなレベルの、つまりオリジナルキャラものを作れるようになってほしいなと願ってきた人間です。ですから、ガンダムのプラモデルのようなものが出て来ることに関しては、個人的に嬉しく思っています。ですから、現代のモデル、つまりフィギュアはどうもミニチュアモデルとしては完成度がだいたい出来上がってしまったので、これ以上の仕上げは必要だと思っていないという立場です。
勿論、ジオラマを作りたい気持ちはよく分かるつもりですが、長い歴史を持つ日本の鉄道模型の界隈を見れば分かるとおり、あの人たちにとって複雑な模型を作ることは、年齢の成長や結婚を経て、そのような行為自体は、日常生活を地獄にするような体験になるしかないと思います。


Q36:
監督の今までの作品は、だいたい正統派のスペース・オペラに分類されていますが、近年の人工知能の急激的発展は、社会でも広い討論になっています。便利だと指摘する一方もあれば、脅威だと説いている意見もありますが、監督はAI産業の進歩についてどう思いますか?その題材を与えられたら、どう作りますか?
A:
IT産業の進化については、聞き及んでいます。ただ、今の僕にはそのような時代が来るのを想像できません。ただ、今言えるのは、技術の進歩は必ずしも人類全体の幸福に寄与するわけではないです。僕が考えているのは、主に資源の有限性とマクロ経済の運営の間の矛盾ですから、千年後の人類が地球を再興するGレコという作品を描いたわけです。


Q37:
人と人のわかり合いはどこまで進化できると思いますか?
A:
申し訳ないですが、これに関しては、皆様の世代ではまだ無理だと思っております。それはとても残念なことですが、50年、100年以後の世代はどこまでやってくれるかを、見せてもらいましょう。


Q38:
まだ中国に来てくださいますか?
A:
生きていれば、機会があれば訪れたいと思っています(笑)。


(PART2:プレス取材10/7午前の部)

Q39:
監督のロボットアニメでは、ロボットは人が乗って操縦するものですが、AI搭載自律型ロボットが出るようなロボットアニメを作りたいと考えたことがありますか。
A:
今までの日本のロボットアニメは、大半は人間が操縦するものです。自律型ロボットの出現は果たしてどこまで進歩といえるかどうかについて、まだ見極めないといけない問題だと思っています。


Q40:
最近のガンダムシリーズの新作は大抵シリアスもしくは悲劇を題材にしていますが、一般観客はそれほど興味を示してくれませんでした。このような変化について、監督はこれからどう対応するのでしょうか。時代の流れに追うか、それともこれからも反戦を題材とする作品を作りますか?
A:
ここ10数年のガンダムのアニメに関して、私は基本的に参加していませんので、評論することができません。では、自分が作れる新しい作品はどういうものかと考えて、Gのレコンギスタを作ったんです。Gレコが最終的にガンダムにつけたのは、ビジネスの思惑です。ですから、Gレコは最近10数年の他人の作ったガンダムとはかなり違います。今日ここで、この会場にいる若者の皆様を見て、改めて伝えたいのは、私はもう過去の人間です。しかし、皆様はまだ若いですから、皆様の中からは、未来の役に立つ創作者が出て欲しいと思っております。これをあらかじめ伝えないと、Gレコを理解するのはとても難しいと思います。
それともう一つ、先ほど話した内容について、皆様には分かって頂きたいのは、日本のアニメの歴史はすでに50年を越え、当時と今に比べて、状況はすでに大きく変わっています。ですから過去の状況をよく知っていた僕にとっては、今のアニメはまさに宇宙人のような不思議なものに映っています。そういう意味では、今の自分はアニメの作り手としては果たして及第しているかどうか、自分でも多少疑念を抱いています。これからの話も、以上を踏まえて回答させて頂きます。


Q41:
虫プロに入って、手塚治虫先生から受けた一番大きい影響とは?
A:
50年前、虫プロに入って仕事を始めた時に学んだのは、手塚治虫はアニメーションをわかっていない人間ということです。しかしながら、いかにストーリーを創作する、そして創作において自由度に関しては、確実に手塚先生から教われました。


Q42:
ファーストガンダムに触れたことのない若い観客は多くありますが、このような人たち――特に日本の観客にとって、Gレコのストーリーは受け入れやすいものですか。
A:
日本の若い人にとって、Gのレコンギスタはそんなに受け入れやすいものではなく、難しい作品のようです。また、今までのガンダムファンにとってもまったく違う作品であるため、やはり受けやすくなかった。しかしながら、逆に今までのガンダムに詳しくない若者の一部の間から評価され始めているらしいという感触を、おおよそ1年前から感じております。


Q43:
昔、『宇宙戦艦ヤマト』の劇場版が上映された時、人々は徹夜でチケットを購入していたと聞きました。実際に当時を経験した者として、当時そのような話を聞かされた時、どんな気持ちだったんでしょうか。また、その後のガンダムの制作について、何か影響がありましたか?
A:
その時、アニメは完全に青少年に受け入れ、新しい市場がようやく開いてくれたと感じました。あの頃はすでにファーストガンダムの制作が始まった頃で、時代の流れとしてはとてもいいものだと思いました。そして、ファーストを作るとき、意識的にヤマトと違い、ヤマトほど日本人のポピュリズムに迎合しない作品を作ろうと考えました。しかし具体的な影響となると、それはまた難しい話だと思っています。


Q44:
未来については、これから管理すべき、もしくは期待できるものがありますか?
A:
未来の世界を想像するには、現代人の持つ「管理」という概念だけで見るのは、少々視野狭窄だと思いませんか。つまり、今日までの物差しで未来を測るのは、あまり上手なことではないと思っております。ガンダムシリーズの言葉でいうと、それがオールドタイプ的な考え方に留まっていると思いませんか。
ただ、そうはいっても、管理する必要はないとは言っていません。地球という惑星には限界があるため、その上に生きながら搾取する我々にとっては、すでに地球全体を管理しなければならない時代に入ってきていると思っております。そういう意味での管理は、一番大事なのは人口への削減です。そうは言いつつ、今の日本でも2050年くらいになっても、今の日本人は半分以上生きています。こういうマクロ的視点での高齢化社会は、やはり今一番緊迫の人口削減の課題とは、根本的な矛盾を抱えています。でも、今の我々はこういう矛盾を解決する方法論を持っていますか?
こうしたように、過去のガンダムシリーズの方法論で作ると、出てきた作品は、いろんな現実問題を孕んでいるような頭痛くなる内容になるしかないです。それに関して、僕自身もやはり自覚がありますので、先程も、果たして私のような人間は今日みたいな会場に来るべきかについて、やはり考えました。ここは純粋にエンターテイメントを享受する場所だと思っていますので、先程話していた非常に現実的な話題は、ここで話すのは相応しくないと思っております。


Q45:
歴史に名を残るアニメには、どんな要素が必要なのでしょうか。
A:
アニメは娯楽媒体であることを考えると、面白ければいいという言い方があります。どんなジャンルの作品は歴史に名を残るかに関しては、やはり面白ければいいわけですが、ではどんな面白さが必要か? それは説明できるものではありませんので、答えられません。


Q46:
ガンダムが作られてから、いまだに愛されている原因を教えてください。
A:
私が分かるわけないでしょ(笑)! 僕はガンダムシリーズを作った一番の当事者ですが、ここにいる皆様には、どうして今日は私なんかへ取材のためにここに集まってくれたと、逆にお聞きしたいくらいです。


Q47:
ファーストガンダム上映の際、新宿駅の前で2万人の観客に向かって「新世紀アニメ宣言」をした富野監督ですが、当時のご心境はいかが?
A:
正直、そういったビジネス先行のイベントには、とても嫌悪感を持っていました。つまり、商売のためにあれくらいのファンを集めたことに関しては、ものすごく抵抗感があって、とにかく怒りました。とはいえ、こちらもアマチュアではなかったため、司会の進行の下で、「新世紀アニメ宣言」をしました。やはり、自分が道化だと感じましたね。ただ、そうはいっても、今の皆様のように集まってくれた当時の若い人たちが、新宿駅という極めて公的な場で、あのようなイベントをやってくれたという事実に関しては、今でもすごく感激しています。当時は、このようなファンたちは、時代変化の最先端にいた世代だろうと思いました。そういう意味では、当時の自分が道化を演じようと、あのような光景を見せてくれた2万人のファンに対しては、ものすごくありがたく思っております。だから、今日のこのような場面もそうです。上海という大都会でこのようなイベントをやって、皆様のような若い人たちがここに集まってくれたのは、やはり時代が変わったと実感させられました。これはとてもいいことです。皆様の今の年齢は、40年前新宿駅に集まってくれた若者たちとはちっとも変わっていません。しかし、日本と違うのは、上海、そして7年前の北京では、アニメはいまだに広い意味的に大衆に受け入れられているわけではなく、皆様のような一定の知性を持っている人たちに支持されているわけです。果たして、そのような時代はいつか来るんだろうか?


Q48:
富野監督はご著作の『映像の原則』では、アニメ制作においては、強すぎるアニメーターも弱すぎるアニメーターもあってはいけないと述べられていましたが、今までのアニメキャリアにおいては、長浜忠夫氏もしくは板野一郎氏といった天才アニメーターたちとはどうやって仕事してきたんでしょうか。
A:これはとても難しい質問です。アニメの原画アニメーターは、いわば実写映画の俳優にあたる存在です。いかに才能を発揮させるのは、永遠の課題といえます。演出家やプロデューサーにとって、いかに適切なアニメーターを集め、チームとして統合させるのは非常に難しいことです。そういう意味では、個性のある声優やアニメーター、デザイナーは、私にとってはとても素敵な存在だと思っています。アニメ作品を作る時、いかに個性のある人の才能を引き出しつつ、ひとつに纏め上げるのはとても難しいことですが、逆に、アニメや映画というジャンルでは、纏め上げる状況次第でいくらでも違う作品を作ることができる、という考え方もあります。作品というものは時折予想以上の効果を生むものです。そういう意味では、スタジオの中だけでも話せることがいっぱいありますし、そういう視点から見ると、今後の制作に役に立つ方法を見つけ出せるかもしれません。


Q49:
(自主判断により省きます)


Q50:
一般的に、個性がありすぎる作品は、ファン以外の観客にも広められることが難しいと思われます。今の観客の審美眼は、Zガンダムの時代に比べて、どんな変化があったと思いますか?
A:
皆様には気をつけて頂きたいのは、今の皆様はまさにその日本アニメの観客なんです。皆様の世代というのは、小さい頃からアニメに触れて、何の違和感もなく、そのまま大人になったものなんです。これは必ずしもいい方向に進んでいると言えるわけではありません。社会性という意味では、問題を抱えている世代を産んでしまったのではないかと、いつも心配しています。ですから、先程壇上で言っていたように、もうこれ以上好きなものだけを追うのはやめてください。もっとたくさんのことを見て、学んでください。これはとても大切なことです。


Q51:
少し前に、監督のお孫様は『ラブライブ』がお気に入りというニュースがありましたし、監督ご自身も作品について評価しているようです。日常生活では、お孫様に自分はガンダムシリーズの監督と伝えたことがありますか?また、ご自分の監督したガンダム作品を見せますか?
A:
そんなことを言った覚えはありませんよ(笑)。ガンダムは知らないと思います。しかし、それでいいと思います。私程度のアニメ制作者は、常に自分の作品を数千万人が見てくれると期待していますが、それができませんので、それについてはいつも悔しく思っています。悔しく思っているからこそ、この年になっても、アニメを作っています。そういう意味では、アニメという媒体がようやく大衆に認められていることについては、とても感激だと思っております。


(PART3:質問応答会10/7 11:00~11:30)

Q52:
いろんなガンダム関係のアニメやゲームでは、アムロとシャアの関係が描かれていますが、この二人の関係は親友といえると思いますか?ララァとこの二人の関係について、今の監督はどう見ていますか?
A:
確かに、これらのキャラクターは僕が作り出したものです。常にいろんなキャラクターを作るように心がけている僕にとっては、このようなキャラクターを作れたことに対しては、とても満足していますし、感謝もしています。しかし、作品が完成した瞬間、フィクションのキャラだろうと、独自な主体性を持つようになると認めざるを得ません。ですから監督であっても、あの三人の今の関係についてはよく知りません。「千人の読者があっての千個のハムレットだ」という言葉があるように、皆様には個人の理解に留めていただければいいと思います。


Q53:
監督は女性主人公の作品を作ると考えたことがありますか?男女の間の恋愛話じゃなくても。
A:
ファーストガンダム以前は、そのような経験がありました(注:『ラ・セーヌの星』のこと?)。男性として、男の意識を持ちながら、ドラマを通して女性主人公ものを作られるのは、作り手としての性能だと思っております。そうはいっても、40年間もロボットアニメをやってきた演出家として、女性を主人公とする恋愛ものを描ける才能が、自分には足りているとは思っていません。そういう意味では、確かに敗北感を感じました。男女の間じゃないラブストーリーに関しては、それはあまりにも深い話題であるため、ここでお答えできません。


Q54:
監督は過去のインタビューでは、アニメの作り手は大衆に向けて、露骨すぎる形で自分の思いを押し付けてはいけないと仰られました。しかしながら、監督とは同時代の演出家であり、サンライズでの同僚である高橋良輔監督はそのへんについて、やはり富野監督とは違う方法論を取っております。そのへんの差異については、監督はどう思いますか?私見ですが、たとえば『ガサラキ』と「Gレコ」は、ストーリーテリングにおいては一致する所が多く見かけると思いますけど。
A:
申し訳ないですが、この質問はあまりにも複雑ですので、ここで返答を控えさせていただきます。


Q55:
監督は将来ほかのジャンルのアニメを作る予定がありますか?
A:
申し訳ないですが、これは答えられません。40年間もロボットアニメを作ってきた身として、他のジャンルのアニメを上手く作れるとは思っていません。


Q56:
監督のお歳を考えて、ご自分の後継者を指名するつもりはありますか?たとえば創作の理念、あるいは演出・コンテの技法において、とか。
A:
申し訳ないですが、それはどうしょうもないことです。今までは確かに何人かに期待していましたが、やっぱりそのような人はついに現れませんでした。結論からいえば、アニメ監督や演出家の創作における理念や技法といったものは、あくまで一代限りの産物でしかないかもしれません。


Q57:
第二次世界大戦以降の日本の文芸作品では、ゴジラやガンダムなどの巨大存在が現れるようになっていましたが、そのような巨大な存在への憧れは、日本戦後数十年の大衆文化を貫いたと言えます。創作者として、監督はこの現象についてどう思いますか?
A:
日本は多神教の国家であると同時に、昔から多くの日本人が仏教を信じて、たくさんの大仏像を作ってきました。ですから今の質問はおそらく民族性における心理と関わる話で、僕も日本人ですから、ものを作る時はもちろん自分の心に従ています。


Q58:
(自主判断により省きます)


Q59:
アムロとシャアのは、ファースト、Z、逆シャアという3つの時代では、明らか違う関係性を呈していますが、この3つの時期におけるシャアの心境の移り変わりについて、監督はどう見ていますか。
A:
先程もお答えした通り、シャアというキャラクターについては、もう言うことがありません。シャアのイメージに関しては、全肯定でも全否定でもいけません。技術的にこのキャラに関しては、もうちょっとやりようがあったかもしれませんが、結果的にこの程度のキャラクターしかできませんでした。そういう意味では、戯作家としては失敗だと感じています。キャラクターとしてのシャアはすでに独立な人格を持っておりますので、皆様も自分なりに認識、解析してあげてください。


Q60:
富野監督は1975年の頃、『勇者ライディーン』の制作のために『小さなバイキングビッケ』のオファーを蹴ったんですが、今から振り返ると、もしもう一度選ぶことができるなら、『ビッケ』を選びますか?もし選んだら、どうやってこの作品を演出するのですか。
A:
今振り返っても、そのような選択はしません。『ビッケ』は原作ものであるのに対し、『ライディン』はオリジナルの企画でしたので、オリジナルのほうを選ぶに決まっています。


Q61:
∀ガンダムのデザインについてどう思いますか?
A:
最初に∀のデザインを見た時、とんでもないものだと思いまし。でも、ずっと眺めると、このような奇天烈なデザインを受け入れざるを得ないと思うようになりました。∀ガンダムのデザインに関していうと、今までのロボットアニメみたいにSF一辺倒ではなく、むしろ劇中のディアナやロランたちみたいに、人間の感性を体現していると思います。


Q62:
アニメを作る道を選んだ理由はなんでしょう?アニメと実写についてどんな違いがありますか?
A:
アニメは好きで選んだ道ではありません。最初に虫プロに入ったんですが、必ずしもその創作体制を完全に認めるわけではありません。しかし、自分の好き勝手に作っても、必ずしも最善な結果になるとは限りません。嫌いなこと、苦手なことに適応していく過程の中だからこそ、自分の能力を伸ばすことができます。改めて振り返ると、虫プロにいた間、確かにそうでした。アニメも実写映像作品も、複数人によって作られる芸術ですが、両者には優劣がありませんし、正解もありません。ただ、人は自分それぞれの考え、路線で作ればいいと思っております。


Q63:
Gレコでは、監督は次の世代の考え方を拓くための「種子」をたくさん埋めています。一方、現代社会のスピードがどんどん早くなる中、我々も心の癒やしになる作品をより強く求める傾向があります。富野監督のガンダム作品以外、観客の心を豊かにできるようなオススメ作品がありますか?
A:
申し訳ないですが、今の流行については、年寄りとしては本当に理解することはできません。ですから、具体的なオススメはできません。ご自分でお探しください。たとえ一時、間違った選択をしたとしてもかまいません。ちゃんと修正すればいいんです。皆様の中の過半数がこうするだけで、広い意味では、長期的に人類全体の進化にも繋がります。すでに自立した大人として、皆様には自分の評価と基準を持っていただきたい。そして、引き篭もらずに、できるかぎり自分の視野や見識を広めてください。シェイシェイ!


(PART4:プレス取材10/7午後の部)

Q64:
今回の上海コミコンに来てくださあったきっかけは?ここ数日でのご感想を教えてください。
A:
今回のコミコンに限っていえば、話題をガンダムに限定すると、ちょっと狭いと感じています。今回のコミコンはプラモやガレージキット方面の展示を偏重しすぎるきらいがあって、他に盛り上がるところが見かけないことには少し残念だと思っております。そして、大人の立場として少し言わせてもらいますと、ガレージキットはアニメ、漫画界隈から発展してきたとはいえ、基本的に彫刻の一種です。今日のように、会場にはいろんなガレージキットが見かけますが、正直に言いますと、ガレージキットの製作というものには限界があるのに対し、漫画は本当にとても不思議なものです。漫画は一見すると、単純にストーリーを伝えるだけに過ぎません。しかし、読者に対して、ファンに対してメッセージを伝える能力においては、ガレージキットよりも、漫画のほうが圧倒的に強いです。そういう意味では、このようなアメコミが集まっているコミコンでは、もっと賑やかなものに出来たはずなのに、それができなかったことに関しては、少々残念だと思っております。ですから皆様に考えてもらいたいのは、今の彫刻、舞台劇といったアートの形式を、いかにしてより広い大衆に伝えることです。これに関しては、これらの芸術の歴史を振り返っていただければ、ご参考になれると思います。


Q65:
富野監督は昔実写映画に出演し、また作詞もしております。これらの活動はアニメ制作とはどこか違いますか?
A:
もちろん違う所があります。芸術創作のあらゆる形式に手がけるのは、創作者にとって危険で難しいことですので、うかつにやってはいけません。
今の話、テレビアニメ畑から劇場アニメに携わったと話にも共通しています。僕の時代では、このようなことをやった人はいなかったので、試しにやっていただけのことです。そしてそのような試しが珍しくなくなった今では、若い人たちには私を含めた先人の経験をベースに、自分の選ぶ道を熟考してもらいたいです。


Q66:
近年の日本では、アメリカ発のネットフリックス社はどんどん各アニメ会社の有名作品に関する放送権を買い取っていますが、これは日本アニメの新世代が訪れるきっかけになると思いますか?
A:
申し訳ないですが、今のアニメは基本的に見ておりません。このようにインターネットを通してアニメを配信する方式は、私があまりインターネットに触れていませんので、今の状況はよく分かりません。ですから申し訳ないですが、本当に答えられません。ただ、歴史を振り返ると、放送媒体の形式は常に変わっているものです。フィルムがあったから映画が生まれ、地上波があったからテレビ放送があるように、インターネット配信の台頭に関しては、新しいビジネスの市場が開かれたかもしれないと感じています。そうはいっても、放送媒体の変化あるいは市場規模の拡大は、アニメそのものに対しては確実な良い影響も悪い影響もないと思っています。むしろ、このアニメ・漫画が当たり前だった世代に生まれた観客たちにとって、それらの存在が当たり前だと思っているために、そのような芸術形式から新しく生まれるものがあるか?これに関しては、個人的には多少疑問を抱いています。
しかし、それでも、人類という生き物は全体的に見るとすごいというのは。時代の変化と共に、新しい才能を持った人も常に出てきます。ただ、これは時代が自動的に変化するというより、新しい才能を持つ人の出現が、時代に変化をもたらしたと考えています。僕自身の現在の立場でいえば、新しい才能を持つ人の出現を支えるために、今ここにある現状を守りたいと思っています。しかし、才能の誕生はやはり生半可なものではありません。大ヒット作品を作った人でも、芸術において優れた作品を残した人でも、必ずしも才能を持っているとは限りません。いずれにせよ、どんなものに関しても、単一の基準で人の才能の有無を判断できず、必ずみんなの視点から見極めないといけません。才能のある人の出現を支えるためには、きちんと対処しなければなりません。これはとても複雑な問題ですので、これ以上は説明できません。


Q67:
ガンダムシリーズの一般大衆にもたらせているイメージは、なぜメカにだけでなく、脚本やセリフにも波及を及んでいると思いますか?
A:
アニメというものは突き詰めると、映画です。アニメという媒体で映画を表現するのは、正直いうと、創作においてはとても自由なことなんです。そして映画でいえば、演劇・物語の一種ですので、メカだけで、一つの物語を作れると思わないで頂きたい。物語を作り上げる要素は、必ず「人間」でなければなりません。どういうことかというと、観客も人間ですから、ストーリーで楽しませて、共鳴をさせ、支持を貰えるような物語であれば、その物語は絶対単一な印象しか持っていないようなものじゃないです。メカだけ、メカニックデザインだけに熱中する人は、ただのマニアックなオタクですから、オタクだけを相手にすると、ビジネスには成り立てません。
ですから、ロボットがあろうか無かろうか、「キャラ」は絶対必要です。そうはいっても、巨大ロボットアニメが好きな観客から話を伺ったことがありますが、彼らの意中の監督でなければ、ロボットアニメを作れないということもわかりました。しかし、この質問は掘り下げるととても複雑になりますので、ここまでにしときます。


Q68:
監督の作品の世界観においては、いつも不思議なものが登場しています。たとえばスペースコロニー、それからドームポリスなど、このようなアイデアはどこで得たものですか?
A:
僕の作品に関していうと、SFのフィーリングのある設定は、基本的に子供向けの雑誌を参考した上で作ったものなんです。ですから、必ずしも僕が一から作り上げたわけではないです。この話題を語る時、皆様はご自分で1950年代、60年代のSF作品がいかに退屈だったことを体験すべきです。僕が小さい頃、自分の好みだけで選んで見たSF映画は、僕にとって大抵つまらない作品でした。そして中学、高校に入ると、それらの映画がつまらなかった理由は、当時SFを作る映画屋はSFにしか興味がなく、映画を本当の映画として作っていなかったとはっきりと意識するようになりました。ですから、先ほど皆様が言ってたSFのフィーリングのあるギミックは、あくまでドラマに必要であるために入れたものであって、ユニークなSF設定を作りたいがために入れたわけではありません。
ところで、プレスの皆様にお聞きしたいですが、今この場でガンダムシリーズのミノフスキー粒子の設定をご存知している人は何人いますか?……(少し見て)知らない人は大半のようですので、少し解説させていただきますと、宇宙世紀のガンダム作品では、作戦開始前にはミノフスキー粒子というものを散布する必要がありますが、これは当時巨大ロボットを目視距離内に戦わせるための設定です。これがないと、レーダーが作動している状況では、敵味方のキャラとメカを同時にスクリーンに映すことができません。つまり、僕はドラマを作り、衝突を作り、人と人のめぐり合いと殺し合いと愛し合いを描くために、ミノフスキー粒子を設定したわけです。このような方法論の順番は勘違いしないで頂きたい。このことを、ロボットアニメのメカニックデザインをする人もよく忘れます。また、ホラー映画において、このことを忘れて、ひたすら怖い雰囲気を作ることに腐心する製作者もいます。だから、アニメ、漫画だけが好きな人、他のジャンルから学ぶ能力のない人は、作り手にはなれません。今の話は、ぜひより多くの若い人たちに届いてください。






 この全部20000字の長編レポートはいかがでしょうか。ご意見ご感想があれば、ぜひコメント欄か、TWITTERにて教えてください。

今川泰宏監督「Gガンダムに対する意見? 富野さんは同じ監督として他人の作品を批評しない人ですよ」

2015/11/04 18:38|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:0
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 今川泰宏監督「Gガンダムに対する意見? 富野さんは同じ監督として他人の作品を批評しない人ですよ」
 今川泰宏監督は、日本のアニメーション演出家です。ケレン味溢れる演出として有名で、もっとも著名な監督作品はガンダムシリーズのなかでも異色な『機動武闘伝Gガンダム』です。いわゆるロボット御三家である「ガンダム」「マジンガー」「ゲッターロボ」を全部監督した稀有な一人でもある。

 また、あまり知られていませんが、今川監督に対して、海外にはひょっとしたら日本以上熱狂的なファンがたくさんいます。特に『機動武闘伝Gガンダム』は、多くの海外観客にとってはガンダムとしてのファーストインプレッションでした。

 そんな今川氏と『Gガン』に関して、富野由悠季監督に絡む話を一つ紹介したいと思っています。



 Pacific Media Expoという、毎年アメリカに開催されるアニメ博覧会では、アニメーションの先進国ということで、日本からの専門家や関係者は招聘されますが、今川監督も2011年のとき、ゲストの一人として渡米しました。そこで、パネルおよび取材に対して、今川さんは珍しく富野由悠季監督に関する発言をしました。

 以下は、その内容です。

質問:今川さんは先ほどのパネルで富野監督は自分の先生の一人だと仰られましたが、富野監督はGガンダムに対してどう思っているのですか?

今川:あまり、ちょっと直接に聞いたことないんです。富野さんはね、昔、ぼくが始めて監督をした時もそうですけど、他人の作品に関しては語らないですよ。それは知らないよということではなくて、同じ監督として人を批評する立場ではない、ということですね。
 自分の作った作品ならばなんでも言えますけどね。あの…人のものをどうもこうも言ってもしょうがなくて…(笑)。そういう資格はクリエイター同士の間には無いんじゃないのっていうようなことを仰ってたと思います。




28:39-30:11の間がその質問です。

 富野監督が『機動戦士Vガンダム』の後、新企画の監督として今川さんを推薦したのはあまりにも有名な話です。しかし、以上の話を読めば分かるとおり、富野監督はそんな作品に対して一切批評もしませんでした。その理由は今川さんが仰ったとおり、自分の立場にわきまえて、責任をちゃんと持っている方ですから。

 また、パネルでは今川さんは富野監督が自分の師匠の一人とも発言しました。これも単純な事実ですが、やはりこうして本人の口から聞けたのは、とても有意味なことだと思っています。



 今川さんは現在54歳。そして富野監督は明日で74歳。今川さんはもちろん、富野監督も未だに創作の最前線でがんばって、今は『ガンダム Gのレコンギスタ』の劇場版を準備しています。二人はこれからもどんな活躍を見せてくれるのか、期待すると共に最大限の応援をしたいと思っております。

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史上初! 富野由悠季が書いてた脚本数を数えてみました

2015/04/03 23:50|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:3
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 史上初! 富野由悠季が書いてた脚本数を数えてみました
 富野由悠季はガンダムシリーズの生みの親で、日本アニメーション業界の重鎮にして現役の映像演出家である。

 富野氏は50年のキャリアのなかで、とにかく驚くほど多い映像の設計図ともいえるべき絵コンテを手がけました。、アニメーション業界でも、コンテ「(絵コンテ)千本切りの富野」と呼ばれるほど、半ば伝説的な扱いを受けています。実際の数字に関しては、ここを読んでください

 一方、富野氏は映像演出家ですから、映像の文芸的部分に関する専門的な教育と訓練を受けたことがありますし、当然、脚本も書きます。しかし、そんな富野監督が書いた脚本数に関しては、今までおそらく誰も数えたことがありませんでしたので、以下で試しに数えました。よろしくお願いします。



鉄腕アトム:16本

96、98、128、131、133、138、139、149、156、163、173、179、181、183、188、192

無敵鋼人ダイターン3:1本

34

機動戦士ガンダム:1本

14

聖戦士ダンバイン:1本

機動戦士Zガンダム:22本

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、21、22、23、27、31

機動戦士ガンダムZZ:2本

44、47

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア:1本

機動戦士ガンダムF91:1本

闇夜の時代劇 正体を見る:1本

バイストンウェル物語より ガーゼィの翼:3本

1、2、3

スーパーロボット大戦 プロモーション:1本

ブレンパワード:10本

2、3、6、7、10、12、15、16、19、23

∀ガンダム:1本

35

GUNDAM EVOLVE 5:1本

リーンの翼:6本

1、2、3、4、5、6

リングオブガンダム:1本

ガンダム Gのレコンギスタ:26本

1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26

 作品のタイトルなどを観察すると、当たり前な結論ですが、富野監督が書いた脚本は大半自作におけるものでした。一方、日本初めての30分連続テレビアニメ『鉄腕アトム』でも、16本の脚本を書きました。このへんの事情を『だから僕は…』などを参照すると、より面白くなるかもしれません。そして『Zガンダム』と最新作『Gレコ』では、それぞれ1/4ほどを占める脚本を書いたのです。

 なお、以上の数字を全部足すと、105になります。つまり、富野由悠季監督はこの50年間書いたアニメの脚本数は、105本です。絵コンテに比べてだいぶ少ないですが、それでも並以上の量があります。

 当然、数字は特に何を意味するものではありません。特に富野監督の場合、原作者として大元のストーリーまで作ったんですから、当然そのへんの意味は個別話数の脚本より遥かに重要なのです。そういう意味では、ストーリーを語りたい時、脚本と原作が同じ人の場合でも、当然それぞれのセクションが担う役割を分けて考えないといけません。

 何がともあれ、脚本の本数からもいろいろ見えてくるものがありますので、改めて紹介させていただきました。何がご意見ご感想があれば、ぜひ気軽に残してください。

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富野由悠季は16の仮名(ペンネーム)を持つ男である

2015/03/24 00:36|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:2
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 富野由悠季監督は自作『ガンダム Gのレコンギスタ』の最終話にて声優をデビューすることが判明しました。

富野由悠季総監督が新人声優デビュー!「井荻 翼」としてGのレコンギスタ最終回に出演! | GUNDAM.INFO | 公式ガンダム情報ポータルサイト

MBSほかアニメイズム枠にて、いよいよ今週放送される『ガンダム Gのレコンギスタ』の最終回「大地に立つ」に、富野由悠季総監督が新人声優「井荻 翼(いおぎ つばさ)」として初参加することが発表された。

収録は、レギュラー陣のアフレコ終了後に富野総監督がトリをつとめる形で、キャスト全員に見守られながら敢行。最終回の担当演出を務めた松尾 衡氏からは「役を作りすぎ」と総監督に対してリテイクを出し笑いをとる一場面などもあり、最終回に相応しい和やかで楽しい雰囲気で行われた。

 実にめでたいことではありますが、ここではあえて富野監督の新ペンネームについて注目したいと思っています。



富野由悠季は16個のペンネームを持っている

 ご承知のとおり、富野由悠季監督はいろいろなペンネームを持っているアニメーション演出家です。本名の富野喜幸はもちろん、富野作品を見れば必ず見かける井荻麟、斧谷稔もメジャーなペンネームです。しかし、富野監督の50年にも及ぶアニメキャリアのなか、それ以外にもたくさんの名義を持っています。以下は、時間順で順次に紹介します。

01、富野喜幸
 もう言う必要もないと思いますが、富野由悠季監督の本名なんです。今の若い子だと「由悠季」のほうが馴染みかもしれませんが…。
 「さすらいのコンテマン」の時代・脚本・演出、それから『海のトリトン』から『機動戦士ガンダム』、『伝説巨神イデオン』までの総監督のとき使っていた名義です。

02、新田修介
 富野喜幸が初めて演出・脚本を担当した『鉄腕アトム』の第96話「ロボット・ヒューチャーの巻」で使った名義です。富野青年がこれまでも『アトム』で演出助手を担当したことがありますが、初めて演出としてクレジットされたのはこのペンネームです。
 今でこそ富野由悠季の華々しいデビューと捉えていますが、当時の富野青年はテレビマンガの演出という気恥ずかしさもあって、この名義を使ったのですが、すぐにそれが無意味だと気づいたか、この後すべて実名を使ったのです。よって、
「新田修介」は一回きりのペンネームとなったのです。

03、小田良
 あまり知られていませんが、富野監督が結婚する前後、アニメだけでは食っていけないかと考えて、一時期マンガ家を目指してた頃もあったそうです。それが投稿するときに用いたペンネームです。元ネタは明かされていませんが、富野監督のペンネームの傾向から考えれば、たぶん出身地の「小田原」だと思われます。
 言うまでもなく、富野はこの後アニメに従事し続けていますので、マンガ道の挫折とともに、この名義も自然消滅しました。

04、阿佐南
 『ムーミン』のときに使っていたペンネームです。元ネタはいうまでもなく、当時この作品を制作する東京ムービーのスタジオにいる「南阿佐ヶ谷」です。この名義は意外にも一回っきりですが、ほかにもいろんな亜種が存在していた。

05、斧谷喜幸
 『さすらいの太陽』のコンテのみで見られるペンネームです。この名義使った間もなく、「斧谷稔」のほうに移行しました。「斧谷」というペンネームの由来は長年ファンの間の謎でしたが、実際は富野夫人「亜阿子さん」の旧姓で、鳥取ゆかりの苗字です。詳しくは富野ファミリーの人々 その1「亜阿子さん」を参照ください。

06、斧谷稔
 もっとも有名なペンネームの一つで、”テレビアニメ”の脚本・コンテ・演出をするときの名義です。『イデオン・ライナーノート』の頃までは謎のコンテマンだったらしいですが、記録全集などのコメントを今見るとバレバレ。「稔」の由来はどこからに関しては未だに判明されていませんが、斧谷(よきたに)を受けて、「良き田に稔る」から「稔」を取るのは一つの説としてしっくる来るかもしれません。
 ちなみに、富野監督は映画だと富野由悠季名義を使っていることが多いですが、唯一『Ring of Gundam』は例外で、短編映画でありながら「斧谷稔」を使ったのです。

07、阿佐みなみ
 『ど根性ガエル』と『ラ・ゼーヌの星』と『ダイモス』のコンテで使ったペンネームで、南阿佐ヶ谷関連の亜種のなか、いちばんよく使っていた名義です。

08、南阿佐
 『天才バカボン』の絵コンテのときに使ったペンネームです。ちなみに、この仕事は『富野由悠季全仕事』ではカウントされていません。キネマ旬報社さん、早く増補版を出してくださーい。

09、とみの喜幸
 なんかペンネームを使った気がしませんが、やはりペンネームの一つです。世界名作劇場や『未来少年コナン』などで使った名義です。『ラスカル』ではなぜか同時に「とみの喜幸」と「富野喜幸」を使いました。

10、富野幸喜
 実は、これはペンネームではなく、「カルピスまんが劇場」の『山ねずみロッキーチャック』のときの誤植です。そのままオンエアでクレジットされましたので、ここではあえてカウントします。

11、井草明夫
 『無敵鋼人ダイターン3』のみで、コンテ・演出・作画監督として使ったペンネームです。『無敵超人ザンボット3』は作画監督を設けていなかったため、画がめちゃくちゃ回もまちまちという反省から、『ダイターン3』からは作画監督を設けましたが、それでも人手不足なので、富野監督も仕方なく作画監督を勤めたという始末です。
 あ、ちなみにここでウンチクさせていただきますと、富野監督は『ザンボット3』、『ダイターン3』、『ガンダム』、『イデオン』では原画を担当したことあります。また、『ザンボット3』のときは動画も一緒にやったという。あと、亜阿子さんも『ガンダム』で仕上げのバイトをやったらしい。
 元ネタはもちろん「井草」からです。

12、日本サンライズ企画室
 これは富野監督のペンネームじゃないですが、富野監督が作詞した「行け!ザンボット3」「カムヒア!ダイターン3」「トッポでタンゴ」はこの名義で発表されたものなので、ここでもカウントします。ちなみに、「宇宙の星よ永遠に」は富野作詞ではありません。(※「行け!ザンボット3」についても諸説あり)

13、井荻麟
 もっとも有名なペンネームの一つです。『機動戦士ガンダム』以降作詞のとき使っている名義です。富野監督はこのこの名義で大量な作品を残っていて、詳しくは富野由悠季作詞一覧を参照ください。元ネタはサンライズのいる上井草が「井荻」駅の「となり(隣)」です。

14、富野由悠季
 『戦闘メカ ザブングル』以降、あらゆる活動で使ってる名義で、間違いなくもっとも有名なペンネームです。『ザブングル』以降の総監督、『ブレンパワード』のテレビアニメ脚本、映画/OVAの脚本・コンテのほか、小説・エッセイなどもこの名義で発表します。
 あと、誤解されるがちですが、富野監督本人は別に改名していません。本名はあくまで「富野喜幸」です。

15、下井草伊井乃弼
 サンライズ共同のペンネームといえなくもない名義です。『OVERMANキングゲイナー』のとき、さまざまの伝説を残した悪名高い邪神……というのは一般の評価ですが、当時作画監督を勤めた方は上手くやれませんでしたので、富野監督が仕方なく作画監督的な役割をやったといわれています。ゆえに、監督のペンネームじゃないけど、ここであえてカウントします。
 元ネタはそのまんま「下井草」。

16.井荻翼(つばさ)
 2015年3月26日Gレコ最終話に声出演とする富野由悠季監督の最新のペンネームです。苗字の井荻は上と同じく井荻駅から取ったものです。名前の「翼」に関しては、おそらく自分の作品である『リーンの翼』から取ったものだと思われます。二つのペンネームに合わせると「麟の翼」になりますから。



 以上の16個名義は、富野監督が50年以来使ったことあるペンネームです。ほかにも可能性がある名義はありますが、本文はあくまで確定したものを扱うだけですので、どうかご了承ください。

 なお、富野監督が中学時代以来、短歌などを作るとき用いる「芥子」という雅号もありますが、基本的に公で使われている名義ではありませんので、ここではあえて入れないようにしました。

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73歳大型新人富野由悠季、『ガンダムGのレコンギスタ』最終話にて声優デビュー!!!

2015/03/05 22:17|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:2
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 73歳大型新人富野由悠季、『ガンダムGのレコンギスタ』最終話にて声優デビュー!!!
 3月5日の夜、日本国東京都の秋葉原にあるガンダムカフェでは、「夜のG-レコ研究会 ~ORIGIN VS G-レコ プロデューサートークショー~」というイベントが開催されましたが、イベント中ではGレコの小形プロデューサーは衝撃的な発言をしました。


 それによると、Gレコの最終話ではなんと富野由悠季監督が声を当てることになりました。


 アフレコ自体は10日ほど前終わりましたので、あとその演じるキャラのビジュアルを待つのみですね。



 ちなみに、最終話のタイトルは「大地に立つ」だそうです。『ガンダムGのレコンギスタ』最終話「大地に立つ」ですか、いろいろ感慨ですね。

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 かの宮崎駿『風立ちぬ』の庵野秀明氏に続いて(こっちは主役だが)、富野監督も声優をやるかと思えば、思わず胸が熱くなりますね。こうして本筋と関係ないところでも楽しめるのは、やはりなんだかんだ嬉しい話なんですよね。

1991年、富野由悠季が香港に立った--ある香港映画会社スタッフの思い出話

2013/10/13 23:39|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:2
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 1991年、富野由悠季が香港に立った--ある香港映画会社スタッフの思い出話
 何故だかよく知りませんが、一昔前の日本のアニメーションはよく香港を舞台にしていました。そしてその傾向が『機動戦士ガンダム』シリーズにおいても例外ではありません。富野由悠季監督の全作品でいえば、さらに『ガイア・ギア』にもありました。

 一方、富野およびガンダムシリーズと香港にまつわる因縁を伝える話があまりにも少ないのは現状です。そのため、せっかくなので、今日の記事はその断片を紹介したいと思います。ある香港映画会社スタッフが、1991年富野監督が『機動戦士ガンダムF91』の宣伝のために香港に行ったときのエピソードです。ほとんどの日本人は知らないと思いますので、かなり貴重な話だと思います。

 もとの話香港の「Headlines Magazine」というフリーマガジンに載っている「我與高達之父-富野由悠季」という文章で、この記事はあくまでブログ主による勝手な翻訳です。いま体調はそんなに優れていないゆえ、文章に支障を与える恐れがあり、さらに一部意訳入っている部分もあるかもしれません。ミスがあれば、大いに指摘してください。



ガンダムの生みの親と私

 日本アニメ業界において世界レベルの監督でいえば、宮崎駿監督だ。一方、男ならば誰もか愛したガンダムにおいて、その生みの親である富野由悠季監督の名前は、必ずしも誰も知っている名前ではない。しかし、その作品『機動戦士ガンダム』は30年以上の歴史を経っている今でも、その巨大おもちゃ会社の生きる看板だけでなく、エンターテイメント業界・デザイン業界あるいはゲーム業界にとっての目指す目標だ。さらに、日本のお台場に立っている1/1ガンダムを見れば、ガンダムがまさに日本の国民的象徴と言っても過言ではないだろう。

 1991年、当時の私は安楽映画会社でアニメ作品宣伝部の所属でした。会社が5作目のガンダム映画『機動戦士ガンダムF91』の放映権を取った際、社長の江志強氏はある重大な決断をした。ガンダム1作分のチケット料金で、『F91』と『ふしぎ海のナディア』(監督:庵野秀明)を同時上映にすることだった。その後、400万強元(香港ドル)の興行収入という大成功ぶり※1を記録したことからも、江氏の慧眼を賛嘆せざるを得なかった。

 一方、当時では日本とほぼ同時上映する海外市場が珍しかったことから、日本サンライズ側も今回の宣伝を非常に重視していたため、なんとガンダム原作者・監督の富野由悠季氏本人を香港に派遣することを決めた! 監督本人が遠路はるばる香港へ来ると知ると、会社一同はますます緊張を強いられた。最後、我々は富野監督が香港における宣伝活動を「公開初日の舞台挨拶」、「記者会」、それから「黄埔(Whampoa)のジャスコに開かれたガンプラコンテスト」という三つのパブリックイベントと決めた。



 富野監督が香港へいらっしゃったのは、今回(1991年)で二度目でしたが、監督にとって一番印象深いだったのは香港の高層ビル群のようでした。当時の安楽映画会社のオフィスがまだ中環(香港の中心商業地区)にいるが、会社の会議室からヴィクトリア・ハーバーの景色を眺めた富野監督はその景色に感動し、必ずこの香港の景色をガンダム作品の舞台にしたいと感想を漏らした。

 とはいえ、ガンダムファンならば分かると思うが、85年の『Zガンダム』や88年の『逆襲のシャア』では、富野監督はすでに香港をガンダムワールドに登場させた。ちょうど当時のHSBC銀行は新しいビルを落成したばかりで、そのユニークな外装を見かけた富野監督は、それを「ガンダムのようなビル※2だなぁ」と言った面白い小噺も、未だに記憶に新しかった。

 食事の時、我々映画会社のスタッフも富野監督やマネージャーさんと同席させてもらった。宿命論の色が強い作品作りとは裏腹に、富野監督はユーモア溢れる方で、ニコニコしてて場を賑わせてくれた。また、日本語上手でない私に対しても優しく、もっと日本語で話しかけるように励ましてくれた。

 黄埔のジャスコに開かれたガンプラコンテスト※3では、富野監督が直接受賞者に賞状を渡した。今と違って、90年代初頭の若者はまだシャイだったのにも関わらず、監督がステージに上がる瞬間、会場はたちまち沸騰し、その歓声の大きさがデパート側がクレームを付くほどだった。

 富野監督の作品は常に視聴者の度肝を抜き、たとえば『ダンバイン』でも『イデオン』でも、「死地に陥れて後生く」という描写が溢れている。しかし、富野監督は信じがたいほどユーモアで愉快な方だ。これもあるいは天才の成せる業というべきかな。



(訳者による注)
※1:20年前の香港では映画料金が1枚28香港ドルだったので、450万だと仮定する場合、動員人数が16万を越えることになる。また興行を当時のレートで換算すると7800万円に相当。当時香港の人口が582万人だったので、日本の20分の1以下の人口で日本での約6分の1の興行を記録したことから考えれば、大成功といっても疑う人はいないはずだ。

※2:確信はありませんが、おそらくこれのことだと思います→(画像検索)

※3:これに関する資料は持っています。確かに富野監督がF91について日本のどこのインタビューでも言及したことない話を発言したと記憶しております。機会があればまた紹介します。

富野由悠季監督8/24香港トークショー発言抜粋

2013/08/25 23:39|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:5
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 富野由悠季監督8/24香港トークショー発言抜粋
 富野由悠季が8月24日で香港へ行って、バンダイが催したガンダム関係のサイン会とトークショーを参加しましたが、そのイベントでの発言を大まかにまとめました。

 あくまで断片的な映像や新聞記事に頼る意訳なので、言い回し自体は富野監督のものではないですし、まったく間違いないとは言えません。それでも全体もしくは雰囲気を掴めますので、よかったら読んでください。

【短片】【高達展】富野由悠季:最愛馬沙 - 20130824 - 《蘋果日報》即時新聞
富野由悠季盼動畫啓發年輕人 高達之父 讚港展品完美 - 20130825 - 蘋果日報

.最初の予定は黒ペンで白地にサインする予定だったが、なぜか描けなかったので、監督の判断で白ペンで赤い部分にサインすることになった。
.監督は上機嫌で、大はしゃぎ。
.ファンが写真を撮り放題。監督も嫌い顔一つもせず、ポーズを応じりまくり。
.大笑いしまくる。ピースサインしまくり。
.監督がゲストの25歳女優さんにデレデレ。
.質問をする人は大半記者で、参加者の友人によれば「碌も勉強しなかった者たち」なので、浅い質問ばかり。

.Q:1/3の6mガンダムについてと思う?
 A:とてもよく出来ていると思う。(人が乗れるMSが)地球での高さはこれくらいが理想的。
.Q:アムロの「人は、同じ過ちを繰り返す」という台詞に対して
 A:歴史から見ても、とても正しい言葉だと思う。アニメはフィクションだが、必ずどこか現実を反映しないといけない。そういう意味でも、アニメ好きの若い人には学んでほしい。
.Q:新訳Zはカミーユ以外では不幸のままだったが、さらに新しい結末を作る予定ある?
 A:たくさん人が死んで、子供たちに夢と希望を与えられなかったことに自分でもいささか心残りだが、現実を考えると戦争はそういうものだから、直すつもりはない。
.Q:好きなキャラは?
 A:自作キャラは全部どこかしら自分の考え方を反映してるので、全部好き。あえて挙げるとしたら、シャア。
.Q:シャアとアムロの結末は?
 A:その2人に聞けよ!(笑)
.Q:MSが人型である理由は。
 A:地上では6mくらいが現実的だが、宇宙で使うには、人型はパイロットに安心感を与えるから、意味が無いとはいえない。ただジオングに足がない話の通り、戦闘的に意味はない。
.Q:アニメに対するスタンス。
 A:アニメはフィクションだが、今はリアルな考え方だけが世の中を動かすではないので、アニメに描かれたものでも実生活に役に立つヒントを与えてくれるのではないかと信じる。
.Q:オリジンは?
 A:参加しません。
.Q:3D映画について。
 A:3D技術だけのための3D映画にいささか疑問を感じる。

 ちなみに、当日の富野監督のテンションはこうだったのです。


 羨ましすぎてハイパー化しそうな人もいるかもしれませんが、ハイパー化しちゃいけません。Gレコに関する質問が皆無だった時点、香港人がいかにニワカだったことを伺えます。ということで、次回は台湾に来てくださいよ、富野さん。

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 なお、画像・映像・新聞記事もありますが、それらについて後日で紹介します。

富野由悠季監督の香港サイン会&ファンミーティング続報

2013/08/24 02:35|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:0
このエントリーを含むはてなブックマーク はてなブックマーク - 富野由悠季監督の香港サイン会&ファンミーティング続報
 先日、富野由悠季監督は8月24日でホンコンでのイベントに参加すると紹介しましたが、行けない日本の方々のために、イベントの詳細内容を紹介します。



Gundam.Info.hk
DAKARA.jpg

 サイン会の抽選は先日の記事で紹介しましたが、以下の記事で、もっと詳しい内容が判明できました。

高達原作者來港!富野由悠季老師簽名見面會 l UNWIRE.HK 流動科技生活
DAKARA.jpg

 中国語よく分からない人のために、それから記録を残すために日本語に訳しますと、以下の進行となります。

富野由悠季先生 サイン会&ファンミーティング
時間:2013年8月24日(土)
ゲスト:富野由悠季先生、何傲兒さん

サイン儀式
2:00pm 屋外広場 メディア受付
2:15pm 屋外広場 富野先生が世界最大(?)なフル武装(?)のRX-78-2ガンダムの足元でサイン&ツーショット
サイン&ファンミーティング
2:30pm 二階会場 司会者による富野由悠季先生の紹介
          司会者と富野先生の対談
          富野先生とマスコミの取材および交流
          何傲兒さんによるガンダムテーマソング(翔べ! ガンダム?)
3:10pm      富野先生によるファンのサイン会

 ちなみに何傲兒はこういう人です。来月25歳の人。女優ですが、まあ半分ドルみたいな人です。

 このサイン会についての続報はこれから新聞およびニュースなどで追うつもりですので、何か新しい話が入る次第、ブログにてご報告させていただきます。行けない方もどうかご安心を。

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 それにしても今回のホンコン行も入れると、富野監督がホンコンに行くのは、実はすでに3回目のことになります。いや、正確いうと最低三回目ということですが。

 ここには一つの記事があります。作者はかつてホンコンの映画会社の宣伝部所属だった人間です。その文章のなかで、監督がホンコンに行くときの細かいエピソードがいくつか紹介されましたが、内容は結構面白いですので、この記事ではただリンクを貼り、内容を改めて別の記事で紹介させていただきます。

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 そもそも、日本のアニメは昔からホンコンをよく贔屓していた。ホンコンそのものを舞台として設定したのはもちろん、九龍城をモチーフする作品はやはり数知れずでいました(押井守とか)。ガンダムシリーズにおいても、『Zガンダム』や『逆襲のシャア』(、と『ガイア・ギア』)にホンコンに関する描写が出ているほか、今川氏の『機動武闘伝Gガンダム』に至っては、ホンコンが地球の覇権を握っているとんでもない設定となっています。

 『ブレードランナー』で披露し、一世を風靡したビジュアル性は間違いなく最大の魅力だったのですが、日本人がこれほど深く魅了された訳は、もう一つあると思います。アジアの辺鄙の地でありながら、英国と中国、いわば東方と西方の文明の恩恵を受けながら育ったホンコンだからこそ、一種のバイタリティ溢れる猥雑さとカオスさを持って、多くの人をとりこにしました。今では中国に帰還し、その魅力を失いつつありますが、それでもアニメ作品のなかでは、かつてのビジュアルに対する影響力を窺い知ることができました。

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 また、ビジネスにおいても、かつて欧米の企業がアジアへ進軍しようとしたとき、ホンコンはよくジャンピングボードとしての役割としてはたっていました。そして80年代以降、さらに中国への窓口として愛用されました。この傾向は日本の企業においてもそうです。

 別の企業はおいといて、ガンダムに縁の深いバンダイでも、アジアで初めて設立した拠点がホンコンだったため、長年情報もイベントも、いつもホンコン優先でした。今ではインターネットの普及で情報の拡散は日本とリアルタイムに更新できるようになっていますが、それでも富野監督が台湾に来て1回だけ、ホンコンに行って3回という事実だけ見ても、ホンコンがいかに優遇されてるのは分かります。しかも台湾のときはバンダイ系イベントではないですし。

 そういえばご存知の方もいるかもしれませんが、ガンダムは台湾では「鋼弾」、ホンコンでは「高達」、そして中国では「敢達」と訳されています。全ては音訳ですが、台湾では北京語、ホンコンでは広東語、中国では北京語が使われているため、訳語も違うものとなっています。日本人が馴染みなのはおそらく『Gガン』の音楽アルバムにも出てくる「高達」なのですね。

 ちなみに、中国ではホンコンの版権と区別するため、あえて「敢達」という名前を使っていますが、中国では昔からホンコン方面の情報でガンダムを楽しんできたため、今でもファンの間では普通に「高達」を使っています。ちなみに、「敢達」は昔ファーストガンダムが台湾に紹介されたとき(1982年くらい?)に使われた最初の訳名だったのです。当時は無版権だったんですが、85年の『Zガンダム』が正式に台湾のテレビで放送されたことを境に、「鋼弾」という名前が浸透されるように、今日に至ったわけです。

富野由悠季が演出作品『どろろ』第16話を語る

2013/08/18 14:35|富野由悠季関連TRACKBACK:0COMMENT:0
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 手塚治虫原作、杉井ギサブロー監督、虫プロ制作のテレビアニメ『どろろ』は2008年に「どろろ Complete BOX」としてdvd化されましたが、その特典の絵コンテ本に収録されている富野由悠季監督のインタビューを紹介します。



富野由悠季(第16話演出)

 第16話の自分のコンテを見て思うのは、その前にコンテを切った第3話と第4話に比べれば、一歩か二歩は作品風になってるな、ということです。ただ、第16話にしても、そんなに褒められた感じはしなくて、かなりひどい演出だと反省させられる作品なんで、絶対見てほしくないと思います。そういう出来です。第3話、第4話は、実を言うともっとひどいですけど……。

 『アトム』はまだ、映画的な問題をあまり気にしないですむ作品だったんです、マンガ絵っぽいから。『どろろ』になると演出的に実写っぽくなってきているため、映画処理を絶対に見逃しちゃいけない部分があるんですけど、フィルムを見るとコンテマンとして大問題だというところが随所にありました。よくもまあこれで世の中、無事に済んでたなっていう感じがします。そういう作品だったということを改めて了解しました。

 演出は僕、やってませんね。フィルムを観ても、自分で(最後まで)演出を手がけたという感じはないんです。コンテ様のカッティングしか見えなくて、上がったフィルムについては僕が触ったカッティングとはちょっと違う皮膚感がきちんとあるんです。具体的には、カメラのスピード感が違います。撮影出しに関わっているかどうかという違うなんで、同じ下手にしても、自分の下手さじゃないなっていうことですね。『アトム』を見ると間違いなく自分でやったという実感がありますよ。どんなにひどい作画であっても、自分が撮影出しまでして、編集までして、場合によってはアフレコにも立ち会って、という過程がこの辺(目の前)にひょいと見えてくるものがあるんです。あ、全部やってるな、これはまずいよねというのはあります。でも、第16話の場合、そのまずさがどんどん(自分から)遠くなっていくので、実際にはコンテを描いただけで、後は預けたんだろうと感じました。

 全体の構成という点でいえば、20何分という中でお話を通していくことについては、第4話に比べれば第16話のほうがはるかにちゃんと出来ていますが、肝心なところがダメでしたね。お話を作っていくことに関して間違いなく意識していたことは事実で、まだプロになったとは言えないけれども、一生懸命プロになろうとしている自分自身をこのコンテから感じますね。

 基本的には、虫プロを辞めてまた出戻って来た、なおかつ他のプロダクションにも出入りするようになって、この時期、自分の生活体験、孤立感みたいなものは嫌でも意識するようになっていました。それで、この『どろろ』の時には、キャラクターのつかまえ方が変わってきた、ということはあります。物語を作るとき、キャラクター固有なものを作るっていう意識ははっきりとありました。もちろん、原作にそういう匂いがあればきちんと把握して、自分のものにして出していこうともしていました。「妖馬みどろ」に関して言えば、その辺のことは意識して、なおかつそれほどあからさまでなく劇構成をして見せようという気配はあります。下手なんですけど、自立したいという欲は感じました。

 いつまでも虫プロというものがあって、そのなかで仕事が出来るものだと思っている、つまり仲間意識をたえず共有したい人とそうでない人の違いでしょう。この当時で言えば、フリーで1年半くらいやってきて、自分が感じていた、現実はきついという気分を虫プロの人たちはまだ感じてないんだ、というような苛立ちがあったことも事実です。フリーランスの場合は、基本的に自分にしか描けないもので仕事をしていくわけだから、鍛えられるものなら鍛えなきゃいけないという思いがありました。そうでなければ、それから10年後にロボット物をやったとき、「ガンダム」のようなものを作れるわけがないと思います。そういう意味で、ものを作っていくっていうのは固有なもの、つまり個としてしかやっていけなくて、共同作業のなかでは基本的には生み出し得ないものなんだということを認識しつつあった時期とも言えます。それは今回『どろろ』を観直して一番端的に感じることでした。

1941年11月5日、神奈川県生まれ。1964年3月に虫プロ入社。『鉄腕アトム』の制作進行、演出助手を経て、同作で演出デビュー。『リボンの騎士』演出の後、1967年にフリーに。1968年、『夕やけ番町』で初チーフディレクターを経験。虫プロ作品ではその後『アニマル1』の演出を経て、『どろろ』に参加。監督としての代表作は『海のトリトン』『無敵超人ザンボット3』『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』『戦闘メカ ザブングル』『ブレンパワード』『∀ガンダム』など。

 正直、最初このインタビューを読んだとき、好きではなかったんです。他の人が内容を説明してくれたり、当時の思い出を語ったりするのに対して、富野監督は自分のことばかりしてて、なおかつ失敗失敗と言っていました。性格とはいえ、『どろろ』に対していささかリスペクトが無いじゃないの?と思いました。

 しかし、今となってはこれもこれで良しだろうと思うようになっています。思い出深く自分の「作品」に対する感想を語ることはもちろんいいですが、ドライなまでに淡々と「演出」を語るのも、この作品に対する理解を深めるものだと理解できますし、そもそも外部スタッフでしかない富野に感想を語らせてもしょうがないから、結局こういう話になるだろうと。

 なにがともあれ、貴重な話であることに代りにありませんので、ここで紹介しました。



 ちなみに、この本は富野のほか、監督の杉井ギサブロー、演出の出崎統、高橋良輔の絵コンテとインタビューも収録されていますが、どれも当時を知るための資料として貴重である。特に高橋を除くと、杉井・出崎・富野のコンテは本編を観るまでもなく、カット数だけでそれぞれ当時の作風、優劣、手法が見えてきて、非常に面白いものです。



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『風立ちぬ』の喫煙シーン、およびタバコ演出に頼らない富野由悠季の考え方

2013/08/14 23:26|富野由悠季関連TRACKBACK:1COMMENT:23
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 最近、こんなニュースがありました。

日本禁煙学会 「風立ちぬ」喫煙場面に苦言「子どもに影響与える」 (スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース

NPO法人「日本禁煙学会」が公開中の映画「風立ちぬ」(監督宮崎駿)の中のタバコの描写について苦言を呈している。

 いわく、一般向けのアニメーション映画でありながら、喫煙シーンがたくさんあって、子供に悪い影響を及ぼしかねない、という話です。



 なるほど、学会の理由は一見ごもっともですよね。映画の表現性を言及しつつも、その必要性に問題提起するのはちゃんと見ている証拠でもあるし、何せ天下のジブリなんだから、影響力が半端ないってのも頷けます。

 さらに、「食べ物が美味い描写」という定評があるジブリだけあって、劇中に出てくるタバコも実に美味そうに見えます。これは紛れも無く事実だと思います。

 とはいえ、、この「苦言」にいまいちピンと来ない人もやはりいるでしょう。作家がどの意図でそのようなシーンを作ったにせよ、それは単に作品のためのものですし、単に「そこだけを変えろ!」という指摘は、正直外野の虫が良すぎる喧騒でしかない一面があります。

 しかし、作品自体から離れるところから見ると、この苦言はやはり一理あると思います。子供は影響されやすいものですし、レーティングGであるからには、表現の仕方もそれに見合うものが要求されます。これは作家を邪魔するものでもなんでも無く、当たり前のことです。

 そういう意味では、今回の一件に関して、日本の映画倫理委員会には責任があると言わざるを得ません。ジブリ作品だから全部レーティングGという判断は、正直今の日本の姑息主義を反映するものがあると感じます。仮にPGならば、誰も文句を言わないのでしょう。



 一方、『風立ちぬ』とは別にしても、タバコを吸う演出は、映画・アニメ・マンガに存在して久しいとは言えます。古くから『ルパン三世』の次元大介がありますし、近年の一番代表的なアニメ作品でいえば、なんといってもこれでしょう。

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 演出の是非および効果は別にして、タバコという小道具を使って「大人キャラ」を演出するのは、やはりいささか安易なやり方とは言わざるを得ません。

 これに関しては、ちょうど同じくアニメーション演出家の大御所である富野由悠季監督は、タバコの演出に関して言及したことがありますので、その著書である『映像の原則』から少しだけ引用して紹介します。

第7章 ビギナーの実務

演技はポーズやマンガ・パターンではない。

 女の子を演出すると、すぐに八の字眉の表情をつくる。
 (中略)
 もっと典型的な芝居のパターンは、困ったときや照れたときに頭を掻くというポーズです。そして、さらに典型的なことは、タバコを吸わせるというポーズです。
 これらは、どこでも見られる”芝居の類型”なのですから、まずこんなことはさせないという覚悟をもって、自分なりの独創的な演技を考えてほしいです。というのは、このようなことをうかつにしている演出家や演技者は無能であると白状しているようなものだからです

 逆にいえば、演技のできない訳者には、タバコでも持たせればいい、という考え方も現場にはあって、そのようにしている場合もあります。
 ですから、よく見かけることはやっていい、のではなく、やってはいけないことと思って良いでしょう
 (中略)
 ポーズというのは、ある動きのなかの特徴的な一瞬のものであり、あるひとつの演技を考えていって、その演技のなかのチャーミング・ポイントともいえる一瞬に創出(発見)できるものだ、と認識してほしいのです。
 そのうえで、その一瞬をなんとかフィックス(固定し拡大)する方法がないものかと考えるのです。
 しかし、実写であれば役者そのものの魅力、その人の魅力でもある特別な一瞬のものが魅力あるということであり、それは作画されるキャラクターでも同じで、さらに、それが物語の展開の嚙み合って魅力が増幅されたりするのですから、ひとつのポーズそのものに魅力がある、と考えるのがそもそもまちがいなのです

 かなり富野流の説明ですけど、基本的に富野監督は「タバコを持たせる演技はやってはいけない」というスタンスなのです。確かに、富野作品では喫煙シーンがほとんどありません。しかし、その発言はなにもタバコ自体が悪いといっているのではなく、むしろ「作り手側」に基づく話だと理解してほしいです。

 なぜならば、「タバコを吸わせる演技」自体は、すでに手垢まみれのものだからなのです。それを当たり前のようにやるのは、ただの模倣でしかないからです。目新しくないなのです。



 一概とはいえませんけれど、アニメにおける「タバコを吸う芝居」は、大体「深く考えている」か「自分の世界に浸っている」を演出し、それによって「かっこいい」「知らない過去を秘めている」などを表現するものです。しかし、これはもともと「映画からの借り物でしかない」と気づいていない人も多いでしょう。

 それの典型的な芝居として、「二人が会話しているシーンで、主人公が相手の問いに対し何も言わずに、ただタバコを取り出して吸う」というものがあります。これを演出すると、なるほど確かに格好良さそうに見えます。

 しかし、これはもともと映画において「相手に直接リアクションを返さずに、別のアクションをすることで演技をする」というもので、いわば「間」の演技というものだった。ある種、文学的な手法と言えるでしょう。富野作品でいえば、「サボテンが花をつけている…」と同じようなタイプな演出です。

 これを無定見に、ただ「格好良さ」を表現したいオシャレでオマセな演出をするのは、非常に記号的でしかないのです。そして、「タバコを吸う演出」を格好いいと思い、「サボテンが花をつけている」を頭おかしいと思っている視聴者も、さすがに感度が悪いと言わざるを得ません。



 なので、『風立ちぬ』のように意図があって入れたものとは別にして(自分は好きではありませんが)、考えなしに喫煙の演技をやっちゃうのは、やはり一種のルーチンワークのように感じます。いや、もっと悪いのはルーチンであることすら気づかないことでしょう。そしてこれこそが、富野監督が苦言を呈したいことでしょう。

 この話は、もちろん多くの演出家とアニメーターの方は分かりきったことでしょう。しかしこのような「記号でしかない演技」は今なお氾濫しているのもまた事実である。受けてるから使っているのは分かるが、そんな受けてる演技をそのままではなく、もう少し理想を入れてもいいのではないかと切実に願います。

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 ちなみに、この件は『映像の原則改訂版』ではなぜか削除されました。かわいい女の子に関する話はそのまま残しましたが。

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